政府主導で働き方改革が推し進められるなか、多様な働き方を取り入れる企業が増えてきた。働き方改革が叫ばれるようになった背景には、総務省が発表している「平成29年版情報通信白書」によると、日本の生産年齢人口は少子高齢化の進展によって、1995年をピークに減少しているという現実が関係している。そのため、人手不足から人件費が高騰しており、最近では人件費の高騰が企業業績に悪影響を及ぼすまでになっている。そこで、働き方改革を進める企業から注目を集めているのが「RPA (ロボットによる業務自動化) 」だ。

RPAとは ? 期待されること

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(写真=PIXTA)

RPAはRobotic Process Automation (ロボティック・プロセス・オートメーション) の略語で、私たち人間が行う事務作業などの業務を人工知能 (AI) やAIが反復して学ぶ機械学習の技術を用いたソフトウエアが代行、代替することを指す。

前述のように、近年は働き手不足による人件費の上昇が話題にのぼることが多い。さらに、厚生労働省の「平成30年版労働経済の分析」によると、日本の生産性はG7の中で最も低い水準にあることがわかる。そこで、人手不足かつ生産性の低い労働現場でRPAを取り入れることで、人手不足を解消し、かつ業務の効率化、生産性の向上につなげることが期待されているのだ。

国内RPA市場規模の推移 2021年には2016年比で10倍強に

今後企業でRPAの導入はどの程度進み、どの程度の市場規模になることが予測されているのだろうか。IT調査・ コンサルティング会社のアイ・ティ・アール (ITR) が2017年10月に発表した国内RPA市場規模の推移によると、2016年度の売上金額は8億円で前年度比4倍増、2017年度も前年度比2.5倍増と、高い伸びが続くことが予測されている。そして、2018年度には2016年度の5倍強、2021年度には同10倍強となると予測されており、継続的な伸びが見込まれている。

またマッキンゼー・グローバル・インスティテュートが2013年5月に発表した「Disruptive technologies:Advances that will transform life, business,and the global economy」によれば、2025年までに全世界で1億人以上の知的労働者、もしくは1 / 3の仕事がRPAに置き換わり、知的労働の自動化による経済効果が2025年までに全世界で年間5.2兆ドルから6.7兆ドルに拡大する見込みとされている。

RPAが進む業務、業種は ?

RPAの導入が進む業務は、主には人事や経理、総務、営業管理などバックオフィス周りの定型作業や単純作業などが挙げられる。具体的には繰り返し行われる業務や、大量にデータを処理する業務といえるだろう。ルール化や定型化、単純化ができて誰が行っても同じ結果になりやすい業務から代替が進んでいくと考えられる。

導入が活発に進んでいる業界として、書類関係の作業が比較的多い金融業界や人事・採用に関わる部署などが挙げられるだろう。大量の書類作成やデータ処理には正確性が求められる。人間では間違いも生じやすいが、その点、RPAを活用すれば間違いをなくすことも不可能ではないだろう。さらに、セキュリティの観点から考えれば、人を介することよって情報漏洩という心配がつきまとうが、RPAを活用することでそのような心配が少なくなるという点も挙げられる。実際、近年は大手金融機関を中心に、RPAを導入することによって作業の効率化を図ろうとする企業が増えているといった報道をよく見聞きするようになった。

日本では少子高齢化が加速していることもあり、人口の増加による経済成長は期待しにくくなっているのが現状だ。人件費や生産性の低さが企業業績にそれなりに影響を及ぼしていた場合には、RPAを活用することで、数年後に業績が激変することがないとは言い切れない。RPA技術を活用して、変貌を遂げようとしている業界や企業の動向には注目することで新たな投資機会やビジネスの糸口を見つけてみてはどうだろうか。(提供:大和ネクスト銀行

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