(本記事は、斎藤智明氏の著書『絶対に知られたくない! 不動産屋の儲けの出し方』ぱる出版、2019年1月11日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

「結局、不動産投資に失敗した」人たちの事情

絶対に知られたくない! 不動産屋の儲けの出し方
(画像=Panumas Yanuthai/Shutterstock.com)

●マイナス金利で投資ブーム再来、その裏に失敗投資家の大きな負債

金融機関(銀行等)は不動産投資において、融資を希望する人の「属性」(社会的地位)、「年収」、「購入しようとしている物件の担保価値」を評価してお金を貸します。

融資が通りやすい属性ヒエラルキーは公務員を筆頭に大手民間企業・中小民間企業のサラリーマンと借りにくくなっていき、収入の安定しない自営業の方は融資を受けるのは難しいです。

これは金融機関が融資をする際にその人の返済能力の有無と万が一にも返済が滞ったときのその後のリスクを考えての順位です。

昨今の低金利によりバブル期以来の不動産投資ブームが起こり、収入の安定したサラリーマンが不動産投資をするいわゆる「サラリーマン投資家」が一気に増えました。

それと同時に非常に多くなった相談は「サラリーマン大家さんたちの不動産投資の失敗」に関するものです。

そうしたサラリーマン投資家の方がよく使うフレーズがあります。

それは「金融機関が融資してくれたから大丈夫だと思って買ったのに、騙された」という言葉です。

先ほど申し上げたように、金融機関は融資をする際に、リスクを考えて返済能力と購入しようとしている物件の担保価値を評価したうえで融資の判断をしています。

ゆえに融資を承認された方は自分が購入しようとしている物件には価値があると「金融機関からお墨付き」をもらったのも同然と考える傾向が強いのです。

しかし、残念なことに金融機関の不動産評価の仕方は決まった計算式に当てはめているだけのことがほとんどで、数年後にいざ売ろうとしても金融機関の評価とは全く異なる価格でしか売れないケースが多いのです。

その結果、「金融機関が大丈夫と言ったから買ったのに、こんなことになるなんて信じられない、私は騙された」と言う投資家たちが出てくるわけです。

なぜこのような投資ブームが起こるほど、金融機関は融資をし続けたのでしょうか。

その原因は現在のマイナス金利政策にあります。

この政策を受け、各金融機関は日銀にお金を預けておくと利子がつくどころか、利子を払わなくてはならなくなる状況にあります。

そうすると「企業や個人の投資家にどんどん貸し出して利益を得たほうがいいに決まっている!投資に回していこう」という動きになり、金融機関は融資先を躍起になって探したのです。

しかし「担保のないもの」に融資するのは危険と考え、「担保の取れる」不動産投資をしている大家さんへの融資が促進されていったのです。

「不動産の評価」と「購入者の属性」が高ければ、あまり調査せずに融資をしているのが実態でした。また、金融機関でも営業マンの貸付ノルマがあり、ノルマ達成のために無理やり貸し付けているところもあったため、いざ売ろうとするとかなり減額しないと売れない物件であったり、融資が下りたと喜んで複数棟を購入してしまった投資家が、結果的に首が回らなくなるなどの問題が発生したのです。

またこのとき、金融機関は「とにかく融資先を探さなければ」と、お金を貸したいがためにだいぶハードルを低くしてローンを無理やり組んででも次々と融資してしまう傾向にありました。

アパート経営の場合、10部屋あるとしたら通常は7?8割しか部屋が埋まらなくてもローンの返済をしていける計画にするものです。

それを10部屋中1部屋でも空きが出たら即赤字になる、そんな返済ができなくなる可能性のあるローンの組み方にもかかわらず、融資が下りている時期がありました。そのようなことが平然と起こっていたのです。

景気の変動があり、かつ少子高齢化が急激に進んでいる日本において、30年でローンが組めたとしても、30年間安定して空室を防ぐことができるかいうとそれはかなり難しい話です。

残念ながら、そうした物件のいくつかは債務不履行(ローンの返済ができない状態)を起こしてサービサー(債権回収会社)に売却されているもしくは「任意売却」「競売」になっていくのをこれまで数多く見てきています。

本来、金融機関は返せるローンの組み方かどうか見極めなければならないのですが、融資先を増やすことが重視され、無理な計画であるにもかかわらず融資しつづけてしまう状態にありました。

投資家の方々はこうした自身の営業成績だけのために動いた金融機関や不動産屋に「自分は騙された」と言って相談にいらっしゃるのですが、そのようなとき、

「ローンの組み方に無理はないか」
「自分で計画を把握していたか」
「リスクを考慮して考えてみたか」
「無理な提案だと思ったときには疑問を呈したか」

をご自身に問いかけてもらいたいと思うのです。

どんな状況であったとしても「決めてきたのは自分」。それを認識しなければ同じことを繰り返してしまうことになりかねません。

この提案や計画はおかしいなと、「その時点」で気が付くには、人任せにせず自ら関わって、勉強することが重要です。さらには相談できる不動産屋がそばにいてくれたら心強いものです。

それでも起こってしまった事態については、「ここからできることを始めていきましょう」そうお客様にお話しし、できることをひとつずつこなしていくことのできる不動産屋を見つけていただきたいと思います。

絶対に知られたくない! 不動産屋の儲けの出し方
斎藤智明(さいとう・ともあき)
実父の不動産に関する相続・投資での失敗を目の当たりにした際、自分が何もできなかったことを機に、不動産のことで困っている人のための「駆け込み寺」になりたいと思い不動産業に従事する。宅建試験の講師も勤めている。著書に『誰も教えてくれない「不動産屋」の始め方・儲け方』『不動産屋が儲かる本当の理由としくみ』(弊社刊 著者名:齋藤孝雄)、『サザエさんの「花沢不動産」はなぜ潰れないのか?』(宝島社)などがある。

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