不動産業界や不動産投資業界で最新のトレンドワードを知ることは、その業界の最新情報を知ることにもつながります。賢く不動産投資を成功させるために役に立つ最新の不動産ワード5つを、技術の進化や新たな法律の施行など社会的な背景とともに解説します。

最新用語(1) 賃貸は掛け捨てという常識を変える「譲渡型賃貸」

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(写真=Rawpixel.com/Shutterstock.com)

家賃を一定期間払い続けることで、その物件が本人の所有になるという形態のことです。住宅ローンを組んで物件を購入することと異なる点の一つは、もし物件を手放すことになったときでも、借入金の負担などが残らないことです。

購入する場合はローンの審査がネックになることもありますが、譲渡型賃貸の場合は簡易的な審査で住み始めることができるのも特徴です。賃貸は基本的には「掛け捨て」ですが、この仕組みに一石を投じたのがこの「譲渡型賃貸」です。

最新用語(2) 地震大国・日本で決して無視できない「長周期パルス」

耐震性が高いとされてきた高層ビルやマンションを破壊する――。この「長周期パルス」が注目されるようになったのは、2016年4月に発生した熊本地震でした。これは、免震構造を持つ建物にも大きな被害をもたらすリスクがあり、富裕層の投資先としても注目されている超高層タワーマンションにも、建物の傾きや変形を生じる可能性があります。そうなれば不動産価値は一気に下落するでしょう。

長周期パルスは活断層の近くで特に生じやすい揺れのパターンとされ、直下型地震において建物への被害が懸念されます。耐性がある免震構造の研究開発も進んでいますが、これを避けるためには、不動産を購入・賃貸する際に地盤情報を確認することが有効とされています。地震大国・日本においては、不動産を購入する際の一つの判断材料として、地盤の確認は必須です。

最新用語(3) 不動産テックの代表格とも言える「IoTマンション」

「フィンテック(金融×技術)」など、既存の業界・産業をテクノロジーによって進化させる動きが広まる中、不動産業界でも「不動産テック」「リアルエステートテック」という言葉が誕生しています。

その不動産テックの主役になるのが「IoTマンション」です。IoTとは「Internet of Things」の略で、「あらゆるモノがインターネットにつながる技術・こと」などと訳されます。スマートフォンでドアの解錠が可能な「スマートロック」や、スマホで遠隔地から家電の操作や来客の対応を可能にする技術の導入も進んでいます。IoT全盛期を迎えるこれからの時代に、IoTマンションは一層注目されるでしょう。

最新用語(4) 180日上限が定められた民泊収益化の切り札「二毛作」

不動産投資業界でいう「二毛作」は、物件を「マンスリー賃貸」と「民泊」という2つの運用方法で回していくことを指します。

これは、住宅宿泊事業法(民泊新法)によって民泊の営業日数の上限が年間180日と定められたことで生まれた運用方法で、残りの185日をマンスリーという形で賃貸することで、物件の収益を最大化しようとするものです。

ただ、宿泊需要や賃貸需要の高まる時期が重なることもあり、それを調整して運営していくことは難しいという指摘もあります。この二毛作を不動産投資手法の一つとして位置付けていいかどうかについては、議論の余地があるでしょう。

最新用語(5) 実質的な収益を正しく判断するための「利回り差」

不動産投資においては、「利回り」が一つの指標となります。利回りとは、年間の賃貸収入を物件の取得金額で割ったものですが、利回りが良くても、借入金利が高い場合は結果的に手取り額が少なくなります。

そのため最近では、不動産投資の利回りから借入金利の利回りを差し引いた「利回り差(イールドスプレッド)」が注目されています。特に海外不動産などに投資する場合には押さえておくべき概念で、利回り差を算出して投資判断材料の一つにするべきです。

情報感度を上げて時代の変化を感じ取る重要性

不動産業界は社会の変化と密接な結びつきがあります。今後、さらに新しい概念や方法論が登場することは間違いありません。現在の常識が、10年後には非常識になっている——。それが起こり得るのが現代社会であり、不動産投資業界も例外ではありません。

不動産投資を成功させるためには、基礎知識だけでは不十分です。情報感度を上げて時代の潮流を敏感に感じ取り、将来の市場を予想できるくらいのリテラシーを持ってはじめて、不動産投資の成功確率が高まると言えるでしょう。(岡本一道、金融・経済ジャーナリスト / d.folio