ビジネスでは、迅速な意思決定を求められ場面に出くわすことは少なくありません。このような際に効果を発揮するフレームワークに「OODA(ウーダ)ループ」と呼ばれるものがあります。私たちのビジネスによく馴染んでいるPDCAと比較されることの多いOODAループについて、双方の具体的な違いや活用方法などを交えて説明します。
OODAループとは?
軍事用語として生まれた
OODAループは元々が軍事用語であり、アメリカの戦闘機パイロットであるジョン・ボイド大佐が、朝鮮戦争当時の空中戦におけるパイロットの意思決定手法として提唱したものです。
OODAループは活用のメリットが大きく、戦略レベルにも活用できるため、次第にアメリカ軍全体で用いられるようになりました。さらにNATO加盟国などの多くの西側諸国で採用された後、ビジネスシーンや個人の生活にも適応するものとして世界に広まったフレームワークなのです。
4つのステップで意思決定から実行に移す
OODAループは元来が戦闘機パイロットのために作られたものであるため、フレームワークを用いた思考法の中ではアウトプットまでのスピードが非常に速いのが特徴です。とくに戦闘時における、「不明瞭」「複雑」「想定外」などの状況に対して高い効力を発揮します。
具体的な仕組みとして、OODAループは①観察(Observation)、②方向性の決定(Orient)、③判断(Decision)、④行動(Action)を1サイクルとします。
① 観察(Observation)
日本語では「見る」と訳す人も多いようですが、実際のところ、幅広くさまざまな観点から情報を収集することを目的としています。例えば、ビジネスであれば目前の問題について市場の要因や担当者の生活や気質・性別など、さまざまな情報を収集することが挙げられるでしょう。
② 方向性の決定(Orient)
目前の問題について、①の「観察」で集めた情報から状況を判断して理解します。理解することで、初めて具体的な方向性が定まり、自分が何をすればいいのかが見えてきます。
③ 判断(Decision)
②の「方向性の決定」で見えてきた「何をすべきか」の計画を考えます。
④ 行動(Action)
計画を実際に行動に移すフェーズです。この「行動」が終了することで1サイクルが完結し、再び①の「観察」に戻ることになります。
PDCAと違って不明瞭なシーンで活用されるOODAループ
OODAループと比較されやすいものとして、よくPDCAが挙げられます。しかしOODAループとPDCAは、そもそもの立ち位置がまったく異なるものです。先に述べたようにOODAループは戦闘機パイロットのような、戦闘時における不明瞭・複雑・想定外の状況にいかに対処するかという意思決定方法です。
一方、PDCAサイクルで最もよく扱われるものが品質管理です。ここではあらかじめ外部要因を排除し、問題が起きないものとして計画的に管理されてブラッシュアップを繰り返していきます。つまり、思いがけない状況に遭遇した場合、PDCAは大幅な見直しを求められる可能性が生じますが、OODAループはむしろそのような状況に対処するための意思決定手法です。
個人の能力に依存しがちという欠点も
経営戦略でも活用されるOODAループですが、一方で欠点もあります。OODAループは迅速な意思決定手法ですが、個人の能力や裁量によるところが非常に大きいものです。つまり、思考の枠内のみでの情報収集のため、見落としやミスが生じる恐れは否めません。また、個人の偏ったものの見方が原因で方向性の決定に誤りが生じる場合もあるかもしれません。
このような意思決定方法のため、OODAループは組織を統率する責任者などが活用していくには問題が生じにくいものの、マニュアルで固められた組織などで個々に導入するにはあまり向いていない手法であるとも言えます。
PDCAとOODAループを状況に合わせて上手に活用しよう
OODAループは幅広い視点から物事を眺め、迅速な意思決定を下せる有用なフレームワーク(思考の枠組み)です。ビジネスにおいても組織がフレキシブルで、個々の担当者が自由に営業・制作などを行えるような状況であればOODAループも効果を発揮しやすいと言えます。もちろんPDCAも大きな成果をもたらすフレームワークなので、上手に使い分けることでより一層の成果が期待できるでしょう。(提供:みらい経営者 ONLINE)
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