テレビのバラエティ番組などで「予約のとれないカリスマ家政婦さん」を目にする機会が増えました。共働き世帯の1週間分のお弁当の具材を短時間で、手際よく、作り置きしてくれる見事な手さばきやアイデア豊富なレシピは見ていて楽しくなります。

いったい、どんな世帯が家政婦サービスを利用しているのか、年収はどれくらいなのかといった点も気になるところです。

利用者は世帯年収700万円以上が約半数。ハードルは低い

家事代行サービス
(画像=Dragon Images/Shutterstock.com)

マスコミにも引っ張りだこのカリスマ家政婦さんの本などがベストセラーになるなど、カリスマ家政婦の料理本が多数、発売されています。カリスマ家政婦の派遣を手がける大手「タスカジ」は「業界最安値水準1時間1,500円からの家事代行/家政婦マッチングサイト」をキャッチフレーズに急成長を遂げているようです。

政府も『日本再興戦略2014』において、安価で安心な家事支援サービスの普及を成長戦略の目玉政策として掲げています。経済産業省に設置された推進協議会での調査によると、家事支援サービスの利用者の約44%は共働きで、世帯年収は700万円以上となっています(2015年2月発表)。

国税庁の調査によると民間の会社員の平均年収は422万円で男性は521万円、女性は280万円ですから(平成28年分民間給与実態統計調査結果)、共働きで世帯年収700万円といえば全国平均値並みの所得水準です。つまり、家事支援サービスは、なにもお金に余裕がある富裕層が贅沢として使うものではなく、収入が月並みでも家事支援が必要不可欠な世帯が利用するものといえるでしょう。

共働き世帯の収入増、専業主婦の社会参加などメリット大

ただし、経済産業省の調査では、調査対象となった約4.1万世帯のうち、家事サービスを利用中もしくは利用したことがあるのは約3%に過ぎません。まだまだ家政婦サービスの利用のハードルは高く、普及はこれからなのです。

家事支援サービスが普及すれば、共働き世帯の家事負担が減ることで、より長時間、外で働けるようになるので、世帯収入の増加に期待できます。同時に、もともとは専業主婦だった女性たちが「カリスマ家政婦」として働くことにもつながるので、二重の意味で女性の社会参加を後押しする効果があります。

これまで付加価値を生み出す経済活動と思われていなかった「家事労働」にお金が支払われることで、GDP(国内総生産)を押し上げる効果も期待できるでしょう。

今、話題のシェアリングエコノミーの中核事業になる?

欧米のみならず、香港、シンガポールなどのアジア圏では、家政婦を雇うのは当たり前になっています。家政婦大国・フィリピンなどは、出稼ぎ家政婦として働く人々の外貨送金が国内経済を支えているのが現状です。経済産業省では、2012年度に980億円だった家事代行サービスの市場が、将来的には6,000億円まで成長する可能性を指摘しています。

世の中では、カーシェアリングや民泊など、モノや空間をシェアするサービスが普及していますが、「労働」のシェアこそ、シェアリングエコノミーの中核産業になる可能性が高いでしょう。

「ご近所サポーター」という言葉も生まれているように、今後は、家事、子守、育児、介護、ちょっとした日常業務の代行など、年収が高い低いにかかわらず、家事支援サービスが幅広く利用される時代になっていきそうです。「カリスマ家政婦」の活躍はまだまだ始まったばかりなのです。

(提供:フィデリティ投信