バブルとバブル崩壊の繰り返しで株価は大きく動く
もう1つ、近年の株式マーケットで注意しなければならないのが、金融政策の株価への影響です。
思えば2008年のリーマンショックも、ITバブル崩壊後の金融緩和で2005~2006年ごろにかけ株価が大きく上昇した後の金融引き締めが原因でした。
現在は、リーマン・ショック後の世界的な金融緩和で株価が大きく上昇したのち、米国が利上げを行い、金融引き締めに動いているという状況です。
筆者は、金融緩和によりバブルが発生して株価上昇→金融引き締めによりバブルが崩壊して株価急落、という流れがこれからも繰り返される可能性が高いとみています。
もともと株価が景気に連動して上下に動くことに加え、極端な金融緩和や金融引き締めにより、株式市場がバブル化したり、それが破裂するという形でさらに変動を激しくしているのが実態なのです。
株価は業績に先んじて動く
また、現在は多くの銘柄が高値から株価が大きく値下がりをした状態にあります。これも非常に注意すべき状況です。
株価が上昇から下落に転じるときに、プロ投資家やアナリストも含め、大部分の投資家が陥ってしまう罠が、「業績が良いのに株価が下がって割安になっている」と勘違いしてしまうことです。
株価が天井をつけて下落に転じると、業績は良いのに株価が下がっている、という現象がしばしば起こります。これにより、株価の割安度を計る指標の1つであるPER(株価収益率)が大きく低下し、「非常に割安」な状態にみえます。
でも、一般的に株価は業績に先んじて動きます。株価下落が「業績の悪化を株価が先んじて織り込んでいる」ならばどうでしょうか? ゆくゆくは実際に業績の悪化が明らかになり、株価はさらに大きく値下がりしていくでしょう。
負けないためには株価の波に逆らわないことが最も重要
現状の日本株をみると、業績は良いのにPERが極めて低い銘柄が数多く生じています。
でもそれらの銘柄は株価が値下がりを続けているのです。今までの歴史をみても、この「好業績なのに株価が値下がりして割安に見える」という罠に引っかかって大きく負けてしまう投資家が絶えませんでした。
では、この罠に引っかからないためにはどうすればよいのでしょうか? 株価の波に逆らわないようにしていれば大丈夫だと筆者は考えていますし、筆者自身もそれを実践しています。
つまり、業績がどんなによかろうが、株価が値下がりを続けて下降トレンドになっているならばその株は保有しないし新規に買うこともしない、ということです。
罠にはまってしまうのは、「業績」の方に注目しているからです。そうではなく、「株価の動き」に注目していればよいのです。
2018年は、業績が良いからと値下がりを続ける株を持ち続けた結果、大きな損失を抱えてしまった個人投資家が続出しました。
2019年も引き続き難しい相場環境が続くと思われます。もし、2018年にバイ・アンドホールドにより損失が膨らんでしまった、という方は、二度と同じ轍を踏まないようにしてください。
アベノミクス相場が始まってからの上昇相場しか経験したことのない方も多いと思いますが、本当の下落相場になれば、2018年より激しく値下がりします。それに巻き込まれないためにも、株価が値下がりしている間は安易に手を出さない、このルールだけはぜひ守ってください。そして荒波を小さい傷で乗り切りましょう。
足立 武志(あだち たけし)
足立公認会計士事務所代表 公認会計士・税理士・ファイナンシャルプランナー
個人投資家の「困った!」を解決する公認会計士。一橋大学商学部経営学科卒業。資産運用に精通した公認会計士として個人投資家向けに有用かつ実践的な知識・情報をコラム、セミナー、書籍、ブログ等で提供。株式会社マーケットチェッカー取締役として株式投資スクリーニングソフト「マーケットチェッカー2」の開発にも関わる個人投資家でもある。
(提供=トウシル)
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