第一生命保険株式会社(社長 渡邉 光一郎)のシンクタンク、株式会社第一生命経済研究所(社長 矢島 良司)では、全国の40 代・50 代の男女3,376 名を対象にマネー・ヘルス・タイムのそれぞれの分野でどのような不安を抱き、どのような備えをしているのかアンケート調査を行いました。
≪調査結果のポイント≫
マネー編
家計の把握状況 ● 男女とも50代より40代の方が、家計を把握していない人が多い。
家計の振り返り頻度 ● 家計簿を用いて家計を把握している人の方が、家計の振り返りを積極的に行っている。
現在の貯蓄状況 ● 家計の振り返り頻度が高いほど、貯蓄割合が高い。
お金や就労に対する不安 ● 4人に3人以上の人が老後生活について不安に感じている。
公的年金のみで生活できるか ● 6割以上の人が、「公的年金だけでは生活できない」と回答。 研究員のコメント
ヘルス編
自分の健康①:自分が病気になった場合の不安 ● 最大の不安は「精神的な苦痛」と「身体的な苦痛」。 ● 有職者の7割強は「仕事を続けられなくなること」「働き方を変えざるを得なくなること」にも不安。
自分の健康②:身体的健康の維持・管理に関する行動 ● 「十分な睡眠・休養」「バランスのとれた食生活」「適度に運動」「規則正しい生活」の重要度はほぼ100%。ただし、「適度に運動」の実行度はわずか33%。
自分の健康③:外見・美容の維持・管理に関する行動 ● 「姿勢を良くする」の重要度は93%だが、実行度は40%。 ● 「老けて見られないようにする」の重要度と実行度の差は比較的小さい。
自分の健康④:精神的健康の維持・管理に関する行動 ● 「人生を楽しむ」「ストレスを解消する」「生きがいをもつ」の重要度は100%近いが、実行度は50%台。 「新しいことに挑戦する」の重要度は70%だが、実行度は32%。
家族の健康①:配偶者が病気になった場合の不安 ● 3大不安は「病気が治らないこと」「身体的な苦痛」「精神的な苦痛」。 ● 配偶者が有職の場合、4人に3人は「働き方を変えざるを得なくなること」「仕事を続けられなくなること」にも不安。
家族の健康②:子どもが病気になった場合の不安 ● 「身体的な苦痛」「精神的な苦痛」「病気が治らないこと」への不安は9割。 ● 子どもが病気になった場合にこれらの不安を感じる割合は、配偶者や自分が病気になった場合より大きい。
家族の健康③:親の健康状態 ● 「要介護・要支援認定を受けている」「手助けや見守りを必要とする」割合は、父親で12%、母親で20%。 ● 「見守りや手助けを必要とすることはない」割合は、50 代後半の回答者の父親で16%、母親では35%のみ。
家族の健康④:親に介護が必要になった場合の不安 ● 「介護を必要とする期間がどれくらいになるかわからないこと」「介護施設を希望しても入れないこと」に不安を感じる人は7割以上。
家族の健康⑤:親の介護に対する準備 ● 親の介護の担い手について親や他の家族と話し合っている人、親に経済面での準備を促している人は2割台にとどまる。
研究員のコメント
タイム編
生きがいを感じるとき ● 半数以上の人は「趣味に熱中しているとき」に生きがいを感じる
現在のネットワークの形成・維持に関する行動の重要度 ● 家族・親族とのネットワークを重要だと思う人は、7項目中6項目で9割前後 ● 配偶者や子どもと良好な関係を保つことを「非常に重要だと思う」人は6割を超えるが、近所づきあいや地域に友人をもつことでは2割強
現在のネットワークの形成・維持に関する行動の実行度 ● 家族・親族とのネットワークでは、できていると思う人が多くの項目で6割を超える ● ネットワークの形成・維持を重要だと思う人と、それらができていると思う人の割合には、すべての項目で10 ポイント以上の差がある
現在のネットワークに関する不安 ● 不安を感じる人が最も多かったのは「近所にいざというとき頼れる人がいないこと」 ● どの項目でも、不安を感じている人より感じていない人の方が多い
困ったときの対応 ● 困ったときの対応で最も多くあげられたのはすべての項目で「家族・親族に頼む」 ● 子どものいない単身世帯の約2割は、『入院時の保証人』を「誰にも頼めない」
老後のネットワーク ● 半数以上の人が「自分が老後に1人暮らしをすること」に不安を感じる ● 老後生活では家族・親族とのネットワークを重要だと思う人が7項目中6項目で9割前後 ● 老後生活では現在に比べて「配偶者と共通の友人をもつこと」や「自分より若い友人をもつこと」が重要になると思う人が多い
研究員のコメント
≪調査実施の背景≫
近年、ライフコースの多様化や社会環境の変化を背景に、生活者の生活リスクは非常に多様になりつつあります。それに伴って、従来のような画一的なライフコースを前提としたリスクヘッジでは対応が難しいものとなっています。40・50 代は、ライフコースやライフイベントに関する選択肢が多く、就労や経済状況、配偶者や扶養家族の有無、育児や介護状況といった要素の組み合わせによって備えるべきリスクが大きく左右されます。さらに、家族の仕事の状況や異動・転勤、子どもの状況や学校等の環境変化などは不確実性も高く、備えること自体が難しいものも少なくありません。晩婚・晩産化による出産・育児の後ろ倒しに加え、さらに見通しが不透明な介護問題が同時に発生するケースもあるなど、現代の40・50 代のライフコースは「標準的」なモデルが想定しにくいものとなっています。
そこで、当研究所では、全国の40・50 代男女3,376 名を対象に、「生活リスクへの不安と備えに関する調査」を行いました。本調査では、日常生活のリスクを大きく「マネー」「ヘルス」「タイム」の3つに区分し、それぞれの領域に関する実態と意識をたずねました。
本稿では、3領域における主要なデータをご紹介しています。各領域の詳細についてはライフデザインレポート等の各種レポートにおいて順次公開の予定です。
≪調査概要≫
1. 調査対象 全国の40・50 代男女3,376 名
2. 調査方法 クロス・マーケティングのモニターを用いたインターネット調査
3.調査時期 2013 年11 月
4. 回答者の主な属性
5. 世帯形態について 世帯形態については以下の通り分類しました。単身世帯、自分・親世帯、夫婦のみ世帯については、必要に応じて別居している子ども(別居子)の有無によってさらに分類してます。
マネー編家計の把握状況
男女とも50 代より40 代の方が、家計を把握していない人が多い
現在、自分の世帯の家計を把握しているかどうかについてたずねたところ、程度の差はあるものの77.5%の人は家計を把握していることがわかります(図表1)。特に「家計簿等を用いて把握している」(「家計簿、もしくは家計簿のソフトやアプリ等(以下家計簿等)を用いて、細かく記録して把握している」と「家計簿等を用いて、大まかに把握している」の合計、以下同様)と回答した人は全体の32.1%となっています。
性別にみると、「家計簿等を用いて把握している」人は男性が23.2%に対し、女性では40.7%です。女性の方が家計簿を用いている様子がわかります。
また、男性の方が「特に把握していない」と回答した人が多く、約3割を占めています。年代別に、「特に把握していない」の回答割合をみると、男女ともに40 代の方が多く、特に男性40 代前半では4割近くにのぼっています。
マネー編家計の振り返り頻度
家計簿を用いて家計を把握している人の方が、家計の振り返りを積極的に行っている
家計を把握している人について、家計簿使用の有無別に、世帯の家計を振り返り、日々の支出の見直しやライフプランニングを行う(以下「家計の振り返り」)頻度をみたものが図表2です。
全体では、家計の振り返りを「行う」(「積極的に行う」と「ある程度行う」の合計 以下同様)割合が51.5%と、約半数の人が家計の振り返りを行っていることがわかります。
家計簿使用の有無別に、家計の振り返りを「行う」回答割合をみると、家計簿を用いて把握している人では70.0%に対し、家計簿を用いずに把握している人では38.4%でした。家計簿を用いて家計を把握している人の方が、家計簿を用いずに家計を把握している人より、家計の振り返りを積極的に行っていることがわかります。
マネー編現在の貯蓄状況
家計の振り返り頻度が高いほど、貯蓄割合が高い
現在の貯蓄状況について、「世帯年収に対する1年間の貯蓄(民間の個人年金や投資等を含む)の割合はどのくらいですか」とたずねた結果が図表3です。
全体では、貯蓄割合が10%以下(「0%」と「0%より多く10%まで」の合計)と回答した人が54.5%、10%超(「10%より多く20%まで」と「20%より多く30%まで」「30%より多い」の合計)と回答した人は32.8%となっています。
家計の振り返り頻度別に、貯蓄割合10%超の人の割合をみると、振り返りを「積極的に行う」人で52.5%、振り返りを「ある程度行う」人で38.5%、「あまり行わない」人で32.2%、「まったく行わない」人で24.3%と、家計の振り返り頻度が高い人ほど、貯蓄割合が高いことがわかります。
マネー編お金や就労に対する不安
4人に3人以上の人が老後生活について不安に感じている
お金や就労に関する不安についてたずねたところ、図表4の通り、不安(「非常に不安」+「やや不安」)を感じる割合は、「自分の給与が下がること」(71.5%)や「自分が失業すること」(67.6%)、「子どもの学費が支払えなくなること」(54.4%)といった、現在の生活が営めなくなることへの不安よりも、「老後、生活費用が支払えなくなること」(79.3%)、「老後、生計維持のために必要な就労ができなくなること」(78.7%)といった老後生活について多くの人が不安に感じています。
マネー編公的年金のみで生活できるか
6割以上の人が、「公的年金だけでは生活できない」と回答
老後の主な収入源といえば、公的年金が挙げられますが、現在の40・50 代の人たちは公的年金についてどのように考えているでしょうか。「あなたは老後、公的年金(厚生年金、国民年金等)しか生活資金がなかったとして、生活できると思いますか」とたずねた結果を示したものが図表5です。
「公的年金だけでは生活できない」と回答した割合は全体で64.7%でした。
男性よりも女性の方が「公的年金だけでは生活できない」と回答した割合は高く、また、男女ともに低い年代でその傾向が強くみられました。
マネー編≪研究員のコメント≫
今回の調査結果をみると、40・50 代の経済的な不安は、現在の生活に対する不安よりも将来老後に対する不安のほうが大きいことがわかります。これは、年金支給開始年齢の引上げなどから生じる公的年金生活に対する不安や、老後の経済的準備が必要と思うほどには進んでいないという認識から生まれる不安によるところが大きいと考えられます。公的年金に対する不安を払拭するには、個人レベルでの行動は限られています。しかし、老後の経済的準備は自助努力で進めることができ、不安を和らげることが可能です。
今回の調査でも、一般的に考えられているように、世帯年収が高いほど貯蓄率も高い現状が確認されました。しかし世帯年収が高くない人でも貯蓄をしている人は存在し、それは家計の振り返りの頻度を要因とした傾向に表れています(図表省略)。積極的に家計の振り返りをする人では、約半数が貯蓄している一方で、家計の振り返りをしない人では貯蓄している人が4人に1人にとどまりました。
老後生活を見据えた資産形成をするためには、家計簿をつけることにより家計を把握し、振り返りを定期的に行い、不要な支出を減らすことが重要と言えます。 (研究開発室 上席主任研究員 的場康子)
ヘルス編自分の健康①:自分が病気になった場合の不安
最大の不安は「精神的な苦痛」と「身体的な苦痛」。有職者の7割強は「仕事を続けられなくなること」「働き方を変えざるを得なくなること」にも不安。
自分が大きな病気になった場合の不安をたずねました。図表6の通り、不安(「非常に不安」+「やや不安」)を感じる割合は、「精神的な苦痛を感じること」(76.3%)と「身体的な苦痛を感じること」(74.6%)が上位にあがっています。精神・身体の両面での苦痛が最も不安であるといえます。これらに続く「自分が仕事を続けられなくなること」(73.4%)、「家族に迷惑をかけること」(72.7%)、「病気が治らないこと」(72.5%)、「食事や余暇など、ふだんの生活に制限が生じること」(71.4%)、「自分が働き方を変えざるを得なくなること」(70.1%)の各項目でも7割を超えています。
ヘルス編自分の健康②:身体的健康の維持・管理に関する行動
「十分な睡眠・休養」「バランスのとれた食生活」「適度に運動」「規則正しい生活」の重要度はほぼ100%。ただし、「適度に運動」の実行度はわずか33%。
身体的健康の維持・管理に関する行動がそれぞれどのくらい重要か、またどのくらいできていると思うかたずねました。図表7で各行動の重要度(「非常に重要だと思う」+「やや重要だと思う」)をみると、「十分な睡眠・休養をとる」「バランスのとれた食生活をする」「適度に運動をする」「規則正しい生活を送る」など生活習慣に関する4項目では100%近くなっています。また、「検診(歯科検診以外)を定期的に受ける」「歯科検診を定期的に受ける」の重要度も8割を超えています。
ただし、図表8で各行動の実行度(「できている」+「ある程度できている」)をみると、いずれも重要度に比べてかなり低くなっています。特に、「適度に運動をする」の実行度は32.8%と低く、重要度との差が64.2 ポイント(97.0-32.8 ポイント)もあります。
ヘルス編自分の健康③:外見・美容の維持・管理に関する行動
「姿勢を良くする」の重要度は93%だが、実行度は40%。「老けて見られないようにする」の重要度と実行度の差は比較的小さい。
前問と同様に、外見・美容の維持・管理に関する行動がそれぞれどのくらい重要か、またどのくらいできていると思うかたずねました。図表9で重要度をみると、「姿勢を良くする」(93.1%)、「理想の体型・体重でいる」(89.7%)ではそれぞれ9割前後を占めています。一方、「老けて見られないようにする」「おしゃれをする」の重要度は6割台であり、他に比べて低いです。
図表10 で各行動の実行度をみると、いずれも重要度より低いです。特に、「姿勢を良くする」「理想の体型・体重でいる」の実行度と重要度の差は、それぞれ52.8 ポイント、44.6ポイントもあり、重要だと思っているわりに実行できていないことがわかります。一方、「老けて見られないようにする」の実行度と重要度の差は7.3%であり、比較的小さいです。
ヘルス編自分の健康④:精神的健康の維持・管理に関する行動
「人生を楽しむ」「ストレスを解消する」「生きがいをもつ」の重要度は100%近いが、実行度は50%台。「新しいことに挑戦する」の重要度は70%だが、実行度は32%。
前問と同様に、精神的健康の維持・管理に関する行動がそれぞれどのくらい重要か、またどのくらいできていると思うかたずねました。図表11 で重要度をみると、「人生を楽しむ」「ストレスを解消する」「生きがいをもつ」「好きなことに打ち込む」では9割を超えています。一方、「世の中の動きに敏感でいる」「新しいことに挑戦する」の重要度は7割台でありやや低いです。
図表12 で実行度をみると、いずれも重要度より低いです。特に、「人生を楽しむ」「ストレスを解消する」「生きがいをもつ」「新しいことに挑戦する」の実行度は、重要度と40 ポイント前後の差があります。
ヘルス編家族の健康①:配偶者が病気になった場合の不安
3大不安は「病気が治らないこと」「身体的な苦痛」「精神的な苦痛」。配偶者が有職の場合、4人に3人は「働き方を変えざるを得なくなること」「仕事を続けられなくなること」にも不安。
配偶者がいる人に対して、配偶者が大きな病気になった場合の不安をたずねました。
図表13 をみると、不安(「非常に不安」+「やや不安」)を感じる割合が最も高いのは「病気が治らないこと」(86.6%)であり、「配偶者が身体的な苦痛を感じること」(86.2%)、「配偶者が精神的な苦痛を感じること」(86.1%)が僅差で続いています。いずれも自分の病気が治らない不安、自分が身体的・精神的な苦痛を感じる不安より高いです。
また、配偶者が有職の場合、「配偶者が働き方を変えざるを得なくなること」「配偶者が仕事を続けられなくなること」にも約4人に3人が不安を感じています。
ヘルス編家族の健康②:子どもが病気になった場合の不安
「身体的な苦痛」「精神的な苦痛」「病気が治らないこと」への不安は9割。子どもが病気になった場合にこれらの不安を感じる割合は、配偶者や自分が病気になった場合より大きい。
続いて、子どもが大きな病気になった場合の不安をたずねました。
図表14 の通り、「子どもが身体的な苦痛を感じること」「子どもが精神的な苦痛を感じること」「病気が治らないこと」に不安(「非常に不安」+「やや不安」)を感じる割合がいずれも9割です。これらの割合は、自分自身、配偶者が身体的・精神的な苦痛を感じること、病気が治らないことに不安を感じる割合よりも高くなっています。
また、「自分が働き方を変えざるを得ないこと」「自分が仕事を続けられなくなること」に対する不安は7割台、「配偶者が働き方を変えざるを得ないこと」「配偶者が仕事を続けられなくなること」に対する不安は6割台です。
ヘルス編家族の健康③:親の健康状態
「要介護・要支援認定を受けている」「手助けや見守りを必要とする」割合は、父親で12%、母親で20%。「見守りや手助けを必要とすることはない」割合は、50代後半の回答者の父親では16%、母親では35%のみ。
父親・母親の健康状態をたずねました。図表15 の通り、父親、母親が「要介護・要支援認定を受けている」(以下、「要介護・要支援」)割合は、それぞれ6.3%、10.3%です。また、これに「要介護・要支援認定は受けていないが、日常生活に手助けや見守りを必要とすることがある」(以下、「要手助け・要見守り」)を加えた割合は、父親では11.9%、母親では19.6%となっています。
回答者の年代別にみると、父親が「要介護・要支援」の割合は、回答者が40 代前半の時には3.1%ですが、50 代後半では8.2%と上の年代になるほど高くなります。また、母親が「要介護・要支援」である割合は、50 代前半では13.5%、50 代後半では17.8%であり、50 代、特に後半の時にかなり高くなります。父親が「要介護・要支援」か「要手助け・要見守り」である割合は、回答者が40 代後半になると1割を超えます。また、母親におけるその割合も回答者が40 代後半の時に1割を超え、さらに50 代前半の時には2割、50 代後半の時には3割を超えます。一方、「日常生活に見守りや手助けを必要とすることはない」割合は、回答者が50 代後半の時には父親で15.8%、母親で34.5%のみになります。
ヘルス編家族の健康④:親に介護が必要になった場合の不安
「介護を必要とする期間がどれくらいになるかわからないこと」「介護施設を希望しても入れないこと」に不安を感じる人は7割以上。
親に介護が必要になった場合に、不安をどの程度感じるかたずねました。図表16 で不安(「非常に不安」+「やや不安」)と感じる割合をみると、「介護を必要とする期間がどれくらいになるかわからないこと」が75.8%で最も高く、次に「介護施設を希望しても入れないこと」「親が望む方法で介護できないこと」が7割前後を占めています。また、「自分が働き方を変えざるを得ないこと」「自分が仕事を続けられなくなること」という自分の仕事への影響もこれらの項目に続いています。それ以外でも、ほぼすべての項目において不安を感じる割合が半数を上回っており、介護に対する不安の高さがうかがえます。
ヘルス編家族の健康⑤:親の介護に対する準備
親の介護の担い手について親や他の家族と話し合っている人、親に経済面での準備を促している人は2割台にとどまる
自分の親の介護に対する準備状況をたずねました。
図表17 で、あてはまる(「あてはまる」+「ややあてはまる」)と答えた割合をみると、「親に、介護予防のための体力・健康づくりを促している」が33.1%でこの中では最も高くなっています。「親の介護を誰がするのかについて、親と話し合っている」「親の介護を誰がするのかについて、他の家族と話し合っている」という介護の担い手についての話し合いに関する項目や、「親に、介護が必要になったときのための経済面での準備をするよう促している」という項目にあてはまると答えた割合は2割強です。裏を返せば、8割近い人はこれらの準備をおこなっていません。
ヘルス編≪研究員のコメント≫
(1)自分の健康に関する意識と行動とのギャップ
今回調査対象とした40・50 代の人の多くは、大きな病気になった場合の不安を感じており、生活習慣に留意するなど身体的健康を維持・管理するための行動も重要視しています。しかし、そういった行動ができている人の割合はさほど高くありません。不安を感じながらも行動には必ずしも結びついていないといえます。
また、身体的な健康だけでなく、精神的な健康を維持・管理するための行動、例えば人生を楽しむ、ストレスを解消するといったことも、重要だと思われているわりには実行されていません。40・50 代は仕事や家事・育児などに忙しく、自分の心身に気遣っている余裕はなかなかもてないかもしれませんが、健康でいるための行動をもっと積極的にすべきでしょう。
(2)親の介護に対する不安と準備状況とのギャップ
40・50 代は親の介護が身近になる世代でもあります。特に50 代になると、2割程度の人の実の父母のどちらかまたは両方には介護が必要になります。これに配偶者の親などの介護の必要性も加われば、負担はさらに重くなるでしょう。
そのため、親に介護が必要になった場合の不安が生じています。全体的には介護を必要とする期間がどれくらいになるかわからないという漠然とした不安が最も大きいですが、他にもさまざまな不安があります。例えば、仕事を持つ人は離職や働き方の変更を迫られる不安も強く感じています。
しかしながら、親の介護に対する準備は十分にはおこなわれていません。親の介護の担い手について親や他の家族と話し合っている人や介護に関する情報収集をおこなっている人、親に介護のための経済面での準備を促している人はいずれも2割前後にとどまっています。親の介護に直面する前の早めの準備が望まれます。 (研究開発室 上席主任研究員 水野映子)
タイム編生きがいを感じるとき
半数以上の人は「趣味に熱中しているとき」に生きがいを感じる
図表18 は、どのようなときに生きがいを感じるかを複数回答でたずねた結果です。
最も多くあげられたのは「趣味に熱中しているとき」(53.3%)であり、全体の半数を超えました。「旅行に行っているとき」(37.7%)、「家族だんらんのとき」(36.5%)、「食事やお酒を楽しんでいるとき」(30.6%)がこれに続いています。生きがいを感じる時間として、旅行や趣味、飲食をはじめ、自分の好きなことをする時間や、自分の好きな場所に出かける時間をあげる人が多い傾向にあるようです。
なお、性別にみた場合、「趣味に熱中しているとき」をあげた人は、男性56.4%、女性50.5%と、男性が女性を5ポイント以上上回りましたが、それ以外のほとんどの項目では女性が男性を上回りました。
世帯形態別にみた場合、同居家族がいる人では、「趣味に熱中しているとき」とともに、「家族だんらんのとき」や「夫婦で過ごしているとき」など家族と過ごす時間を上位にあげる人が多くなっています(図表省略)。これに対して、単身世帯では、「仕事に打ち込んでいるとき」をあげる人が他の世帯形態に比べて多い傾向がみられました(図表省略)。
タイム編現在のネットワークの形成・維持に関する行動の重要度
家族・親族とのネットワークを重要だと思う人は、7項目中6項目で9割前後配偶者や子どもと良好な関係を保つことを「非常に重要だと思う」人は6割を超えるが、近所づきあいや地域に友人をもつことでは2割強
今回の調査では家族・親族とのネットワーク(以下、<家族・親族>)、地域とのネットワーク(以下、<地域>)、ネットワークの多様性(以下、<多様性>)という3つの領域に注目して、ネットワーク(日常的な人的交流・おつきあい)の形成・維持に関する行動の 重要性に対する意識をたずねました。
図表19 は、ネットワークに関する重要度(「非常に重要だと思う」+「やや重要だと思う」 以下同様)を示したものです。これをみると、3領域のうち、重要度が最も高かったのは<家族・親族>で、7項目中6項目で9割前後を占めました。
配偶者や子どもと良好な関係を保つことについては「非常に重要だと思う」人だけで6割を超えていますが、近所づきあいや地域に友人をもつことについては2割強にとどまっています。
<多様性>に注目すると、仕事をもつ人の8割以上が、仕事以外の友人をもつことを重要だと考えていることがわかります。
性別にみると、「子どもと良好な関係を保つこと」(男性59.0%、女性66.5%)、「自分の親と良好な関係を保つこと」(男性45.6%、女性51.4%)、「近所の人とあいさつ程度のつき合いをもつこと」(男性22.2%、女性27.3%)と、これら3項目では男性を女性が5ポイント以上上回っています。男性より女性の方が、子どもや自分の親、近所の人とのつき合いを重視する傾向が強いと考えられます。
タイム編現在のネットワークの形成・維持に関する行動の実行度①
家族・親族とのネットワークでは、できていると思う人が多くの項目で6割を超える
今回の調査では、先にみたネットワークの形成・維持に関する行動の実行状況についてもたずねました。
その結果、<家族・親族><地域><多様性>というネットワークに関する3領域のうち、実行度(「できている」+「ある程度できている」 以下同様)が最も高かったのは<家族・親族>で、7項目のうち「配偶者と共通の友人をもつこと」を除く6項目で6割を超えました(図表20)。
性別に比較した場合、ネットワークの実行度は、全般的に男性より女性の方が高くなっています。なかでも「配偶者をほめること」「子どもと良好な関係を保つこと」「自分の親と良好な関係を保つこと」「親族と良好な関係を保つこと」「近所の人とあいさつ程度のつき合いをもつこと」「近所の人と良好な関係を保つこと」「地域に友人をもつこと」「仕事以外の友人をもつこと」「自分より年上の友人をもつこと」「自分より若い友人をもつこと」では、いずれも男性の実行度を女性が5ポイント以上上回っています。
子育てという側面に注目した場合、女性では9割以上が「子どもとの良好な関係を保つこと」を実行できているのに対し、男性では8割程度にとどまっています。このような男女差は、年代にかかわらずみられる点も注目されます(図表省略)。
タイム編現在のネットワークの形成・維持に関する行動の実行度②
ネットワークの形成・維持を重要だと思う人と、それらができていると思う人の割合には、すべての項目で10 ポイント以上の差がある
図表21 は、現在のネットワークに関して、重要だと思うと答えた人の割合(重要度)と、できていると答えた人の割合(実行度)をそれぞれ比較したものです。
これをみると、すべての項目で重要度が実行度を10 ポイント以上、上回っています。ネットワークのさまざまな側面に多くの人が重要性を感じながらも、実際には実行できていない状況があることがうかがえます。
なお、両者の差が30 ポイントを超えた項目は、「配偶者をほめること」(30.5 ポイント)、「地域に友人をもつこと」(35.8 ポイント)、「仕事以外の友人をもつこと」(30.8 ポイント)の3項目でした。このほか、「配偶者に感謝すること」(21.2 ポイント)、「近所の人と良好な関係を保つこと」(25.3 ポイント)、「仕事上の人脈を広げること」(25.7 ポイント)、「できるだけ多くの友人をもつこと」(27.3 ポイント)の4項目でも両者に20 ポイント以上の差がみられます。これらの項目では、重要性を感じていながらも、実行できていない人が特に多いと考えられます。
タイム編現在のネットワークに関する不安
不安を感じる人が最も多かったのは「近所にいざというとき頼れる人がいないこと」どの項目でも、不安を感じている人より感じていない人の方が多い
図表22 は、<家族・親族><地域><友人>ネットワークに関して、不安を感じている人(「非常に不安」+「やや不安」)の割合を示しています。
不安を感じている人が最も多かったのは、「近所にいざというとき頼れる人がいないこと」(44.1%)でした。ただし、どの項目でも、不安を感じている人より不安を感じていない人の方が多くなっています。
性別にみると、「配偶者との関係がうまくいかないこと」「子どもとの関係がうまくいかないこと」「悩みを相談できる友人が少ないこと」の計3項目では、男性が女性を5ポイント以上上回っています。男性は家族関係や悩みを相談できる相手が少ないことを不安に感じている人が女性より多いと考えられます。
タイム編困ったときの対応①
困ったときの対応で最も多くあげられたのはすべての項目で「家族・親族に頼む」
今回の調査では<自分の病気・入院・手術等><急用・長期不在時><その他>という3つの領域に関するさまざまな事象への対応が必要になった場合に、どのように対処するかをたずねました。その結果、すべての項目に共通して最も多くあげられた対応は「家族・親族に頼む」でした(図表23)。
「自分が入院するときの保証人」(78.6%)、「自分が手術を受ける場合の同意書への記入」(80.4%)、「自分が賃貸住宅を契約する場合の保証人」(74.7%)では、「家族・親族に頼む」と答えた人がいずれも7割を超えました。一方、「友人・知人に頼む」と答えた人は、すべての項目で1割に満たず、「外部のサービスを利用する」と答えた人の割合を下回っています。
タイム編困ったときの対応②
子どものいない単身世帯の約2割は、『入院時の保証人』を「誰にも頼めない」
図表24 は、これらの事象への対応が必要になった場合に「誰にも頼めず、利用できる外部サービスもない」と答えた人の割合を性別、および世帯形態別に比較したものです。
性別にみると、男性では「誰にも頼めず、利用できる外部サービスもない」と答えた人が全ての項目で女性を上回っています。また、世帯形態別にみると、単身(別居子無)世帯や自分・親(別居子無)世帯ではそれ以外の世帯に比べて、「誰にも頼めず、利用できる外部サービスもない」と答えた人の割合が高い傾向がみられます。男性やこれらの世帯では、困ったことが生じた場合に、インフォーマルな関係を頼ることが難しかったり、外部サービスを利用する方法について知らない人が多いと考えられます。
タイム編老後のネットワーク①
半数以上の人が「自分が老後に1 人暮らしをすること」に不安を感じる
図表25 は、<自分の老後の1人暮らし>や<家族の老後の1人暮らし>に関して、不安を感じている人の割合を示したものです。
まず、「自分が老後に1人暮らしをすること」そのものに不安を感じる人は56.6%でした。これに対して、老後の1人暮らしで「自分が病気などで寝込み、食事や買い物に困ること」(63.7%)、「自分が自宅で倒れても、誰にも気づかれないこと」(62.4%)、「自分が自宅で亡くなっても、誰にも気づかれないこと」(60.0%)の3項目では、不安を感じる人が6割を超えています。自分が老後に1人暮らしをすることそのものよりも、事故や病気の際に気づいてもらえないことを不安に感じる人の方がやや多いことがわかります。なお、不安を感じる人の割合を性別に比較した場合、ほぼすべての項目で男性が女性を下回りました。男性に比べて女性の方が、自分や家族の1 人暮らしについてさまざまな不安を感じる人が 多いと考えられます。
タイム編老後のネットワーク②
老後生活では家族・親族とのネットワークを重要だと思う人が7項目中6項目で9割前後
図表26 は、老後生活における、ネットワークの重要性に対する意識を示したものです。
調査の結果、<家族><地域><多様性>というネットワークの3領域のうち、老後生活において重要だと思うと答えた人が最も多かったのは<家族・親族>で、7項目中6項目で9割前後を占めました。
「非常に重要だと思う」割合に注目すると、<家族・親族>領域では「配偶者と良好な関係を保つこと」(60.9%)、「配偶者に感謝すること」(54.1%)、「子どもと良好な関係を保つこと」(56.4%)で5割を超えています。これに対して、「配偶者をほめること」(47.1%)、「自分の親と良好な関係を保つこと」(41.6%)、「親族と良好な関係を保つこと」(34.2%)「配偶者と共通の友人をもつこと」(21.4%)などの項目では5割を下回っています。性別にみた場合、「子どもと良好な関係を保つこと」(男性52.6%、女性59.9%)、「自分の親と良好な関係を保つこと」(男性37.6%、女性45.6%)、「仕事以外の友人をもつこと」(男性20.5%、女性25.8%)では、男性の割合が女性を5ポイント以上下回っていました。男性より女性の方が、老後生活において、子どもや親と良好な関係を保つこと、仕事以外の友人をもつことを重要だと考えているようです。
<地域>領域では、近所づきあいや地域に友人をもつことを「非常に重要だと思う」人は2割強にとどまっており、<家族・親族>領域に比べて低い傾向がみられます。
一方、<多様性>領域で重要だと思うと答えた人の割合が最も高かったのは「仕事以外の友人をもつこと」(78.5%)であり、「仕事上の人脈を広げること」(51.9%)を20 ポイント以上上回りました。
タイム編老後のネットワーク③
老後生活では現在に比べて「配偶者と共通の友人をもつこと」や「自分より若い友人をもつこと」が重要になると思う人が多い
図表27 は、現在の生活におけるネットワークについて重要だと思うと答えた人の割合と、老後生活におけるネットワークについて重要だと思うと答えた人の割合を比較したものです。
これをみると、「配偶者と共通の友人をもつこと」「自分より若い友人をもつこと」の2項目では、老後の重要度が現在の重要度を5ポイント以上上回っているのがわかります。配偶者と共通の友人をもつことや、自分より若い友人をもつことは、現在よりも、老後生活において特に重要になると考えている人が多いと考えられます。
タイム編≪研究員のコメント≫
(1)家族・親族ネットワークの重要性
現在の生活におけるネットワークのうち「非常に重要だと思う」人が6割を超えていたのは「配偶者と良好な関係を保つこと」と「子どもと良好な関係を保つこと」の二つだけでした。近所の人と良好な関係を保つことや多様な友人ネットワークをもつことも、重要だと考えられてはいますが、家族・親族関係を良好に保つことに比べれば重要度は低くなっています。こうした結果は、家族をもつ人にとって、家族と良好な関係を保てないことやそれらの関係を失うことが、生活上の大きなリスクになりうることを示しています。
とりわけ男性では、年代にかかわらず、「子どもと良好な関係を保つこと」ができていない人が約2割みられました。40・50 代の男性にとって、子どもとよい関係を築き、それらを維持することは、大きな課題の1つといえるのではないでしょうか。
(2)困ったときの頼り先としてのネットワーク
病気・入院・手術等への対応が必要になった場合に、どのように対処するかをたずねました。その結果、すべての項目で最も多くあげられたのは「家族・親族に頼む」という対処方法でした。
家族・親族がいる人の多くは、40~50 代で生じるさまざまな困難の多くを「家族・親族に頼む」ことでしのげるかもしれません。しかし、年齢とともに、家族・親族の状況は変化します。自身が年齢を重ねていけば、いつまでも頼れるとは限らないのです。実際に、高齢の親と暮らす自分・親世帯(別居子無)や単身世帯(別居子無)では、「自分が入院するときの保証人」を「誰にも頼めない」と答えた人が2割を占めました。われわれは誰もが老後、1 人で暮らす可能性があります。そのような場合に備えて、万一の場合に利用できる外部サービスに関する情報を知ることや、それらを考慮して費用を準備しておくことが、40・50 代にできる老後生活の備えといえるのではないでしょうか。
(3)生きがいとネットワークの持つ可能性
困ったときの頼り先として、友人・知人ネットワークを想定している人がきわめて少ないことが明らかになりました。また、生きがいを感じるときについては、旅行や趣味、飲食をはじめ、自分の好きなことをする時間や、自分の好きな場所に出かける時間をあげる人が多くなっていました。これらの結果をふまえると、友人・知人ネットワークをもつことは、困ったときの頼り先といった実益的なものよりも、生きがいを感じるような、自分のための時間をともに楽しんだり、そのような場で過ごす時間を共有するといった場面において何らかの可能性をもつようにみえます。
子どもの巣立ちや配偶者との別離等を迎えれば、家族がいる人も含めて将来的には誰もが単身世帯となる可能性があります。このように考えると、将来、単身世帯となった後の高齢期を過ごしていく上で、自分が生きがい感じられるような時間をともに楽しんだり、そのような場で過ごす時間を共有できるような友人ネットワークをもつことを40・50 歳代のうちから十分に意識しておくことも必要なことなのかもしれません。 (研究開発室 主任研究員 北村安樹子)
(提供:第一生命経済研究所)
㈱第一生命経済研究所 ライフデザイン研究本部 研究開発室 広報担当(津田・新井) TEL.03-5221-4771 FAX.03-3212-4470 【URL】http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/ldi