結果の概要:12月の個人所得は予想比上振れ、個人消費は下振れ。1月の所得は減少

米個人所得・消費支出
(画像=PIXTA)

3月1日、米商務省の経済分析局(BEA)は12 月の個人所得・消費支出統計および1月の個人所得統計を公表した。政府閉鎖の影響により、12月分の公表がおよそ1ヵ月遅れとなったほか、1月分は個人所得(名目値)のみの公表となった。

12月分は、個人所得が前月比+1.0%(前月改定値:+0.3%)となり、前月および市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.4%を大幅に上回った。個人消費支出(名目値)は前月比▲0.5%(前月改定値:+0.6%)と、こちらは前月、市場予想(▲0.3%)を下回った(図表1)。また、価格変動の影響を除いた実質個人消費支出も前月比▲0.6%(前月改定値:+0.5%)と、前月、市場予想(▲0.3%)を下回った(図表5)。貯蓄率(1)は7.6%(前月:6.1%)と前月から+1.5%ポイントの大幅な上昇となった。

価格指数は、総合指数が前月比+0.1%(前月改定値:横這い)と前月、市場予想(横這い)を上回った。また、変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は、+0.2%(前月改定値:+0.2%)と、こちらは前月、市場予想(+0.2%)に一致した(図表6)。前年同月比では、総合指数が+1.7%(前月値:+1.8%)と、前月から低下した一方、市場予想(+1.7%)に一致した。コア指数は+1.9%(前月値:+1.9%)とこちらは前月、市場予想(+1.9%)に一致した(図表7)。

最後に、1月の個人所得は前月比▲0.1%と前月(+1.0%)や市場予想(+0.3%)を大幅に下回り、16年2月(▲0.02%)以来の減少となった(図表2)。

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(1)可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

結果の評価:12月は予想外の消費減少で貯蓄率は16年1月(7.7%)以来の水準に上昇

12月の名目個人消費(前月比)が、好調な年末商戦の事前予想に反して、09年9月(▲0.8%)以来の大幅な減少となった一方、後述するように特殊要因に伴う利息・配当収入の大幅な増加や、農家向け政府補助金の影響などから、個人所得が12年12月(+2.6%)以来の高い伸びとなった結果、貯蓄率は16年1月(7.7%)以来の水準まで上昇した(図表1)。

米個人所得・消費支出
(画像=ニッセイ基礎研究所)

もっとも、1月の消費統計は未だ公表されていないものの、1月の個人所得が前月の反動もあって前月比で減少していることから、1月の貯蓄率は低下することが見込まれる。

一方、1月下旬に政府閉鎖が終了し、政府閉鎖開始時点に遡って連邦政府職員の給与が支給されるほか、1月以降は資本市場が安定を取り戻し、足元では消費者センチメントの一部で改善もみられることから、2月以降の個人消費は再び堅調な伸びに復するとみられる。

物価は(前年同月比)は、総合指数、コア指数ともに11月から2ヵ月連続でFRBが目標とする2%の水準を下回っている。もっとも、総合指数がエネルギー価格の下落などから2ヵ月連続で低下する一方、コア指数は2ヵ月連続で横這いとなっており、好調な労働市場を背景に賃金上昇圧力に高まりがみられることを考慮すると、物価の基調は底堅いと言えよう。

所得動向:12月は利息・配当の特殊要因、農家の補助金が所得を押上げ、1月は反動減

12月の個人所得の内訳をみると、賃金・給与が前月比+0.5%(前月:+0.3%)と前月から伸びが加速したほか、利息・配当収入が+3.3%(前月:+0.2%)と前月から大幅な伸びとなった(図表2)。これは、米IT企業のヴィエムウエアによる特別配当金に伴う特殊要因である。また、自営業者所得が+1.7%(前月:+1.5%)と3ヵ月連続で1%台半ば~後半の高い伸びとなった。これは農業関連の政府補助金によって農業関連自営業者の所得が前月から、更に6割強の伸びとなったことが大きい。

1月は、賃金・給与が前月比+0.3%と前月から伸びが鈍化したほか、利息・配当収入が▲3.5%と特殊要因の剥落で大幅な反動減となった。また、自営業者所得も▲1.6%と減少に転じた。農家に対する政府補助金は依然水準は高いものの、12月からは3割超の減少となったことが大きい。政府による社会保障関連の補助金などの移転所得は+2.6%(前月:+0.5%)と前月から伸びが加速した。

個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、12月が+1.1%(前月値:+0.3%)と前月から伸びが大幅に加速したものの、1月は▲0.2%と前月からの反動減となった(図表3)。また、価格変動の影響を除いた実質ベースも12月が+1.0%(前月:+0.2%)と前月から大幅に伸びが加速した。なお、1月の実質ベースの結果は公表されていない。

米個人所得・消費支出
(画像=ニッセイ基礎研究所)

消費動向:財消費は全般的に減少、サービス消費も前月から伸びが鈍化

名目個人消費(前月比)は、財消費が▲1.9%(前月:+1.0%)と前月から減少したほか、サービス消費も+0.1%(前月:+0.4%)と前月から伸びが鈍化した(図表4)。財消費では、耐久財が▲1.9%(前月:+2.1%)となったほか、非耐久財も▲1.9%(前月:+0.4%)といずれも前月から大幅な減少に転じた。

耐久財では、自動車・自動車部品▲1.1%(前月:+2.5%)、家具・家電▲2.1%(前月:+1.0%)、娯楽財・スポーツカー▲2.5%(前月:+3.1%)と、主要な分野全てで前月から減少に転じた。

また、非耐久財は、食料・飲料▲0.9%(前月:+0.8%)、衣料・靴▲2.3%(前月:+1.4%)が前月から減少に転じたほか、ガソリン・エネルギーが▲6.2%(前月:▲3.9%)と2ヵ月連続の減少となった。

サービス消費は、娯楽サービスが+0.3%(前月:▲0.2%)と前月から増加に転じたほか、金融サービスが+0.5%(前月:+0.2%)と前月から伸びが加速した一方、外食・宿泊が▲0.4%(前月:▲0.6%)と2ヵ月連続で減少したほか、住宅・公共料金が▲0.7%(前月:+0.7%)と前月から減少に転じた。

米個人所得・消費支出
(画像=ニッセイ基礎研究所)

価格指数:前月比、前年同月比ともにエネルギー価格が下落

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が▲2.9%(前月:▲2.8%)と2ヵ月連続のマイナスとなった。一方、食料品価格指数は+0.1%(前月:+0.2%)と、こちらは2ヵ月連続でプラスを維持した。

前年同月比では、エネルギー価格指数が▲0.4%(前月:+2.3%)と16年10月(▲0.2%)以来のマイナスとなった(図表7)。食料品価格指数は+0.6%(前月:+0.6%)とこちらは前月並みの伸びを維持した。

米個人所得・消費支出
(画像=ニッセイ基礎研究所)

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窪谷浩(くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員

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