アジア諸国が目覚ましい経済発展を遂げているのは、大半の人が多かれ少なかれ認識していることでしょう。しかし、すでに今、アジア地域が世界の経済成長の60%を占め、最大の推進力となっているという事実をみなさんはご存じでしょうか。

アジア開発銀行(ADB)が2017年4月に公表した報告書「アジア経済見通し2017年」によれば、全体の3分の2以上のアジア地域において経済が拡大傾向を示しているようです。世界的に景気が上向きで外需が旺盛なことに加え、輸出の主力である一次産品の食糧・燃料価格が回復してきたことが背景にあるようです。今や世界経済を支えるアジアのパワーについて知っておきましょう。

成長の牽引役は中国、インド、インドネシア

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(画像=PIXTA)

アジア地域の中でも特に力強い成長を遂げているのは、中国やインド、さらにインドネシアをはじめとする東南アジア諸国です。成長率の推移だけに目を向ければ、2017年、2018年とも対前年比で若干の減速をADBは見込んでいますが、これまで“世界の工場”として存在感を示してきた中国は、世界有数の消費大国への転換を図っており、むしろ現状はそうした政策の代償にすぎないとも受け取れるでしょう。

実際、中国からインバウンド(訪日外国人旅行者)が押し寄せていることを踏まえても、同国の消費は着実に活発化しているといえそうです。習近平体制も強固となり、今後も構造改革などの主要政策を推進していくものと考えられるでしょう。

一方、アジアの中で最も急成長を遂げているのが南アジアであり、その盟主こそインドです。ADBの予測によれば、2017年、2018年とも対前年比で成長率が伸びていくとされています。

それというのも、インドのモディ政権が「モディノミクス」と呼ばれる経済改革を推進しているに加えて、危惧されていた高額紙幣廃止の影響も意外にもわずかな影響だったようです。また、与党の選挙大勝で議会のねじれ現象が解消されたことも奏功しているといわれています。

天然資源が豊富なインドネシアも、マレーシアやベトナムなどとともに一次産品の市況回復が絶好の追い風となっているようです。東南アジアでは域内のほぼすべての国において、成長率がさらなる上昇を遂げるとADBは予想しています。

欧米の金融政策は目先のリスクではあるけれども……

こうしたアジア経済に水を差しかねない懸念材料をあげるとすれば、それは欧米先進国の動向でしょう。米国はリーマンショック後の景気回復からの経済成長が続いています。また、ようやく欧州でも回復傾向が顕在化してきています。

ただし、米国のFRB(連邦準備制度理事会)は金融危機後に行ってきた金融緩和から出口戦略である金融引き締めへと徐々に転換していく見通しであり、ECB(欧州中央銀行)も量的金融緩和政策の規模の縮小へと舵を切ります。これらにより、株式市場や景気への影響が心配されるところでしょう。さらに欧州は、英国のEU(欧州連合)脱退といった大きな課題にも直面しています。

ただ、今のアジア経済が1997年のアジア通貨危機のころとは全く別物であることも確かでしょう。当時はまだまだ経済構造が脆弱でしたが、冒頭でも触れたように現在のアジア諸国は世界の経済成長を牽引しており、先進国の金融政策によって景気が大きく失速する恐れは少ないといえそうです。

経済成長を反映してアジア諸国の株式市場も、中長期的に右肩上がりになるものと考えられています。仮に米国の利上げなどで一時的にアジア経済の成長が予想よりも減速し、それに伴って株式市場も調整したとすれば、押し目を拾う好機であるとも受け取れそうです。

(提供:フィデリティ投信