社宅に関連する費用は法人税法上の損金に算入され、節税に有効といわれます。ただし、社宅が経費として認められるためには満たしておくべき要件もあります。本稿では、社宅とはどのようなものであり、経費として認められるためには何に気を付けたらよいのかを解説します。

そもそも社宅とは?住宅手当との違いは?

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(写真=Andrey_Popov/Shutterstock.com)

社宅は、会社が従業員のために用意した住宅のことを指します。入居する従業員から賃料を収受して利用させることが一般的ですが、通常の家賃相場より安く入居することができるため、従業員にとっては福利厚生として機能します。社宅は、会社が保有する物件を使用する「社有社宅」と会社が賃借した物件を従業員に提供する「借り上げ社宅」に大別されます。

なお、社宅制度に似ている福利厚生としては住宅手当が挙げられます。住宅手当は従業員に対して金銭で支給されるため、所得税の観点からは給与という性格を有します。これに対して、社宅では基本的に従業員から所定の賃料を徴収する場合が多いため、通常は給与には該当しません。

社宅を経費として処理するための要件は?

社宅に関連する費用は基本的に会社の経費となります。そのため、うまく活用すれば、会社の税負担を軽減しながら、従業員にとっても利便性の高い制度とすることができます。

ただし、社宅を経費として処理するためには一定の要件を満たすよう注意する必要があります。具体的には、賃貸料相当額の50%以上の家賃を従業員から徴収しておかないと、給与所得として課税されてしまいます。つまり、従業員に余分な所得税が課されるとともに、会社には源泉徴収義務が発生します。

賃貸料相当額というのは(1)〜(3)の合計額のことです。

(1)(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
(2)12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3(平方メートル)
(3)(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%

この計算によると、通常は家賃相場より賃貸料相当額の方が低くなることが多いといえます。

仮に、賃貸料相当額より低い家賃を受け取っている場合には、賃貸料相当額と実際の家賃との差額が給与所得として課税されるのが原則です。ただし、賃貸料相当額の50%以上の家賃を徴収している場合には差額について課税されない取扱いとなっているのです。

もし、従業員に社宅を無料で使用させている場合には、賃貸料相当額がまるまる給与として課税される可能性がありますので注意が必要です。

社宅を活用して福利厚生と節税に役立てた事例

成型品の受託加工業を営むA社では遊休土地に小規模なアパートを建築し、工員のための社宅として利用することにしました。周辺の同規模の賃料相場は8万円ですが、工員には3万円で社宅を使用させています。

これによりA社は遊休土地を有効活用することができました。土地にかかる固定資産税も更地の場合より安くなり、建築したアパートも自社の工員が入居するため空室リスクが抑えられます。アパートの建築費用は建物などの固定資産として計上し、減価償却費を会社の経費とすることで法人税などを抑える効果も見込めます。

従業員にとっては近隣の相場より5万円程度安い家賃で社宅を利用することができます。また、A社では賃貸料相当額の50%以上となるように計算した上で3万円という家賃を設定していました。そのため、税務の面でも、給与所得として課税されないというメリットを享受することができました。

役員の場合には異なる判定基準も

以上のように、社宅をうまく活用することにより、会社にとっても従業員にとってもメリットのある福利厚生制度にすることが可能です。

ただし、今回紹介した注意点以外にも、役員に対して社宅を提供する場合には、小規模社宅や豪華社宅に該当するかどうかで異なる判断基準が適用されるなど気を付けなければならない点があります。このような点に配慮しながら導入を検討してみてはいかがでしょうか。(提供:みらい経営者 ONLINE


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