年末が近づくと、日本だけでなく世界各国で金融政策に関する話題が騒がしくなります。米国では中央銀行の役割を担う「FRB(Federal Reserve Board 連邦準備制度理事会)」が開催する「FOMC(Federal Open Market Committee 連邦公開市場委員会)」が、日本では日銀の「金融政策決定会合」が、それぞれ翌年の経済に影響するような重大な政策を発表するからです。

しかし、ニュースで取り上げられても、それが一体なにを意味しているのか、今一つよくわからない人も多いことでしょう。そこで、「年末に向けての日米における金融政策の動向が、私たちの生活にどう影響するのか」について探ってみます。

そもそも金融政策の目的は、経済の安定と持続的な成長

金融政策
(画像=PIXTA)

金融政策とは、その国の中央銀行が各々の経済の現状を精査して、最適な対策を講じる政策のことです。目的は、一言でいえば経済の安定と持続的な成長といえます。具体的には金利を上げたり下げたりして、市場に出回るお金の量を調節するのです。それらの方法を称して、「公開市場操作(オペレーション)」と呼びます。

たとえば金利を下げると、銀行などの金融機関は低い金利でお金の貸し出しができるため、企業も融資や社債発行が容易となる傾向です。設備投資や雇用の増加、給料支払いのための資金を調達しやすくなります。つまり、経済の血液となる資金が世の中で好循環していき、景気が良くなることが期待できるのです。逆に金利を上げると、企業も人もお金を借りにくくなり、景気の過熱が押さえられる傾向になるといえます。

公開市場操作は、各国が現実の経済状態を見て、タイミングを図りながら微妙な調整を行うところにポイントがあります。では世界の中央銀行は今、足元の経済をどう判断し、どのような政策を出そうとしているのでしょうか。

FOMCではいよいよ利上げを発表か?その影響は?

米国における金融政策が決められているのは、先に述べたFOMCです。現在米国では、長年続いてきた低金利政策からの転換として、すでに利上げを始めており、「金利をいつ上げるのか」「上げるとすれば何%くらいなのか」「ペースの見通しはどのくらいなのか」という点に非常に話題が集まっています。

米国は世界経済の中心であり、ドルは世界の決済通貨、そして基軸通貨といわれています。このため一国の金融政策といえども、その変更は世界経済に大きな影響を与えうるでしょう。米国の金利が上がれば、今後は相対的に、より通貨としての利回りが高くなりうる米ドルに向かって世界のお金が流入することで米ドル高へ、そして米ドル建て資産の中で成長が見込まれる米国株への資金流入から株高となる可能性があります。

米国と密接な関係にある日本においては、米国株高と輸出産業の比率の大きさから、為替が円安ドル高の影響を受けて株高傾向になると予想されます。特に輸出産業の中でも自動車など、海外での売上高が大きい業界は潤うでしょう。一方、マイナス影響として輸入コストが上昇してしまいさまざまな商品価格の値上がりも予想されます。

2017年以降の米国経済は堅調が伝えられており、今後のFOMCによる追加の利上げ発表がほぼ確実視されています。そうなると日本、および世界の経済も大きく動くことが予想されているため、実施時期や利幅に大きな関心が集まっているのです。

日本マイナス金利続行!?出口戦略に注目が集まっている

日本でも同様に、日本銀行の最高意思決定機関の一つである金融政策決定会合が、年末に向けて開催されます。日本では長年の間、いわゆる「マイナス金利政策」という金融緩和策が続いてきました。しかし、なかなか日銀の思惑通りにはデフレ脱却とならず、景気も明確に回復したとはいえない状況です。この状況を多くの人が肌で感じていることでしょう。

ただし、さまざまな経済指標では景気の回復も示しており、部分的には過熱感も出ています。難しい舵取りとなりますが、年末の金融政策決定会合では「従来通りの緩和路線を続けるのか」「もう一段の緩和策に踏み込むのか」が注目されています。さらに、景気はすでに回復しているとの判断のもと、いよいよ出口戦略の「緩和政策の終了」を指し示す可能性もあり、予断は許されません。

年末の発表で、世界経済も懐具合も大きく変わる?

日本だけでなく世界的に見ても、ここ十数年ほどは不景気を背景に低金利の状態が続いていました。しかし、いよいよ米国では、金融政策の大転換が実行され始めています。その結果、為替、株式、貿易、そして人々の収入までさまざまな影響が出てきそうです。

また実感のある好景気といえないまでも、GDP(国内総生産)世界第3位(2015年時点)である日本における金融政策も、世界に与える影響は決して小さくはありません。米国だけでなく、日本の政策もしっかりと世界の経済に影響しているのです。FOMCや金融政策決定会合の結果、「株や為替はどう動き」「国民の懐具合にどう直結するのか」など、年末に向けて目が離せない状況が続きそうです。

(提供:フィデリティ投信