2018年9月、株式会社ZOZO社長の前澤友作氏が世界初となる月への旅行の際に、数名のアーティストを同行する計画を発表し、話題となりました。前澤氏はアーティストに作品へのインスピレーションを与えることが目的と発言していますが、同様に芸術を愛し、振興支援している日本の起業家は少なくありません。
芸術家を支援する起業家
前述の前澤氏はアート収集家としても知られていて、現代芸術展の開催による普及事業や、若手芸術家及び若手音楽家への助成事業のために、2012年には公益財団法人現代芸術振興財団を設立しています。芸術支援を行う起業家の活動について紹介します。
カレーハウスCoCo壱番屋の創業者・宗次德二氏は、夫婦で開いた小さな喫茶店の人気メニューだったカレーライスを、今では全国のみならず海外にも展開するカレー専門チェーンへと発展させた人物です。大きな夢ではなくても小さな目標を1つずつ叶えてきた経験から、恩返しとして芸術振興や地域の清掃活動を行っています。2003年に設立したNPO法人イエロー・エンジェルでは、愛知県の青少年に楽器を贈るなど、音楽やスポーツなどに真剣に取り組む人を応援する活動を続けています。
2007年には、私財を投じてクラシック専用の音楽コンサートホール「宗次ホール」を開館し、誰もが気軽にクラシック音楽に親しめるように、現在も毎日のようにコンサートを開催しています。自身がヴァイオリンを好んでおり、若手演奏家の発掘・支援事業として「宗次エンジェルヴァイオリンコンクール」を開催したり、名器ストラディバリウスの貸与やコンサート出演といった賞を設けるなど音楽家を育成しています。
また、楽天株式会社の創業者・代表取締役会長兼社長である三木谷浩史氏は、プロスポーツのスポンサーとしても有名ですが、2011年からは東京フィルハーモニー交響楽団の理事長も務めています。資金を集められるメンバーを集めて、若い音楽監督が新しい発想を持って自由に活動できるようにすることで、同楽団は2015年の米CNN iReportにおいて「世界で最も優れたオーケストラ TOP10」に選出されるという功績を残しました。
楽天が持つテクノロジーを音楽に組み合わせることで変革をもたらすと話しており、交流のあるロックバンド・X JAPANのYOSHIKI氏を迎えた東京フィルのコンサートをニューヨークのカーネギーホールで開催するなど、これまでにない活動を行っています。
メセナ活動とその効果
フランス語に、芸術文化支援を意味するメセナという言葉があります。音楽、美術、演劇のほか、歴史的建造物や生活文化といったあらゆる芸術を指し、資金面での支援にとどまらず、非資金援助、顕彰事業など時代によって移り変わる芸術の形と同じく、メセナの活動も変容するとされています。このメセナに賛同する会社は増えており、資生堂、トヨタ自動車といった日本を代表する企業も、芸術の力によって地域や社会がさらなる発展を遂げるための支援を行っています。
企業や起業家がこのメセナに取り組む理由について、1990年より音楽メセナに取り組んできた新日本製鐵(現新日鐵住金)は、2005年の文化庁「文化審議会」において、「企業は誰のためにあるのか」という問いに対しての、「文化的価値」を提供する取り組みを通じて社会に貢献することを企業活動とする、という考えを示しました。また国際的に通用する本物の芸術を強化するために、官民相互の協力や支援が欠かせないとも述べています。
内閣府を行政庁として、1990年に設立された企業メセナ協議会の正会員が130社・団体を超えた現在。企業の多面的な事業活動による芸術文化支援はますます発展していくことが期待されます。
多様性を見せる芸術振興の形
ピクスタ株式会社は、2018年10月、月額制で継続的に芸術家を支援するプラットフォーム「mecelo」(メセロ)の提供を開始しました。クラウドファンディングのようなシステムを採用しており、芸術家を支援することで日本のアート市場を拡大することが狙いです。
株式会社アマナは2012年より写真雑誌『IMA』発刊と同時に、アートフォト事業を開始しています。ギャラリー機能を有し、国内外の写真フェスティバルに参加。2018年8月には長野の御代田にて町ぐるみの芸術祭「浅間国際フォトフェスティバル」を開催しました。
企業や起業家がそれぞれの形で携わる芸術分野支援が、今後どのように広がり、そしてどのような効果が表れるのか、注目です。(提供:JPRIME)
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