欧州のディーゼル車の台数減少でも、プラチナ触媒消費が減らない理由
欧州のディーゼル車の台数が減少しても、欧州のプラチナの排ガス浄化装置向け消費は減少していません。想像の域を超えませんが、筆者は次の理由からだと考えています。
1台あたりの量
環境規制の厳格化への対応のため、1台あたりの排ガス浄化装置に使うプラチナの量が増えた
コスト
現在、プラチナはパラジウムより価格が安く、排ガス浄化装置を製造する際のコスト削減になるため使い続けられている
施設・インフラ
パラジウムを使用した自動車部品製造のためのインフラ整備が追いついていないため、プラチナを使い続けている
在庫消費
過去、積み上げたプラチナの在庫があるため、その在庫を使い続けている
製造地と登録地の問題
プラチナを排ガス浄化装置に用いた自動車が輸出されている
また、プラチナを排ガス浄化装置に用いたガソリン車も多くはないものの、一定量存在するため、必ずしも「ディーゼル車減少=プラチナ消費減少」とは言えない点にも注意が必要だと思います。
図10:プラチナとパラジウムの価格
図11:EUの乗用車輸出台数
プラチナ価格上昇は、中国の宝飾向けが回復することが必要
プラチナ価格が今後、本格的な反発傾向を迎えるには、次の点が大きなカギを握ると考えています。
(1)排ガス触媒向け消費が減少しない
(2)中国の宝飾品向け消費が回復する
VW問題をきっかけとして欧州のディーゼル車台数の減少は起きているものの、それが直接的に欧州のプラチナ消費を、減少させてはいません。現在のプラチナ価格低迷はある意味、市場参加者の「ディーゼル車減少=プラチナ消費減少」という固定観念が影響しているのだと思います。
今後、欧州の排ガス浄化装置向けプラチナ消費の減少がデータに表れた(懸念が実態となった)ときは、プラチナ相場は苦しい状況になるとみられます。
今後も予断を捨て、自動車事情はもちろん、プラチナの排ガス浄化装置向け消費、中国の宝飾品向け消費などのデータを注視していきたいと思います。
吉田 哲(よしだ さとる)
楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。大学卒業後、2000年からコモディティ業界に入る。2007年からコモディティアナリストとして商品の個別銘柄や分析や情報配信を担当し、2014年より現職。ビギナーにも上級者にも役立つ解説がモットー。
(提供=トウシル)
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