鳥居万友美さんが教える「トレードに必要なマインドセット」

シャドー・トレード
市場では、裏で蠢く様々な思惑が人を陥れることもある(画像=taa22/fotolia)

「ミセス・ワタナベはいいカモだ」――外為市場でも一定の存在感を有する日本の個人投資家のことを俗に「ミセス・ワタナベ」と呼びます。

ですが、その投資手法は決して褒められたものではないことが多く、しばしば揶揄の対象になるほか、「ミセス・ワタナベ狩り」と言われる機関投資家の動きによって資金を吸い上げられることもあります。今年(2018年)を例にとると、以下のようなニュースが話題になりました。

ミセス・ワタナベ狩りか トルコリラで投機筋と攻防
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30974140V20C18A5000000/?df=2

トルコリラ「魔の24時間」 ミセス・ワタナベ傷深く
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34278370X10C18A8000000/

こうした痛手を負うのは主に「(ロスカット・ストップロスなど)適切な手じまいができない」「自分が用意できる種銭と比して、高すぎるレバレッジをかけている」「根拠なく逆張りするなど、勘や思惑だけでトレードする」といった行動に原因があるからです。そして、こうしたニュースによって「FXは大きく損をする」というイメージが付きまとうようになりました。

ただ、「投資」は技能があれば年齢に関係なく稼げる手段でもあります。『FXチャート「シャドー・トレード」練習帳』(以下、同書)の著者・鳥居万友美さんはこう説いています。

時間をかけて身につけた“80歳になっても続けられるFXのスキル”は、誰にも奪われることのない私の財産です。年金がどうなろうと、もはや関係ありません! 人生100年時代といわれるいま、私がオススメしたいのは、「自分で自分を雇用する」生き方。

(中略)

ギャンブルのように一攫千金を狙うFXではなく、きちんと基礎を学び、時間をかけて積み上げていくFX。職人が技術やスキルを身につけるようなイメージです。そう。FXは「手に職」なのです。

(同書「はじめに」より)

鳥居さんは同書のなかで「シャドー・トレード」と称する「実際に相場に向かう前に行うべき対応力トレーニング」と、相場で必要な考え方・マインドセットの組み立て方を解説しています。ここでは、マインド部分を解説している章の内容から、3点をpickupしてご紹介します。

ポジションをとる前に冷静であることが成功のカギ

FXのトレードで利益を出そうと思った場合、まず売りもしくは買いのポジションを持つことから始まります。デモトレードにしても、リアルトレードにしても、初めてポジションをとるときには、未知の世界に飛び出すわけです。

誰でも、「もしかしたら自分はお金持ちになれるのではないか」という期待感を抱きつつも、一方で不安を感じるでしょうし、緊張にもさらされます。そして、この不安感や緊張感がしばしばトレードにおける判断の誤りにつながります。

不安感や緊張感はまさにメンタルの世界です。これはFXに限った話ではありませんが、とりわけ判断しなければならない状況が、比較的短時間のうちに繰り返されるような投資を行なう場合は、自分自身のメンタルをうまくコントロールできなければ、判断を誤ってしまいます。

ですから、ここでいかに落ち着いていられるかが、トレードに成功するかどうかの重要なカギを握ります。最初に感じる緊張感や不安感は、「必ず誰もが通過するポイントだ」ということを忘れずに。まずは、こうした緊張感や不安感を少しでも軽くするためにはどうすればいいのかを、考えてみましょう。

負けが続いたときにどうするか?

トレードを始めたばかりのころは、欲よりも慎重さや謙虚な気持ちが勝った状態で、相場に参加します。その結果、勝てるケースもあります。無意識にですが、勝つために必要な「慎重さ」や「謙虚さ」を持って相場に臨んでいるため、それらに助けられて勝てているわけです。

しかし、それがまるで自分の実力であるかのように誤解してしまいます。「自分はトレーダーに向いている」「もうトレードのことはだいたい理解できた」などと、大きな勘違いをしてしまうのも、大抵この時期です。そして、相場を甘くみた状態のまま、欲望という感情にのみこまれ、「勝てるのが当たり前」「お金を手にできるのは当たり前」と錯覚し、どんどんトレードにのめり込んでいきます。

しかし、技術も手法も経験も未熟なうえに、最も大切な「慎重さ」と「謙虚さ」を失っているわけですから、徐々に勝てなくなります。9割の人はそうなるといってもいいでしょう。

しかも謙虚さを失っているわけですから、負けた後、「そんなはずはない」「何かの間違いだ。相場が悪い」などと自己正当化し、失敗したトレードで被った損失を埋めようとして、戦略も計画も、そして勝算もないまま、エントリーを繰り返します。焦りに自信喪失が加わり、やがて怒りにも似た感情でトレードを繰り返すわけですから、勝てるはずがありません。どんどん負けが積み上がっていきます。

本来、ここで真っ先にしなければならないのは、いったん、相場から離れて、冷静さを取り戻すことです。そして平常心を取り戻したら、なぜ負けたのかを考えましょう。自分のトレードを客観的に見直してみるのです。

負けを見直す行為は、決して気持ちのいいものではありません。自分の負けを認めることだからです。本来なら「見なかったことにしよう……」と思いたくなるところです。しかし、「負けの見直し」を行なわない限り、何も改善できないのです。

負けが続いたからといって、トレード人生が終わりになるわけではありません。大きく資金を減らす大惨事になる前に、勇気をもって負けの見直しを行なってください。ここで勇気ある行動がとれれば、すぐに軌道修正できます。

負けたときの負の感情を自分のなかだけで処理できないときはどうするか?

勝てると思ったトレードで負けてしまった。「自分の判断が間違っていた」という事実を認めなければならないし、そのうえ大切な資金までも減らしてしまった……。

こうなると精神的にも金銭的にもダメージを受けてしまいます。この“負けた”という結果を冷静に受け止め、理由を分析し、負の気持ちを自分のなかで上手に処理できればいちばんいいのですが、それができないと、時にはまったく関係のない人や物にあたったりしてしまいます。

こうした八つ当たりをしてしまった経験は、誰でも多少はあるのではないでしょうか?自分で処理できない、手に余ってしまった負の感情、イライラした気持ちを他の人や物に対してぶつけ、モヤモヤした気持ちを一時的にでも発散しようとするわけです。

しかし、八つ当たりをした後に「スッキリして、気持ちよかった」と感じるでしょうか。むしろ自己嫌悪に陥るはずです。そもそも、誰に対して八つ当たりをするのでしょうか。

八つ当たりされる気の毒な相手は、ほとんどの場合、自分よりも弱い立場の者になります。しかも、冷静になってよくよく考えてみると「自分がいつも八つ当たりをしてしまう相手は、実は自分がいちばん大事にしている人」だったりします。

そうならないためには、負の感情やイライラした気持ちが大きくなってしまったら、少しでも冷静になれるような行動をとることです。そのために役立つのはトレードの記録(投資ノート)です。失敗したトレードを見直し、反省するのに役立つのはもちろんですが、そのときどきの自分の心の状態を把握したり、負の感情をはきだしたりするためにも、投資ノートを付けることをオススメします。

何より「書く」という作業は、自分を客観的に見る手助けになります。またそれを淡々と行なうことによって、負の感情が徐々に収まり、対処法や次のトレードに向けてのヒントが、パッとひらめいたりすることもあります。

以上、いくつかのポイントから3つを紹介しました。FXでも株でも、トレードで勝つには相応の知識が必要となりますが、マインドのブレかた次第では知識が裏目にでることさえあります。これから相場の世界に足を踏み入れる人も、すでに踏み入れている人も、同書をきっかけに自分のマインドセットについて改めて考えてみるといいかもしれません。

(提供:日本実業出版社)

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