技術も営業も広告宣伝も、ブランドごとのP/Lを全員が共有

SIXPAD
(画像=THE21オンライン)

着用することで筋肉を鍛えられるトレーニング・ギア『SIXPAD』。サッカーのクリスティアーノ・ロナウド選手の広告を目にしたことがある人も多いだろう。大ヒットしているこの商品を、海外メーカー製だと勘違いしている人もいるようだが、れっきとした日本企業が開発したもの。その企業とは、1996年創業で名古屋に本社を置く〔株〕MTGだ。美容ローラーが代表的な『ReFa』や、マドンナと共同開発した『MDNA SKIN』など、世界的ヒットブランドを多数開発している会社である。今年、東証マザーズへの上場も果たした。同社で『SIXPAD』を統括しているSIXPAD PJ部の熊崎嘉月部長に話を聞き、『SIXPAD』の大ヒットの理由を探った。

すべては社長のスケッチブックから

話を聞いてまず驚いたのは、MTGのすべての商品が、創業社長である松下剛氏のスケッチブックから生まれているということだ。2015年7月に発売された『SIXPAD』も例外ではない。スケッチブックに描かれたデザインは、実際に市場に出たものとほぼ同じだという。しかも、スケッチブックには事業計画まで書かれていたそうだ。「松下のアイデアは次々に生まれていて、開発が追いつけていない状況です」と熊崎氏は話す。

『SIXPAD』の発想は、「EMS(Electrical Muscle Stimulation=筋電気刺激)の価値を正しく伝え、EMS業界の信頼性向上・発展を実現させるには、『本物』でなければならない。そうであれば、ロナウド選手しかいない」というところから生まれた。偶然にも、ロナウド選手は筋肉を鍛えるための方法の一つとしてEMS機器を使っており、その価値を理解していた。

「筋肉は、収縮と弛緩を繰り返すことで鍛えられます。通常は筋トレをして収縮と弛緩をさせるのですが、それを電気刺激によって行なうのがEMSの技術です。随意運動ができない方に対して、筋力を落とさないために、医療やリハビリの技術として発展してきました。ロナウド選手は、トレーニングの一環として、EMS機器を使って筋肉を鍛えていたのですが、コードなどもついた大型のものでした。そこで松下は、EMS機器を、扱いやすい、ポータブルなものにしたいと考えたのです」(熊崎氏)

新商品の事業計画を作るためには、市場調査をするのが普通だろうが、MTGではより革新的なブランドの開発を目指しているために、プロダクトアウトの考えが強いという。

「すでに商品を投入している市場があるので、そこに新商品を投入すればどのくらい売れるのかは考えます。しかし、市場調査を行なって潜在顧客のニーズを汲み上げるというようなことはしません。もちろん、市場に投入したあとは、実際に使っていただいたお客様の声を聞いて、改善したり、商品のラインナップを増やしたり、ということをしています」(熊崎氏)

最初にゼロからイチを生み出すときは松下氏のトップダウンだが、大きく育てていくに当たっては、現場からのボトムアップによるところも大きいという。例えば、『SIXPAD』ブランドで販売されているサプリも、その一つだ。