前回の記事、 不動産の夜明けは本物か?〜直近の相場上昇要因のまとめと今後のポイント〜 では、直近の不動産の上昇要因と、今後の注目ポイントなどについてのまとめをお届けしました。
現在、世界的な不動産投資市場回復の兆しが見られています。世界の商業用不動産への直接投資額は、2010年第4四半期に1000億ドルを超え、2012年の第4四半期には1470億ドルに達しました。
そして、このような世界的な不動産投資熱は、国内の不動産市場にも大きく影響を与えています。
今回は、海外勢の解説を中心としつつ、日本の不動産市場に影響を与えている主要プレイヤーについての解説をお届けします。
参考:
日本の不動産ってどうなのよ?~高騰する海外市場との比較より~
◉不動産熱の高まりと物件の供給過小という大前提
国内不動産市場の主要プレイヤーについての解説を行う前に、国内、特に都内の不動産状況について簡単に触れます。
まず現状は、不動産熱の高まりに対して、その供給は過小気味と言えそうです。
理由は簡単で、2008年リーマンショック以降、多くの新規開発案件が凍結に追い込まれたためです。その為、好況期の開発案件が相次いで竣工を迎えた2012年をピークに、2013年以降は新たなオフィスやテナント等の供給は大きく減少しています。
また、バブルの崩壊前に購入された物件は、取得金額があまりに高く、今の値段でも売ると大きな損失が出てしまう状況です。さらに銀行は不動産融資に積極的なため、ローンの借り換えには困りません。もう少し価格が上がってから売ろうとお考えの方が多いのです。
その結果、都内の優良物件は不動産大手とその系列のREITが押さえているという状況が続いています。
◉上昇を支える主要プレイヤー① 外資ファンドや外資銀行
2008年に崩壊したかつてのミニバブルでは、外資系ファンドは1000億円級の資金を用い、東京のランドマーク的な建物を次々と買い取っていました。しかし、現在は購入意欲や資金はあるものの、思うように物件の購入は進んでいないようです。
これは、上記した物件の供給過小が原因です。
なお、目端の効く海外ファンドは、東京で買えないならと大阪や福岡等の地方都市でマンションやホテル、物流施設を購入する動きを見せています。
ただ、海外ファンドや外資銀行は現状あまり上手く購入を進められていないようですが、国内の不動産市場にはかなり早い時期から注目をしていたようです。
例えば2012年5月、米ゴールドマン・サックスが国内での不動産投資を再開しています。その規模は3~4年間で約4000億円と巨額です。さらに同年6月には、米ファンドのフォートレス・インベストメント・グループが、国内不動産に投資するファンドを2012年内に約800億円に拡大する計画が明らかにしました。
参考:
不動産株は底入れ近し?外国人投資家が期待する復調シナリオ(日経ビジネス:2012年7月10日)
外資系ファンドや、外資銀行が国内不動産に対して注目を高めたのは、2011年から2012年にかけて、企業のオフィス移転が活発化したことが理由のようです。2011年の震災により、耐震設備や事業の継続性への考慮がなされたオフィスへの需要が高まりました。
オフィスの移転が活況ならば、新築ビルの需要も伸びる可能性があります。そして2013年以降はオフィスの供給も減る事から、今後の不動産市場上昇の可能性もあるだろうと、2012年5月以前の段階で考えていたようです。
◉上昇を支える主要プレイヤー② J-REIT
まずそもそもREIT(リート)とは、「Real Estate Investment Trust」の略であり、不動産を対象とする投資信託の一種です。多くの投資家から集めた資金で、複数の賃貸し不動産を購入・運用し、賃料収入や物件を売却した際の売却益を投資家に還元する金融商品です。
(J-REITのJの時はJapanを表しており、日本のREITと言うことです。)
数年前までは国内不動産市場における最大の買い手は、新興デベロッパーや外資ファンドでした。しかし、今は国内系REITが不動産では最も主要なプレイヤーとなっています。後に解説する海外の投資家も、日本の不動産に投資をするためにJ-REITを購入することは多々あります。
なおJ-REIT全体の資金の出し手ですが、以前は国内の個人投資家や海外の投資家が主流でした。しかし現在は、地方銀行や信用金庫がJ-REITに殺到していきています。