正式名称:ISM製造業景気指数
ポイント:米国の「製造業」の景気転換の先行指標
概要:ISM製造業景気指数は、アメリカ合衆国の米国供給管理協会(ISM:Institute for Supply Management)が発表する、製造業の購買担当役員へのアンケート結果を元にした「企業の景況感」を示す経済指標をいう。本指標は、製造業の最重要指標の一つで、その作成にあたっては、製造業約350社の購買担当役員にアンケート調査を実施し、新規受注・生産・雇用・入荷遅延・在庫の項目があり、1カ月前との比較を3択(良い/変わらず/悪い)で回答したものを集計し、季節調整を加えている。ISM製造業景気指数は、米国の主要指標の中で最も早く発表されること(翌月第1営業日)、また企業のセンチメント(景況感)を反映した景気転換の先行指標とされていることから、注目度は極めて高いといえる。一般に、本指数が50%を上回ると景気拡大、50%を下回ると景気後退を示唆すると言われている。特にGDPに先行して景気転換を示唆するところは重要であり、1931年以来の伝統的な経済指標(景気動向指数)となっている。また、米国の製造業の景況感を示す経済指標には、フィラデルフィア連銀製造業景気指数、ニューヨーク連銀製造業景気指数などがあり、マーケットの注目度は、1.ISM製造業景気指数、2.フィラデルフィア連銀製造業景気指数、3.ニューヨーク連銀製造業景気指数の順になっており、この3指数は相関関係が比較的高いと考えられている。なお、FRB(米連邦準備理事会)は、本指数が50%を下回っている場合に利上げをしたことがないので、FRBの利上げスタンスを見極める意味でも注目されている
特徴:この指標を用いるメリットとしては以下がある。すなわち、まずは翌月の第1営業日に発表されるため、国内総生産(GDP)や雇用統計などの先行指標として非常にタイムリーといえる点がある。次に米連邦準備理事会(FRB)は、50を下回っている場合は、利上げをしたことがないので、FRBの利上げスタンスを見極めることができる点である。加えて商品価格(銀、銅、鉄)の供給状況、価格水準が公表されるというのも有用である。ただし、用いるデメリットも存在する。まず、アンケートによる調査のため他の経済指標と比べて主観的な見解となっている点が重要である。加えて、指標としての国内総生産(GDP)への寄与度が比較的小さい点(ISM製造業 :約12%、ISM非製造業:約76%)も注意が必要である
洞察(インサイト):この指標の値と予想の関係によって生じる影響・効果は以下の通りである。予想を上回った場合、すなわち50%以上の場合は、景気が拡大
していく兆候と見られる。このとき、景気回復期待から米連邦準備理事会(FRB)の金融引締め観測が高まる。債券市場では、金利上昇による下落が見られる。ドルは強含みに推移していくことが予想される。株式市場では、同じく金利上昇により株安の傾向が見られる。ただし、景気後退期に予想を上回った場合には、景気回復期待から株高が見られると言える。
予想を下回った場合、すなわち50%未満の場合は、景気が後退していく兆候と見られる。このとき、景気減速懸念から米連邦準備理事会(FRB)の金融緩和観測が高まる。債券市場では、金利低下による上昇が見られる。ドルは弱含みに推移していくことが予想される。株式市場では、同じく金利低下により株高の傾向が見られる。ただし景気拡大期に予想を下回った場合には、景気減速懸念から株安が見られると言える。
発表頻度:毎月
発表時期:
米国東部時間10:00
・月次ベース:前月レポート 毎月第1営業日
・半期ベース:5月と12月に半期ベースのレポートが発表される
重要度:1