店舗に行かなくても家にいながら試着した気分になったり、今日着るべき洋服のコーディネートを人工知能がしてくれるなど、ファッション(Fashion)とテクノロジー(Technology)を融合したファッションテック(FashionTech)が浸透しています。トレンドを追うファッションよりも、自分の価値観にあう洋服を選びたいという人が増え、大衆的な戦略よりもOne to One戦略が重視されるようになりました。そんなファッション業界では、D2C(Direct to Consumer)が新たなマーケットを構築しています。

D2Cでアパレルブランドが次々と大型資金調達を成功

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(提供=J.ScoreStyle)

D2C とは、自分たちで企画・製造した商品を顧客にダイレクト販売を行うビジネスモデルを言います。基本的には店舗を持たずに自社のECサイトを通じて顧客に対して直接販売するので、輸送費や人件費などの中間コストを抑えて質の高い商品を提供できます。D2Cをベースに売上を拡大している有名なベンチャー企業も現れています。

Allbirds 世界一の履き心地と名高いシューズメーカー

2018年10月に5,000万ドルの資金調達を行ったシューズブランドAllbirds(オールバーズ)は2014年の創業後、これまで累計で7,500万ドルもの資金調達を行っています。元サッカー選手のTim Brown氏と理系出身の経営コンサルタントのJoey Zwillinger氏が創業した同社は長年環境問題に対して意識の高いハリウッド俳優のレオナルド・ディカプリオからも出資を受けています。

同社が販売しているのはメリノウールを使ったシンプルなデザインのスニーカー。Time誌で世界一快適なシューズだと評価されたことでも有名ですが、同社のスニーカーは化学繊維を使っておらず、環境にも配慮しているのが特徴です。

同社は当初ECショップのみで展開していましたが、昨年2017年に初のリアル店舗を出店。さる2018年9月にはニューヨークに初の旗艦店を構えました。シリコンバレーのIT企業に勤めるビジネスパーソンを中心に人気だったこともあり、ニューヨークの旗艦店は大きな注目を集めました。

店内には数種類のスニーカーと試着用の椅子、自分の足のサイズにあったスニーカーを試着して歩くスペースしか用意されていません。また、店員に声をかけてから試着をするというルールを設け、顧客が店内で心地よく過ごせるように店内が混み合うのを避けるようにコントロールしています。

同社はサンフランシスコとトロントを含めて合計3店舗出店をしており、シカゴやボストンでも店舗契約が結ばれている他、先日調達した資金を使って2019年にアメリカで8つの出店を計画。ロサンゼルスやワシントンD.Cなどのアメリカの主要都市でも展開を予定しています。

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(提供=J.ScoreStyle)

Warby Parker 「最もイノベーティブな会社」の受賞歴のあるメガネブランド

アメリカを拠点とするメガネブランドWarby Parker(ワービー・パーカー)も2018年にプレIPOで7,500万ドルの資金調達を実施し、時価総額が175億ドルまで跳ね上がりました。

同社は他に先駆けてD2Cで成功した有名なアパレルベンチャーです。創業は2010年でしたが2015年にはFast Company誌で最もイノベーティブな会社にも選ばれています。これはFacebookなどの世界的に有名なIT企業を抑えての選出だったことから当時大きな話題となりました。

顧客がECショップでの購入後に「思っていたものと違っていた」というネガティブな感想を持たないように、自宅でメガネを試着できるHome Try-Onを導入。EC上でいくつかのアンケートに答えると、メガネが5本まで試着できる仕組みです。

同社もリアル店舗を導入しています。試着したメガネを撮影し、顧客のスマホに送付するシステムも導入しています。顧客からすれば、生活必需品であり、おしゃれアイテムのひとつでもあるメガネをつけている自分の姿を客観的に見られるのはメリットですし、SNSを通じて周りの人に似合うかどうか評判を聞き、購入判断ができるのがポイントです。#warbyparkerでインスタグラムを検索すれば20万件以上の投稿がありますし、Pinterestでもオシャレなメガネ女子・男子の画像が数多くシェア・拡散されています。

両社を含めてD2Cで成功を収めている会社がリアル店舗を持つのは、顧客に対して「試着できる場所の提供」を行うとともに、リアルなコミュニケーションを通じて得た情報収集からマーケティングを行い、今後の商品設計や品質改善に繋げる目的もあります。あくまでも店舗は体験の場とし、エンゲージメントを高めることを優先することで、ネットとリアルの長所を取捨選択していると言ってもよいかもしれません。

D2Cブランドを支持するのは「個性」と「社会的価値」を重視するミレニアル世代

アメリカのFashionTech界隈のスタートアップ企業が次々と大型資金調達を行い、急成長を遂げている背景には、ミレニアル世代の存在があります。彼らは「消費を自己表現の一つとしてとらえている」のが特徴です。ミレニアル世代である20代前半から30代後半が消費世代の中心となったことで、彼らの消費行動につながる好みや考え方は、ファッションのみならず多くの業界にも影響を与えています。

大量生産や大量消費による環境破壊や、人権侵害、動物の迫害の深刻化が進む中で育ったミレニアル世代は、自身の消費行動が起こすインパクトに対しても敏感です。その一方で、ITリテラシーが高く、SNSを介して自分を表現する力に長けているので、「自分が何を選び、何を身につけ、どんなライフスタイルを送っているか」というセルフブランディングを大切にしています。「社会的価値」と「個性」の両方を満たしたいというニーズとマッチしたのがD2Cというビジネスモデルだったのです。

D2Cを活用するブランドに共通するブランド理念「サスティナビリティ」

国連によるSDGs(Sustainable Development Goals「持続可能な開発目標」)は環境や動物福祉、人権に配慮した製造、物流、販売などに対する目標が記載されていますが、D2Cブランドには、社会的課題に対する意識の高さを明示しているブランドが多くあります。

例えば、Allbirdsでは、「快適さ」と「サスティナビリティ(持続可能性)」の両立を目指し、素材の調達や生産ラインにも厳しい基準を設けています。使用する素材にはウールやサトウキビ、リサイクルペットボトル、パッケージにはリサイクルダンボールも使われています。

Warby Parkerでは、「Buy a Pair, Give a Pairプログラム」というメガネが一つ売れるごとに、メガネを一つ途上国の人に寄付する取り組みを行い、これまでに世界50ヵ国以上へメガネが届けられています。このような取り組みにより新興国の人々はクリアな視界を手に入れ、勉強や仕事に励むことができるようになっています。また、同社は新興国の人々に知識や技術を伝え、彼らのメガネ販売支援を通じて新興国経済の成長にも寄与しようとしています。

D2Cの浸透により消費者は商品のストーリーに共感し発信してくれる

D2Cによりユニコーン入りした企業の多くは、もともとは「こだわりのモノづくり」からスタートした職人要素のあるブランドでした。それがファッションテックとの融合で消費者に商品のこだわりや素晴らしさがダイレクトに届く仕組みを構築したのです。今後日本でもこのようなD2Cの手法を取り入れたファッションブランドが増えていく可能性を秘めています。近年、世界で声高に叫ばれる「倫理的な消費」は、D2Cを通じて日本でも広がることとなるでしょう。(提供:J.Score Style


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