電力他社の動き
このような動きは東京電力だけではありません。既に2013年10月には中部電力が新電力であるダイヤモンドパワーを親会社である三菱商事から買収することで、中部電力グループが首都圏で電力供給を行う事業を進めてきました。
しかし今のところ、電力供給は単一事業所向けなど、まだ規模が限られた状態にあります。新電力は、大手電力より5%程度は安く電力を供給しています。また2014年の4月からは、関西電力も子会社を通じて首都圏への電力供給を始めました。このように、電力各社がこれまでの垣根を越えた事業拡大が始まっています。
顧客獲得競争の激化
今回ヤマダ電機がテプコカスタマーサービスから供給を受ける電力は、1万9000キロワットと、大規模工場10箇所分に相当する大口契約です。電力使用量も合計5000万キロワット時で、これは一般家庭に当てはめると1万5000世帯分相当となります。
テプコカスタマーサービスは2014年5月に、新電力(特定規模電気事業者)として経済産業省に届け出を行っています。同社は各地域の電力会社の送電線を使って利用者に電力を供給するために、各地域の民間企業の自家発電設備から余剰電力を安く調達するというビジネスモデルを行っていきます。
既に首都圏以外においては、ヤマダ電機外にも10社近くとの販売契約を結ぶ最終調整に入っている様です。特に首都圏に本社を置きながら、全国展開する企業の地方拠点をターゲットに、料金の安さと事務手続きの効率化を武器に販売契約を伸ばそうとしています。このような動きが、今後大手電力会社の既存のエリアを越えた顧客獲得競争が激化させることは間違いないでしょう。
電力自由化への伏線
これまでも電力の自由化は2000年から進められては来ました。それでも大手電力会社は暗黙のルールにより地域独占を崩さず、相互参入は行わないようにしていました。これは地域外に電源を持っていなかったことも理由にはあるでしょう。
しかし、いよいよ2016年からは政府の電力システム改革によって、一般家庭向けを含めた全面自由化が予定されていることもあり、地域を越えた顧客獲得の動きは活発になりそうです。これまで見てきました通り、既に新電力の契約も伸びています。このことで一般家庭の電力料金も下がるかもしれません。
政府が1月に認定した東京電力の総合特別事業計画(再建計画)によれば、福島第1原子力発電所の事故以降の経営立て直しを急務とする同社は、電力小売りの全国展開を成長の柱としており、首都圏以外での売上高を、3年後の340億円、10年後の1700億円達成を目指しています。