日本では、20歳になった月から年金制度に加入する義務があります。会社員は厚生年金としてお給料から差し引かれているため、年金についてあまり意識したことがないという人も多いでしょう。しかし、退職すると国民年金保険料を自分で払っていかなければなりません。この国民年金は一体どのような仕組みで、将来どのくらいの金額がもらえるのでしょうか。ここでは、将来のために必ず押さえておくべき国民年金の基本と、もらえるお金を増やす方法をご紹介します。

国民年金とは

国民年金
(画像=PIXTA)

現在の日本の年金制度では、20歳以上60歳未満の人全員が年金制度に加入することとなっている。対象となる全ての国民が年金に加入するが、自営業者、会社員・公務員、専業主婦等、対象者によって加入する年金制度は異なっている。

対象者毎に異なる年金制度ではあるが、全ての人に共通しているのは国民年金という制度だ。国民年金は全ての年金の土台になる制度であり、基礎年金とも呼ばれる。主に自営業者が加入しているというイメージを持たれる方も多いが、実際には自営業者だけでなく、会社員・公務員、専業主婦等も含め20歳以上60歳未満の全員が加入対象者であり、文字通り基礎年金として日本の年金制度の土台となっている。

国民年金の保険料は?

国民年金の保険料額は定額で、年度ごとに改定される。厚生年金とは異なり、被保険者が受け取っている報酬の高低によらず保険料額は一律に同じで、2018年度は月額1万6340円である。

給料差し引きではない分、未納者も多い

厚生年金加入者は、保険料はいや応なしにお給料から差し引かれます。一方、自営業者やフリーランスの方など、国民年金のみの加入者は、自分の意志で支払う必要があります。厚生労働省のデータによると、国民年金保険料の納付率は2015年度が72.9%、2016年度が70.7%、2017年4月~2018年1月が64.7%と年々下がっているのがわかります。

3割ほどの未払いの人たちが考えるように、本当に私たちは「公的年金を払ってもムダ」なのでしょうか?

未納のままだと大変なことに……

国民年金を払っていない人がいるなら、自分も払わなくてもいいかと考える人もいるかもしれません。しかしながら、特に2014年以降、日本年金機構では強制徴収の取り組みを強化しています。家に届く催告状や督促状を放置していると、延滞金がかかるほか、最終的に財産を差し押さえられる可能性もあります。

2017年4月から2018年3月まで日本年金機構が送付した督促状は6万6,270件で、それでも納付しなかった人のうち、1万4,344件の財産が差し押さえられています。この取り組みは今後も強化されていくでしょうし、差し押さえは本人だけでなく、滞納者の世帯主や配偶者も対象になります。

支払いできないときは必ず免除申請を

国民年金の第1号被保険者は、毎月の保険料を納める必要があります。所得が少ないなどの事情で、保険料の納付が難しい場合、所得の基準を確認して「国民年金保険料免除・納付猶予制度」の手続きをしましょう。

免除や納付猶予が承認されると、その期間の保険料は10年以内であれば後から納めることができます。これを追納といいます。追納することで、老齢基礎年金の受給額を増やして、満額に近づけることができます。

国民年金の免除は、法定免除、申請免除、特例免除の3種類があります。

法定免除:障害基礎年金を受給している方、生活保護を受けている方が対象で全額が免除
申請免除:経済的な理由で納付が難しい人が対象となり、前年度の所得で審査される
特例免除:配偶者からの暴力(DV)を受けている方、災害を受けた方、失業した方などが対象

年金を免除してもらった場合、受給できる年金額はどのようになるのでしょうか?国民年金の保険料支払いが免除になる手続きをすると、「将来年金が受け取れないのでは」と心配になる人も多いと思いますが、免除期間でも国庫の負担割合は2分の1で計算されます。

ですから、保険料免除の申請をして全額が免除になっても、半額は年金を受け取ることができるのです。ただし、2009年3月までの免除期間は国庫負担が3分の1だったため、年金額も3分の1として計算されます。

学生には特例制度も

国民年金の加入は20歳からのため、学生もその年齢に達したら被保険者として入らなくてはならない。ただ「学生納付特例制度」を利用すれば、在学中の保険料納付が猶予される。本人の所得が一定額以下で、夜間や通信を含め大学や短大など学校に通う学生なら基本的に適用される。この時家族の所得額については問われない。

国民年金保険料を支払っているともらえる「3つのお金」

「国民年金の保険料を払うくらいなら貯蓄した方が良い」と考える人もいます。世代間扶養ではなく、自分自身のために個人的に貯めることも大事ですが、貯蓄は崩し始めたら、いつか使い果たしてしまいます。

その点、国民年金保険料を支払っていれば、支払った分以上にお金がもらえる可能性があります。

死ぬまでもらえる「老齢年金」

国民年金の保険料を払って、一生もらえる老後の収入を作っていると考えたら、たとえ金額は多くなくても、一生涯の生活の支えになるのは確かでしょう。そのうえで、自助努力の上乗せとして貯蓄などを考えていきましょう。

障害を負ったときに頼りになる「障害年金」

公的年金の受け取るタイミングは、実は老後の年金をもらうときだけではありません。一般的にあまり知られていないのですが、若くして一定の障害状態となったときには障害年金がもらえます。

一家の大黒柱を失ったときのための「遺族年金」

例えば、小さな子供を残して一家の大黒柱が亡くなったとき、残された家族は遺族年金を受け取れます。

逆に言うと、国民年金などを払っていない人は、これらの年金を受け取る資格がありません。もし障害を負ったり、若くして亡くなったりしても年金は支給されず、その後の生活費などで苦しくなる可能性が高いでしょう。

老齢年金の受給要件と受給金額

受給要件

従来、老齢基礎年金を受けるためには、年金加入(保険料納付済)期間が25年以上あることが必要でしたが、平成29年8月1日からは10年以上に短縮されました。   この受給資格期間は、以下の期間を合計して計算します。

・国民年金保険料納付済期間(厚生年金・共済組合の加入期間含む)や免除された期間
・サラリーマンの期間(厚生年金や共済組合などの加入期間)
・第3号被保険者期間
・学生納付特例期間
・納付猶予期間
・合算対象期間(カラ期間)

「カラ期間」とは、国民年金に任意加入できる人が加入しなかった期間で、昭和 61年3月以前にサラリーマンの配偶者だった期間などです。受給資格期間には算入されますが、年金額には反映されません。

受給額

老齢基礎年金は、保険料納付済期間が40年の場合には、満額の年77万9300円(月額6万4941円=平成30年度=前年度と同額)が支給されます。

しかし、国民年金が誕生したのは昭和36年4月1日で、60歳まで加入しても40年にならない場合があります。そこで生年月日により、加入可能年数の短縮措置がとられています。

保険料納付済期間が10年~40年未満の場合には、保険料納付済期間を加入可能年数で除して、それに77万9300円をかけて年金額を計算します。

国民年金加入者がもらえる年金を増やす7つの方法

国民年金は将来満額もらえたとしても年額約78万円、月にして約6万5000円です。また、少子高齢化が進んだり、今後の社会情勢によっては将来さらなる減額も考えられます。自分の収入がなくなったときを想像すると、どうにも心もとない気がしますよね……。

でも、ご安心ください。実は、国民年金の支給額を増やすためできることは色々とあるのです。

60歳以降も任意加入制度で保険料を支払う

リタイア年齢が近づいてきたときに年金の試算をし、受給額の少なさにびっくりすることも珍しくありません。ただ、今からでも年金を増やす方法はあります。

国民年金の「任意加入制度」では、本来60歳までの年金支払い年齢を延長することができます。老齢基礎年金を満額で受け取るには、40年の加入期間が必要です。40年未満の場合、60歳以降も国民年金保険料を支払うことで、受給額を満額に近づけることが可能です。

受給開始の時期を遅らせて受給額を増やす

さらに、年金の「繰り下げ受給」という方法もあります。65歳から受給できる年金を最長70歳まで先延ばしにすることで、受け取り開始以降の年金額を増やすことができます。

1ヵ月繰り下げるごとに受給金額が0.7%ずつ増加し、70歳まで繰り下げると、65歳で受け取るはずだった金額の142%が支給されます。

60代のまだ元気なうちは働いて、年金に頼るのを少し先延ばしにした方が、充実した老後の生活が送れるのではないでしょうか。

付加保険料を納付する

「付加年金」は、月額400円の付加保険料を、国民年金保険料にプラスして支払うことができる制度です。将来の年金に「200円×付加保険料納付月数」が年額にプラスされます。受給開始2年で元が取れる計算です。

iDeCo(個人型確定拠出年金)への加入

最近よく聞く「iDeCo(個人型確定拠出年金)」も年金制度の一つです。加入できる対象が拡大し、今は多くの方が加入できるようになりました。

掛金の運用先を自身で選べることが最大の特徴で、掛金は全額所得控除できます。会社員の年金を増やす+節税の手段としては、大きな効果が期待できるでしょう。付加年金・国民年金基金との併用の際は、すべてを合わせた金額が掛金の上限となります。

国民年金基金への加入

「国民年金基金」では、毎月支払う金額(掛金)や受け取り方が選択できます。また、掛金は全額所得控除の対象ですので、節税対策としても有効です。

小規模企業共済への加入

「小規模企業共済」は、主に中小企業の経営者が利用できます。毎月1,000円から自由に掛金が設定でき、こちらも全額所得控除の対象です。国民年金基金と違う点として、死亡・老齢給付・廃業など受け取り事由によって金額が変わること、掛金の範囲内で低金利の貸し付けが利用できることが挙げられます。

個人年金保険への加入

個人年金保険とは、民間の保険会社が販売している私的年金の一つです。契約時に定めた年齢まで保険料を支払い続けると、所定の年齢を過ぎたら一定期間あるいは一生涯、年金を受け取ることができます。

個人年金保険に加入していると、ちょっとした節税効果もあります。「保険料を払い込んだ人は税金の負担を軽くしてあげましょう」という制度があり、これは「個人年金保険料控除」と呼ばれます。

国民年金に関するお役立ちコラム

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国民年金を理解して将来に役立てよう

現役世代の人の中には、年金を受け取るのは遠い未来のことだし、もらえるかもわからないものに払っても意味がないと感じる人もいるかもしれません。

ただ、日本の公的年金は、現役世代がみんなの老後を支えることを大前提とした「国民皆年金」(こくみんかいねんきん)という国の制度です。一般の会社と比べても、倒産のリスクなどが極めて低いこと、若いときに障害を負う、亡くなるリスクにも対応していることを考えれば、全員きちんと支払っておくべきシステムだといえます。

どうしても期限までに納付ができない場合は、保険料免除制度や納付猶予制度を利用しておけば、年金の受給資格期間にカウントされます。いざという時でも条件を満たせば、障害年金や遺族年金を受け取ることができるのです。さらに、免除された期間も、あとから支払えば年金額を増やすこともできます。

まずは、公的年金で自分の老後資金の基盤を作ったうえで、確定拠出年金の積み立てなどで自助努力をしていきましょう。

文・fuelle編集部/fuelle

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