まずはNISAの概略を知ろう

NISA,トウシル
(画像=トウシル)

NISA(愛称:ニーサ)は正式には「少額投資非課税制度」と呼ばれるもので、2014(平成26)年1月からスタートしました。

この制度は、証券会社や銀行などの金融機関で少額投資非課税口座(NISA口座)を開設して上場株式や株式投資信託等を購入すると、売却益や配当金・分配金が非課税になるというものです。非課税枠は年間あたり100万円まで、非課税期間は5年間となっています。

NISA口座の開設可能期間は2014年から2023年まで、非課税期間は2027年までとなっています。NISAの特徴として、「最大600万円まで非課税」とよく言われますが、これは毎年限度額いっぱいまでNISA口座で株式などを購入して保有を続ければ、2018年以降は最大で120万円×5年=600万円分の非課税措置を受けることができるという意味です。

NISA口座は、日本国内に居住の20歳以上の個人であれば誰でも開設できます。なお、開設できるNISA口座は1人当たり1口座のみとなっています。

NISA口座開設先はあわてずゆっくりと考えよう

NISA口座は1人1口座しか開設できません。特定口座のように、複数の証券会社に開設する、ということはできないのです。そのため、証券会社各社は、テレビCMを流したり、HPで特集を組んだりして、個人投資家の囲い込みに力を入れています。

いったんNISA口座を開設すると、2017年まで金融機関を変更することはできません。口座を開設した後に、「やっぱりあの証券会社にしておけばよかった」と後悔することのないよう、あわてずじっくりと検討するようにしてください。

各証券会社が取り扱っている上場株式など以外の商品(株式投資信託や外国株など)やサービス、手数料、使い勝手・操作性などから、どの証券会社にNISA口座を開設するかを選びましょう。

NISA口座にはニューマネーを投資する必要がある

現時点で一般口座や特定口座にて保有している株式がある方も多いと思います。しかし、一般口座や特定口座の株式をNISA口座に移すことはできません。

つまり、新たな資金を使って購入した株式等でなければ、NISA口座に預け入れることはできないのです。

もし、新たに投資に回せるお金がないが一般口座や特定口座にて株式を保有している、という方は、一般口座や特定口座の株式を売却して現金化したのち、そのお金を使って株式などを購入し、NISA口座に預け入れるという形であれば問題ありません。

非課税枠を翌年以降に繰り越すことはできない

非課税枠が余っても、それを翌年以降に繰り越すことはできませんので注意してください。

「年間120万円」「5年間で600万円」という非課税枠の恩恵をフルに生かすには、毎年非課税枠をしっかりと使い切ることが必要になります。5年間で600万円分の投資をするのではなく、1年ごとに120万円分の投資を5年間続けることではじめて最大限の恩恵を受けることができます。

例えば、今年2018年の投資金額は20万円だった場合、来年2019年は、120万円と今年使わなかった100万円を合わせた220万円分をNISA口座にて投資、ということはできません。

あくまでも「1年ごとに120万円」が限度で、120万円に満たない分を翌年以降に繰り越すことはできないのです。

非課税期間は5年だがロールオーバーで実質10年可能

NISA口座の非課税期間は5年間となっています。例えば、2014年にNISA口座に預け入れた株式の非課税期間は2018年までです。5年経過後は、一般口座や特定口座に移管され、その後の売却益や配当金は課税されます。

ただし、5年経過後、翌年の非課税枠を使うことで、非課税期間を実質的にさらに5年間延長することができます。

2014年にNISA口座に預け入れた100万円の株式は、2018年で非課税期間が終了してしまいますが、これを2019年の非課税枠を使ってロールオーバーすれば、2023年までの都合10年間非課税期間を続けることが可能です。

なお、ロールオーバーする際は、時価で行いますが、例えば2014年に100万円で購入した株式の時価が2018年末で200万円になっていたら、そのうち2019年の非課税枠である120万円分ではなく、2018年の制度変更により200万円全額をロールオーバーすることができます。

配当金非課税の恩恵を受けるために株式数比例配分方式の選択を忘れずに

実は、NISA口座を開設して、その口座内で株式などを購入・保有しただけでは、配当金・分配金につき非課税の恩恵を受けることができません。

配当金・分配金が非課税となるのは、NISA口座内に受け入れた株式等で、かつ配当金などの受取方法として「株式数比例配分方式」を選択している場合に限られます。

もし、株式数比例配分方式をまだ選択していないという方は、忘れないうちに早めに証券会社にて手続きを行うことをお勧めします。

株式数比例配分方式以外の配当金受取方法を選択していても配当金を受け取ることはもちろんできますが、受け取り時に20.315%の税金が課税されてしまい、せっかくの非課税の恩恵を受けられませんのでご注意ください。

※このレポートは、2018年7月11日のレポートをトウシル編集チームがデータなどを一部修正したものです。

足立 武志(あだち たけし)
足立公認会計士事務所代表 公認会計士・税理士・ファイナンシャルプランナー
個人投資家の「困った!」を解決する公認会計士。一橋大学商学部経営学科卒業。資産運用に精通した公認会計士として個人投資家向けに有用かつ実践的な知識・情報をコラム、セミナー、書籍、ブログ等で提供。株式会社マーケットチェッカー取締役として株式投資スクリーニングソフト「マーケットチェッカー2」の開発にも関わる個人投資家でもある。