米中次官級通商協議が開始され、知的財産権など既に難航が想定されている協議についてどの程度折り合いを付けるのかが焦点になりそうです。コンウェイ米大統領顧問は、トランプ大統領が習中国国家主席と会談する可能性はなお存在していると述べており、懸念材料はあるものの、依然としてリスク選好イベントとして捉えられている可能性が高そうです。特段これといった材料は出てきていないものの、ドル円が110円を大きく上抜き、110円半ばまで上昇していることが、市場心理を示しているのではないでしょうか。

昨日発表された英・第4四半期GDP(改定値)(前期比/前年比)が市場予想+0.3%/+1.4%に対して+0.2%/+1.2%、同時に発表された英・12月鉱工業生産、英・12月貿易収支、英・統計局12月度GDP月次推計発表が軒並み悪化したこともあり、ポンド売りが加速しました。成長モメンタムが急速に低下しており、PMIに代表されるように景況感の数字が総じて悪化していることもあり、徐々に経済成長の減速を織り込みつつあります。英国紙サンが、『メイ英首相が辞任する準備を進めている』と報じていることもあり、ポンドの買い戻しは当面先送りと考えてよさそうです。

ポンド同様に、ユーロも軟調に推移しています。明日14日に発表される独・第4四半期GDPが2四半期マイナスとなりリセッション(景気後退)に陥る可能性が指摘されています。ユーロ経済を牽引するドイツがリセッション入りになるようであれば、ユーロ経済の景気減速は必至であり、ユーロは再び本格的な下落基調を描きそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

メイ英首相は、EUと今週中に離脱に関する話し合いで合意しなければ、声明文を出し、13日(水)、14日(木)どちらかの日程で議会に修正案を提出する見込みです。『合意なき離脱』回避の内容がが盛り込まれるようであれば可決される可能性があるものの、基本的には否決されると考えられます。ただ、議会としてはメイ英首相にEUとの交渉に更なる時間を与えるのではないかと報道されており、2月末くらいまでは大きな進捗はなさそうです。

米国については、引き続き米中通商協議が最重要ポイントになりますが、つなぎ予算の期限が迫る中、週末の国境の壁建設費用に関する交渉は不調に終わりました。このため、今週末にでも再度のつなぎ予算の編成が迫られる可能性も出てきており、米中通商協議が不調に終わるようだと、一転してドル売り基調が加速する下地ができつつあります。

ドルが抱える懸念材料としては、上述した米中通商協議、そしてメキシコ国境の壁建設費用の問題、もう一つはロシア疑惑の捜査報告書が近々明らかになる点です。状況によっては、これまでのドルの買い戻し基調が一変するほどの材料であるため、じりじりとドル高が進行しているものの、薄氷の上を歩んでいる状況であることには違いなさそうです。

NZドルは、明日13日が本番

74.50円でのNZドル円の売り戦略、ほぼ持ち値付近まで反発しましたが、13日に予定されているNZ中銀の政策金利発表後の声明がポイントとして考えているため、様子見とします。引き続き、損切りは下落前の水準である75.10円上抜け、利食いについては、長らくサポートとして意識されている72.50円とします。

海外時間からの流れ

本日東京時間に発表された日銀の国債買い入れは1,800億円と前回の2,000億円から減少しました。これを受け、ドル円の上値が若干意識されており、ドル円は110円半ばをキープできるかどうか正念場になっています。

今日の予定

本日は、米・12月JOLT労働調査などの経済指標が予定されています。また、パウエル・FRB議長の講演が予定されており、注目されそうです。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。