少子高齢化による人手不足が叫ばれる中、定年後の雇用が必須となる時代が来ています。高年齢者雇用がより活発化する将来、これまでとは違った賃金体系や人事評価などが必要になります。本稿では、定年後の雇用に向けた制度設計について解説します。

65歳全員雇用の時代が始まった

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(写真=Rawpixel.com/Shutterstock.com)

厚生労働省の2018年版「高齢者の雇用状況」によると、65歳までの雇用確保措置のある企業は99.8%と、ほぼ全員が定年後も雇用を継続することが可能となりました。一方、66歳以上で働ける制度のある企業は27.6%とまだ少ないのが実情です。

みずほ総研によると、2048年には国内の高齢化率が34.8%となり、さらに2065年には国内の労働力人口が現在よりも4割減となると予想しています。国内企業における人員構成が変化しつつある中で、高齢者による労働力の確保は今や待ったなしの状況になりつつあるのです。

ここで課題となってくるのが、賃金設計に基づく、各種の人事評価などの制度化です。中小企業における、現在の賃金制度はほとんどが、入社から定年退職までの期間における、会社への貢献度と賃金が一致するように設計されています。

現実問題として、国内企業の約3分の1がいまだ高齢者の評価制度を設けていません。高齢者への評価制度がまだきちんと整っていない以上、いざ高齢者雇用のさらなる義務化が施行された場合、賃金や評価などで思わぬリスクが生じるおそれもあります。

では、具体的にどのような評価体系にすれば良いのでしょうか。

評価制度の一例「高年齢者格付け制度」

高齢者の定年後雇用に向けた評価制度を作るには「業務」と「評価」の2つの切り口がポイントとなります。厚生労働省は「高年齢者人材活用戦略にもとづく賃金制度設計の方法」と題して、高齢者雇用のためのガイドラインを打ち出しています。その内容は「高齢者格付け制度」によって業務をいくつかのグループに分け、それぞれ評価するというものです。

具体的には、まず働いている社員を対象に、社内にどのような仕事があるのかを棚卸しします。そしてそれぞれの業務を、①管理職、②指導職、③基幹業務、④補助業務、の4つのコースに分けます。次いで、高年齢者がどのコースに当てはまるのかを明示することによって、自分の役割を明確に認識してもらいます。このコースはそれぞれに評価基準を設けますが、内容においても「代替性」「革新性」「専門性」などの項目を設け、各自定量的に評価します。

なお、高齢者格付け制度は正社員の人事評価制度との整合性も確認しておく必要があります。管理職とパートなど、釣り合いが取れにくい組み合わせになっていないかなど、お互いに納得のいく制度となることも図らねばなりません。

モチベーションを上げて会社に貢献してもらうために

高齢者の人事制度の設計を行う際には、賃金はもちろんのこと、昇給や賞与、雇用の継続などについても考えておく必要があります。また評価の際には、スキルの活用やノウハウ、社内外の人脈など定量化しにくいものも加味しなければなりません。

今まで会社に貢献してきた人のノウハウや社内外の人脈など、再雇用は人材の宝庫といってよいでしょう。彼らが役割を認識し、やりがいを持って働くことを後押しすれば、企業の業績を上げていくことができるはずです。

高齢者の再雇用に向け、しっかりとした人事制度を

少子高齢化が進む中、高年齢者雇用は必須となるでしょう。定年前の正社員とは違った人事制度が必要となります。一例として、仕事を棚卸ししていくつかのコースにグルーピングする「格付け制度」が挙げられます。また昇給の制度やキャリア相談窓口を整備することも必要です。しっかりとした人事制度のもと、定年後の高年齢社員の力を最大限活用すれば、企業の経営に大きく貢献してくれるでしょう。(提供:みらい経営者 ONLINE


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