◉不動産市場の上昇要因①〜アベノミクスへの期待〜


ZUU-ONLINEでも度々ご紹介していますが、今世間の注目を非常に集めているアベノミクスは、俗に言う「3本の矢」によって成り立っています。

  • 金融緩和を押し進め、円安やデフレ脱却、資産価格の向上を狙う「第1の矢」
  • 震災復興や老朽化したインフラの刷新等の公共投資、また企業向けに研究開発や設備投資を促す財政政策である「第2の矢」
  • そして、未だにその全貌が掴めない事から、期待と不安の両方で見守られている「第3の矢」成長戦略

参考: アベノミクスは本当に日本を変えるのか?〜希望とその副作用〜

そして、現在の不動産市場の上昇には、主に「第1の矢」である金融政策への期待が影響しています。

アベノミクスでは「2%のインフレ目標」の達成と、その為の日銀によるJ-REIT買い入れ枠の拡大など様々な金融緩和策を掲げており、直接・間接的な不動産市場の上昇要因となる事が期待されています。


◉不動産市場の上昇要因②〜オフィスビル空室率改善の動き〜


また、金融緩和等の外部要因以外に、不動産の実需を押し上げる動きも目立ってきました。
特に注目に値するのは、グレードA以上(最高級)の都内主要5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)のオフィスビルの空室率です。2012年は中頃までは上がり続け、2012年中頃には10%を超えていた時期もありますが、2012年末には9%以下になるなど、改善の兆しを見せ始めているのです。

参考:CBRE in Japan

2008年秋のリーマンショック後、日本の不動産市場は大氷河期に突入しました。
事実、昨年の中頃まで、都内オフィスの上記の空室率をはじめ、不動産への需要を示す指標や、その市場環境は散々たるものでした。また、このような不動産市場のアベノミクス以前の落ち込みの要因として、景気環境の悪化に加えて、オフィスビルの供給過剰もあったと言われています。

2000年に入ってからリーマンショック以前までは、戦後最長の好景気と呼ばれた時期です。2006年、2007年の都内オフィスの空室率も2%を切っていました。そして、その様な好況感に支えられ、国内外の不動産プレイヤーは1000億円単位で東京都内の土地を購入し、当時の不動産バブル拡大の一因となります。例えば、2007年に東京建物がJR中野駅前の警察学校跡地3.5万平方メートルを1437億円で取得しました。また、同じく2007年に三菱不動産が東新宿の日本テレビゴルフガーデン跡地2.6万平方メートルを2300億円で取得しています。
購入された不動産はオフィスビル等として開発されたため、2011年から2012年にかけて大量の(需要を上回る)オフィスビルが供給される、「オフィス2012年問題」が発生し、空室率を押し上げる事となりました。

しかし現在、東日本大震災による、防災や事業継続生を意識したオフィスの移転ニーズが、凍り付いた市場を溶かしつつあります。これまでのオフィスは「オフィスは賃料が安いほど良い」という風潮から、防災対策を含め高スペックな設備を備える新築ビルへの需要が一気に高まっているのです。

また、2012年は先述の供給過剰もあり、新たに竣工したビルはテナント集めに苦労する例が多かったのですが、2013年3月完成の御茶ノ水ソラシティやワテラスタワーは満室稼働に近く、好スタートを切っています。
オフィスビルの相次ぐ供給は、2013年の春をもって一段落しており、今後は更なる需給環境の改善が期待されています。