機器とユーザーを結ぶ「インターフェース」の新潮流として、音声認識への注目度が一段と高まりそうだ。民生分野で普及し始めている米アマゾンの「アマゾンエコー」などのAI(人工知能)スピーカーに続き、今後は自動運転へ向けたADAS(先進運転支援システム)とセットで自動車への搭載が加速しそうだ。関連銘柄を押さえておきたい。
2011年に米アップルのスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」に音声アシスタント機能「シリ」が初めて搭載されて以降、数々の製品に音声認識技術が採用されてきた。中でも大きな話題を集めたのが、人の声に自動で応答し、インターネットに接続するAIスピーカーだ。
14年に米国でアマゾンの開発した音声アシスタント「アレクサ」を搭載したアマゾンエコーが発売されると、その後グーグルが「グーグルホーム」で続いた。日本ではLINE(3938)が昨年に新製品を市場に投入した。 AIスピーカーのようにお茶の間で活躍する音声認識は、移動中の空間にも進出し始めた。
メルセデス・ベンツの「Aクラス」の新モデルの情報システムには、音声認識技術が備わっている。声で車載機器を操作できるだけではなく、「暑い」といえば空調が温度を調節するようにユーザーの言葉の意図を理解する。こうした機能は、自動運転時代のスタンダードとなりそうだ。
トヨタ自動車(7203)もLINEと組み、運転中に声でスマホを操る機器の開発に乗り出した。関連企業の商機は増えそうだ。緊急時以外はAIが運転するレベル3の自動運転車の販売台数は、30年には世界で1800万台に達すると予想されている。
注目銘柄の一つがCRI・ミドルウェア(=CRIMW、3698・M)だ。同社は国内外の自動車メーカー向けに、車載音源用システムを開発した。ドライバーに自動車の状況に合わせて自動で警告音などを出すと同時に、音声ガイダンスなどを適切な音量に調節し、ノイズを取り除くといった機能を持つ。今後3年間で年間10万~100万台での採用を目標としている。本格的な自動運転の到来とともに、同社の技術は存在感を増しそうだ。株価は14日には昨年3月以来の水準まで買われ、強調展開を続ける。
また、音声認識では、人の発する言葉を正確に把握する機能が欠かせない。言葉の聞き違えは事故につながるため、開発に神経をとがらす領域だ。テクノマセマティカル(3787・(2))はそれを支えるノイズ軽減ソフトをルネサスエレクトロニクス(6723)に供給する。
現状では民生機器や産業機器に使われているが、ルネサスは自動運転向けシステムで攻勢を掛けている。テクノマセは音質を維持して高速で処理する技術にもたける。
日清紡ホールディングス(3105)は、運転手が発した声だけを抽出して雑音を除去する音声認識技術を展開。ドライバーや同乗者の表情と声の調子から感情を分析するシステムを手掛けるCACHoldings(4725)は、自然言語の解析でも実績を持ち、音声認識技術にも応用が見込まれる。
このほか、アドバンスト・メディア(=AMI、3773・M)、フュートレック(2468・(2))、アプリックス(=APLIX、3727・M)もマークしたい。(12月20日株式新聞掲載記事)
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