世界屈指の大富豪は、慈善活動に熱心なことでも広く知られている。マイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツ氏は2008年に第一線から身を引いて以来、夫人とともに設立した「ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団」に多額の私財を投じてきた。
世界で最も高名な投資家であるウォーレン・バフェット氏も、ゲイツ夫妻とともに設立した寄付啓蒙活動団体「ギビング・プレッジ」に所有資産の99%を寄付する方針だという。ほかにも、オラクル共同創業者のラリー・エリソン氏や、イーベイ創業者のピエール・オミダイア氏、「スターウォーズ」の生みの親である映画監督のジョージ・ルーカス氏、前ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグ氏、さらにはフェイスブック共同創業者のマーク・ザッカーバーグ氏など、世界的な資産家たちは積極的に多額の寄付を行っている。
しかしながら、彼らを突き動かしているのは、「社会に貢献したい」という思いだけなのだろうか? 純粋にそのことだけを考えている人もいるだろうが、「善行の人物だと世間から賞賛されたい」との名誉欲が介在している可能性もあるかもしれない。
もちろん、それぞれの真意については、本人のみが知るところだ。ただ、客観的に見て、慈善活動を行っている大富豪たちの誰もが得ているメリットも存在している。
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“頂点の富裕層”が慈善財団を設立するのは、税金対策効果が高いからこそ
結論を言えば、節税効果である。その国の税制によって所定の条件が定められているとはいえ、それを満たした寄附は相続税の課税対象から外れる。
冒頭でも列挙したように、多額の寄付を行っている大富豪には経営者としての手腕も突出している人が多い。ひょっとしたら、今日の世界的な政治の混迷を目の当たりにして、納税によって国にその使い道を決めさせるよりも、自らの意思で慈善事業に充てたいと考えているのかもしれない。
実は、特定の資産クラスに達している富裕層に対し、プライベートバンカーが慈善財団の設立を提案することがある。元プライベートバンカーの加藤伸之氏(仮名)はこう語る。
「大半の富裕層が最も求めているのは、納める税金をできるだけ抑えながら次の代へと相続させることです。ただ、子どもにすべてを遺したら堕落しかねないと考える人もいますし、社会貢献と名声、節税という3つのキーワードが揃った慈善財団の設立は資産額が突出している人ほど高い関心を示しがちです」
日本国内でもさまざまな金融機関が富裕層向けのサービスを展開しているが、残念ながら財団の設立までフォローできるのは、外資系をはじめとする一握りに限られている。そして、あなたが所有している資産が相応の規模に達していれば、おのずと彼らのほうからアプローチしてくることだろう。