ビッグデータ解析などの最新技術を活用したフィンテックによって、金融界では劇的な変化が進んでいます。一昔前には想像もつかなかった新サービスが続々と登場し、決済や送金、取引などにおいて利便性が格段に向上しているといえるでしょう。ユーザーには便利な時代になりましたが、ウォール街は激変に震えているようです。

学習するAIで資産運用が変わる

AI
(画像=Panchenko Vladimir/Shutterstock.com)

金融界では現在、高度なアルゴリズム(問題を解くための手順)を用いたシステムトレードが台頭していますが、その中で市場の動きに少なからず変化が生じています。そして、従来なら過熱感を警戒して、反落しても不思議はない相場でも上昇が続いたり、逆に下落が止まらなかったりするケースが散見されます。

このような事態になったとき、生身の人間の判断には、どうしても感情や先入観、偏見などが絡んでくるものです。しかし、コンピュータの場合はデータ分析に基づいて客観的な判断がなされ、相場反転の明確なシグナルが発せられるまで方針を変えないケースが多いともいえます。

つまり、生身の投資家が取りこぼしてしまう利益も、コンピュータの判断に基づく取引なら享受できる可能性があるというのです。このことがシステムトレードの勢力拡大をさらに助長しているともいえます。

単にアルゴリズムを用いるだけにとどまらず、AI(人工知能)に裁量を委ねる運用も普及し始めています。最新のAIにはコンピュータ自らが学習して知見を深めていくというディープラーニング機能が搭載されており、今まで以上に客観的で合理的な投資判断がくだされていくことでしょう。

もはやトレーダーやファンドマネージャーは不要!?

当然ながら、こうした変革により金融界には大きな影響がもたらされています。世界の金融の最先端であるニューヨークのウォール街では、すでにその兆候が出ているようです。

たとえば、これまでウォール街においてトレーディングや調査に携わる人たちは高給取りの代名詞でした。ところが、AIは彼らに払う人件費よりもローコストで運用できるだけでなく、生身の人間を凌ぐ投資判断を期待できます。

AI運用の普及に拍車がかかるとともに、トレーディング部門や調査部門の人員削減が進むのは必然的な流れといえるでしょう。実際、米国の大手金融機関ではそうした部門における人員削減の動きが見受けられます。

遅かれ早かれ、ウォール街で起こった変化が日本にも波及するのは間違いなさそうです。すでに、国内でもロボットアドバイザーから自分に最適なポートフォリオを提案してもらったり、実際の運用まで一任できたりするサービスが登場しています。

しかし、これはまだプレステージにすぎません。国内の金融界でもAIによる自動化が推進され、それに伴ってトレーダーやファンドマネージャーの数は減っていくと推測されます。

AIは金融界のみならず社会全体を大きく変える

離職した人たちは、おのずと金融界の別の分野や別の業種へと移っていくことになります。これは、金融機関のみならず他の業種における人材採用の動きにもインパクトを与えるはずであり、新卒も含めた求職者の志向にも変化が出てきそうです。

また、資産運用においてAIの存在感が一気に高まっていくことは金融界だけにとどまらず、社会全体にも劇的な変化をもたらすことでしょう。医療や介護をはじめ、もしかしたら農業・漁業など、金融以外の分野でもAIの浸透が進むかもしれませんし、あちこちで同時多発的に変革・革新が起きることになるでしょう。

ひょっとしたら10年後には、今の私たちが全くイメージできないような世の中になっているかもしれません。この劇的な変化を追い風に業績を躍進させる企業が出てくるのも必至ですし、そうした時代の到来を念頭に置いた資産運用をすることにより、大きな成果を手にできるかもしれません。

(提供:フィデリティ投信