結果の概要:失業率は予想以上に低下も、雇用者数は市場予想を大幅に下回る結果

米雇用統計
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3月8日、米国労働省(BLS)は2月の雇用統計を公表した。非農業部門雇用者数は、前月対比で+2.0万人の増加(1)(前月改定値:+31.1万人)と、+30.4万人から上方修正された前月、市場予想の+18.0万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)を大幅に下回った(後掲図表2参照)。

失業率は3.8%(前月:4.0%、市場予想:3.9%)と、こちらは前月から▲0.2%ポイント低下し、市場予想も下回った(後掲図表6参照)。労働参加率(2)は63.2%(前月:63.2%、市場予想:63.2%)と、こちらは前月、市場予想に一致した(後掲図表5参照)。

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(1)季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
(2)労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。

結果の評価:企業の雇用確保が困難になってきた可能性

前月の雇用増加数が30万人超と非常に高かったことから、2月の雇用鈍化は不可避とみられていたが、+2万人増まで急減した結果は予想外である。労働力不足が顕在化してきており、企業の雇用確保が困難になっている可能性はあるものの、後述するようにADP社の統計は10万人台後半を維持しているため、2月の雇用増加数が過小評価されている可能性が高いとみられる。もっとも、労働市場の回復が長期化する中で、18年の月間平均増加ペース(+22.3万人増)にみられたような20万人超を今後も維持することは困難だろう。

一方、2月の失業率は低下したが、これは先月の当レポートで指摘した通り、政府機関の閉鎖に伴う一時帰休職員増加の影響が剥落したことが大きいと考えられる。

最後に、時間当たり賃金(全雇用者ベース)は、前月比+0.4%(前月値:+0.1%、市場予想:+0.3%)と、前月、市場予想を上回ったほか、前年同月比でも+3.4%(前月改定値:+3.1%、市場予想:+3.3%)と、+3.2%から下方修正された前月、市場予想を上回った(図表1)。とくに、前年同月比では09年4月以来の水準となった。

米雇用統計
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このようにみると、2 月の結果は雇用増加数が実際よりやや過小評価されている可能性があるものの、失業率や賃金上昇率からは引き続き労働需給がタイトである状況が示されており、企業の雇用確保が困難となっていることを示している可能性がある。今後、雇用増加ペースの鈍化がどの程度で留まるのか注目される。

事業所調査の詳細:全般的に雇用の伸びが鈍化、財生産部門で16年8月以来の雇用減少

事業所調査のうち、民間サービス部門は前月比+5.7万人(前月:+22.7万人)と前月から大幅に伸びが鈍化した(図表2)。

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一方、財生産部門は前月比▲3.2万人(前月:+8.1万人)となり、こちらは16年8月以来の減少となった。製造業が+0.4万人(前月:+2.1万人)と前月から伸びが鈍化したほか、建設業が▲3.1万人(前月:+5.3万人)と16年5月以来の減少となった。

政府部門は、前月比▲0.5万人(前月:+0.3万人)とこちらも前月から減少に転じた。内訳をみると、連邦政府では横這い(前月:+0.1万人)となったほか、州・地方政府が▲0.5万人(前月:+0.2万人)と減少に転じたことが大きい。

前月(1月)と前々月(12月)の雇用増(改定値)は、前月が+31.1万人(改定前:+30.4万人)と+0.7万人上方修正されたほか、前々月が+22.7万人(改定前:+22.2万人)と、こちらも+0.5万人上方修正された。この結果、2ヵ月合計の修正幅は+1.2万人の上方修正となった(図表3)。

なお、BLSの公表に先立って3月6日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増加数が前月比+18.3万人(前月改定値:+30.0万人、市場予想:+19.0万人)と、+21.3万人から大幅に上方修正された前月改定値を下回ったほか、市場予想も下回った。もっとも、ADP統計は、1月に30万人増加した後の2月も10万人台後半の高い伸びを維持しているほか、ADP統計の過去3ヵ月の月間平均増加ペースは24.4万人増となっており、雇用統計の同18.6万人増と大幅な乖離が生じている。

2月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が27.66ドル(前月:27.55ドル)となり、前月から+11セント増加した。一方、週当たり労働時間は34.4時間(前月:34.5時間)と、こちらは3ヵ月ぶりに前月から減少した。その結果、週当たり賃金は951.50ドル(前月:950.48ドル)と前月から小幅ながら増加した(図表4)。

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家計調査の詳細:政府機関閉鎖の影響剥落で失業率が低下

家計調査のうち、2月の労働力人口は前月対比で▲4.5万人(前月:+49.5万人)と小幅ながら18年8月以来の減少となった。内訳を見ると、就業者数が+25.5万人(前月:+23.7万人)と小幅ながら前月から伸びが加速した一方、失業者数が▲30.0万人(前月:+25.9万人)と前月から大幅な減少に転じ、労働力人口を押下げた。BLSは失業者の減少のうち、「解雇と一時雇用満了」の人数が22.5万人に上るとしており、これらは政府機関閉鎖の影響を受けているとしている。一方、非労働力人口は+19.8万人(前月:▲34.5万人)と、3ヵ月ぶりに増加した。

この結果、労働参加率は小数第1位まででは63.2%と前月から横這いとなったものの、小数第2位までとると63.15%と前月の63.21%から小幅に低下した(図表5)。また、プライムエイジと呼ばれる働き盛り(25~54歳)のみの労働参加率も2月は82.5%(前月:82.6%)と前月から▲0.1%ポイント低下した。男性が89.4%(前月:89.4%)と前月から横這いとなったものの、女性が75.9%(前月:76.0%)と前月から▲0.1%ポイント低下した。

失業率は前月から▲0.2%ポイント低下したが、政府機関閉鎖に伴う一時帰休者の増加によって1月の失業率が押上げられた影響が剥落した結果と考えられる。

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2月の長期失業者数(27週以上の失業者人数)は127.1万人(前月:125.2万人)と前月から+1.9万人増加した。平均失業期間は21.7週(前月:20.5週)となった。また、長期失業者の失業者全体に占めるシェアは20.4%(前月:19.3%)と、前月から+1.1%ポイント増加した(図表7)。

最後に、周辺労働力人口(142.4万人)(3)や、経済的理由によるパートタイマー(431.0万人)も考慮した広義の失業率(U-6)(4)をみると、2月は7.3%(前月:8.1%)と前月から▲0.8ポイントの大幅な低下となった(図表8)。この結果、通常の失業率(U-3)と広義の失業率(U-6)の差は3.5%ポイント(前月:4.1%ポイント)と、前月から▲0.6%ポイント縮小した。

米雇用統計
(画像=ニッセイ基礎研究所)

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(3)周辺労働力とは、職に就いておらず、過去4週間では求職活動もしていないが、過去12カ月の間には求職活動をしたことがあり、働くことが可能で、また、働きたいと考えている者。
(4)U-6は、失業者に周辺労働力と経済的理由によりパートタイムで働いている者を加えたものを労働力人口と周辺労働力人口の和で除したもの。つまり、U-6=(失業者+周辺労働力人口+経済的理由によるパートタイマー)/(労働力人口+周辺労働力人口)。

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窪谷浩(くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員

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