前日については、米共和党のライアン下院議長が「トランプ大統領は米上院が可決したつなぎ予算案に署名しない」と明らかにしたことで、米政府機関閉鎖の可能性が現実味を帯びてきたこともあり、ドルが大きく売られる動きとなりました。ドル円については、一時111円のラインを下抜け、9月7日以来の110.815円という水準まで下落しました。また、NYダウについても、リスク回避の動きが強まる結果となり、680ドル近く急落したことも、ドル円を筆頭としたクロス円の下落をサポートしたものと考えられます。
これまで順調であった米国の経済指標に陰りが見えてきたことが意識されていますが、前日発表された米・12月フィラデルフィア連銀製造業景気指数は市場予想15.0に対して9.4という結果となり、特に景況感の数字の悪化が見てとれます。一時的に楽観視されていた米中貿易協議についても、中国は「中国製造2025」の政策を今後も続ける方針であることがわかり、ファーウェイ幹部逮捕を巡る対立が続く中、米中貿易協議においても、ドル売りの材料が出てくる可能性は意識しておきたいとことです。
英中銀(BOE)政策金利発表については、市場の予想通り0.75%の据え置きを全会一致で決定しました。議事要旨では英国の経済見通しがEU離脱に関する状況に大きく依存するとしたうえで、将来的な金融政策はブレグジット次第で上下いずれの方向にも向かう可能性があると指摘しています。英国政府はハード・ブレグジットによる混乱に備えて国民や企業を対象とした準備書をまとめていましたが、この準備書から「(ハード・ブレグジットの)可能性は低い」という文言が削除されました。英国議会は1月9日より審議を再開しますが、年明けに向けて、不安定な状況に変化は見られそうもありません。
今後の見通し
本日21日が期限であった米暫定予算に関しては、米上院が連邦政府機関の閉鎖を避けるために、2019年2月8日までのつなぎ予算を可決して下院に送付したものの、トランプ大統領はメキシコ国境の壁建設費用50億ドルが含まれていないとして拒否権発動を警告しています。このまま連邦政府機関の閉鎖という流れになってくると、徐々に流動性が低下する年末に向かい、リスク回避の動きが強まる可能性がありそうです。
トランプ大統領が発表したシリアからの米軍撤収に強く反対していたマティス米国防長官が、辞任表明しました。また、米司法省が、政府機関や企業から知的財産や秘密情報を盗んだとして、中国国家安全省と関係があるとされる中国人2名を起訴との報道も流れており、ここにきて市場の不安定さが見え隠れしています。VIX指数(恐怖指数)においても、2月以来一時30台まで上昇していることもあり、マーケットはリスク回避の動きに傾斜しているように感じます。
本日の日経平均株価についても、上値の重い状況が継続しており、前場では踏みとどまったものの、20,000円割れが目前になっています。このラインを下抜けるようだと、下落方向へバイアスかかかりそうなため、日経平均株価だけでなく欧州株、米株への影響も大きいものへと発展しそうです。
ユーロドル、FOMC前の1.14ドル半ばをターゲットに戻り売り
ギリギリのところではありますが、ストップロスは回避できました。想定外のドル売り材料がユーロドルショートの戦略を厳しいものにしていますが、1.1440ドルショートは引き続き継続いたします。利食い目途は1.1320ドル、前日の動きを鑑み、1.1500ドル上抜けを損切りラインとします。
海外時間からの流れ
トランプ大統領がつなぎ予算案に署名しないとの報道は、あらゆる角度から見ても想定外の行動であり、市場はネガティブサプライズとして捉えたと考えられます。これから年末にかけて、流動性の低下が懸念されており、トランプ大統領の思いがけないTweetなどでマーケットが大きく変動するリスクは想定しておいた方がいいかもしれません。
今日の予定
本日の経済指標としては、英・第3四半期GDP(確報値)、米・第3四半期GDP(確報値)、米・11月耐久財受注(速報値)、米・12月ミシガン大学消費者信頼感指数(確報値)などの経済指標が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。