日本各地で頻発する自然災害や経営者の高齢化などは、事業の存続を危ぶませるものです。これに対処するため、中小企業庁では、中小企業を中心とした事業の継続をサポートするために複数の措置を講じています。本稿ではその中の一つとして、平成31年度税制改正大綱に盛り込まれた、中小企業向けの防災・減災設備の減免措置である「事業継続力強化設備投資促進税制」とその優遇措置について解説します。

緊急時の事業継続を可能にするBCP(事業継続計画)

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(写真=garagestock/Shutterstock.com)

相次ぐ天災などにより、企業は緊急事態に遭遇した際の事業継続および早期復旧への仕組みや計画作りが求められるようになっています。この計画を策定することをBCP(Business Continuity Plan、事業継続計画)と呼びます。

BCPを策定することは、企業にとって明確なメリットがあります。一つは、実際に万一の事態に遭遇した場合のリスクヘッジが可能になることです。BCPの策定によって、地震、水害、大雪、テロ、火災などの緊急事態に遭った時に、事業への影響を限定し、事業活動の速やかな再開を可能にさせます。それによって、事業への損失を最小限に抑えることができます。

もう一つは、平常時においても取引先などからの信用を得られる点で、中長期的な企業業績の向上が期待できます。

中小企業庁はBCPの策定や運用への支援を行っており、その取り組みの一つが「事業継続力強化設備投資促進税制」であると言えます。

「事業継続力強化設備投資促進税制」とは

「事業継続力強化設備投資促進税制」は、平成31年度税制改正大綱により創設予定の新しい税制です。当税制は中小企業向けの事業継続を支援するもので、自然災害や事業者の高齢化による経営存続の危機など、中小企業が抱える課題を解決するために設立されました。

当税制には、中小企業強靭化法案における「事業継続力強化計画」および「連携事業継続力強化計画」と呼ばれる中小企業の事業継続力強化に関する計画の認定と支援措置が含まれています。具体的には、中小企業が防災・減災設備を設置する場合、当該計画の認定を受けることで税制の特別措置を受けることができます。

「事業継続力強化計画」は中小企業が個々に計画を策定するもので、「連携事業継続力強化計画」は複数の中小企業が連携するものです。

防災・減災に関する設備投資費用の20%を特別償却できる

「事業継続力強化設備投資促進税制」は、中小企業が防災および減災について設備投資を行った場合、その20%を特別償却できる支援措置です。この措置を受けるには、以下の要件を満たす必要があります。

1)中小企業であること
「事業継続力強化設備投資促進税制」は、青色申告書を提出している中小企業が対象となっています。

2)認定を受けること
当該制度を活用するには、上述した「事業継続力強化計画」および「連携事業継続力強化計画」のいずれかを作成します。計画の記載内容は、①取組内容、②実施期間、③防災・減災設備などとなっています。また、当該計画書を作成後、経済産業大臣に申請、認定を受ける必要があります。

3)設備の取得および事業供用
一定期間内に「事業継続力強化計画」および「連携事業継続力強化計画」にて記載されている以下のいずれかの設備を取得する必要があります。

機械装置(100万円以上):自家発電機・排水ポンプなど
器具備品(30万円以上):制震・免震ラック、衛星電話など
建物付属設備(60万円以上):止水板、防火シャッター、排煙設備など

これらを満たすことで税務申告の際、税制優遇を受けることが可能となります。

BCPの策定で悩んだら専門家に相談を

BCPの作成は、税制の優遇措置を受けるためのものではありません。地震や水害などの自然災害が相次ぐ現在、万一の事態に遭遇した際に自社を守るための施策です。計画書の作成などを考えるにあたり、もし不安な点があるならば、専門家に相談することをおすすめします。(提供:みらい経営者 ONLINE

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