株式相場の動きが冴えません。日経平均株価は10連休前、昨年12月初頭以来の高値水準となる22,000円台を回復していましたが、足元では一時21,000円台をも割り込む動きになっています。
合意が成立すると期待されていた米中通商協議が、逆に暗礁に乗り上げてしまったことで、投資家は世界的に「リスクオフ」の姿勢を強めているようです。米中対立の背景には、両国の覇権争いがあり、簡単に妥協が成立すると考えることは難しいのかもしれません。特に、米国が中国の通信機器大手ファーウェイ・テクノロジーズ(華為技研)を市場から締め出す動きに出て以降、世界のハイテク企業に業績下方修正圧力が強まり、株式市場ではさらに波乱となる可能性が強まっています。
そうした中、株式市場では投資家がポートフォリオを見直す姿勢を強めています。決算発表シーズンが終わったこともあり、東京株式市場でも、米中通商摩擦や変動する世界経済に影響を受けにくい、独自の強みを持っている企業の評価が高まりつつあるように見受けられます。
そこで「日本株投資戦略」では、過去連続増益の後に最高益更新を達成し、かつ今後も成長が期待される銘柄を抽出すべくスクリーニングを行ってみました。あぶり出された銘柄は確かに、独自の強みを持っている銘柄ばかりのように思われます。それらの銘柄は仮に、米中貿易摩擦で株式市場の混迷が深まれば、稀有の買いチャンスを迎えると「日本株投資戦略」は期待したいと思います。
今後も成長が続きそうな「最高益」8銘柄をご紹介
過去連続増益の後に最高益更新を達成し、かつ今後も成長が期待される銘柄とはどのような銘柄でしょうか。それではさっそく、スクリーニングを行ってみたいと思います。
(1)東証1部上場銘柄であること
(2)時価総額1千億円以上の銘柄であること
(3)業績予想を行っているアナリストが2人以上いること
(4)前期までの5年間、営業利益が増加を続けていること
(5)前期の純利益が過去最高益となっていること
(6)過去4週間で市場予想EPSが上昇している銘柄であること
(7)今期・来期ともに市場予想営業利益が10%超の増益見通しになっていること
(8)直近決算が本決算でない場合、その四半期決算で営業利益が前年同期比で増益となっていること
これらの全条件を満たす8銘柄を、来期市場予想営業増益率の高い順に並べたものが表1となります。これらの銘柄は独自の強みを持っており、仮に、米中貿易摩擦で株式市場の混迷が深まれば、稀有の買いチャンスを迎えると「日本株投資戦略」は期待したいと思います。
このスクリーニングでは、前期に純利益で最高益を達成しているのみならず、本業のもうけを示す営業利益が5年連続増益であることが求められています。単純に景気が良かったからとか、ヒット商品に恵まれたというだけではこうした条件をクリアすることは難しくなります。また、一定水準以上の時価総額を求められているので、抽出された銘柄は、ある程度規模の大きな市場で活躍していると考えることが可能です。
さらに、今後もアナリストが高い成長を見込んでいる企業に絞られています。米中貿易摩擦の激化にとどまらず、内外で景気は減速または悪化に向かうとみられ、アナリストの高い成長期待が裏切られるリスクはゼロではありません。ただ、もともとアナリストが高い成長シナリオを抱けないようでは、当面の業績拡大さえ、危ういと言えるかもしれません。
なお、最後の(8)については、おもに、3月決算以外の銘柄が対象となる条件です。この条件を満たしていない場合、今期もその会社が最高益を更新できる可能性が小さくなり、株式市場が好業績期待銘柄と扱わない可能性が大きくなるためです。
5/24(金)の東京株式市場では、表1の銘柄のうち、朝日インテック(7747)、システナ(2317)、オープンハウス(3288)が年初来高値更新となっております。相場全体が低迷する中でも、表1に掲載されるような銘柄は注目を集める可能性があることを示しています。
表1:今後も成長が続きそうな「最高益」8銘柄
コード / 銘柄 / 株価(5/24) / 市場予想営業増益率今期 / 市場予想営業増益率来期 / 事業の特徴
<3769> / GMOペイメントゲートウェイ / 7,550 / +34.9% / +31.8% / ECサイトの決済処理代行
<7747> / 朝日インテック / 5,990 / +17.1% / +20.9% / 循環器用医療機器で世界展開
<3064> / MonotaRO / 2,191 / +20.8% / +20.0% / 工具のネット通販
<2175> / エス・エム・エス / 2,484 / +19.1% / +18.6% / 介護・医療に特化した人材紹介
<6028> / テクノプロ・ホールディングス / 5,960 / +28.5% / +17.5% / 技術系人材サービスで最大級
<8876> / リログループ / 2,891 / +20.0% / +15.1% / 企業の福利厚生を代行
<2317> / システナ / 1,590 / +14.3% / +12.0% / ソフト開発支援
<3288> / オープンハウス / 4,700 / +17.2% / +10.9% / 狭小地の戸建てに強い不動産
※Bloombergデータ、報道等をもとにSBI証券が作成。「市場予想」はBloombergが集計した市場コンセンサス。業績データについては、5/23(木)までの情報をもとに作成されており、5/24(金)以降の情報は反映されていない可能性がありますので、ご注意ください。
抽出銘柄の投資ポイント
ここでは表1に掲載した数銘柄について、投資ポイントをご紹介したいと思います。
GMOペイメントゲートウェイ(3769)はECサイトの決済処理を代行するサービスを提供しています。我が国の商取引のうち、電子商取引(EC)に置き換わった比率(EC化率)はいまだ10%に満たないと推測されます。今後、ECの普及が進むとともに、当社の事業も拡大すると期待されます。
当社の営業利益は増益基調が続いています。今期(2019年9月期)は会社側で26.7%営業増益を見込んでいますが、市場は34%超の営業増益を予想しています。5/9(木)に発表された第2四半期の営業利益(累計)は前年同期比30.2%でした。通期の市場予想営業利益と比べると増益率が鈍いとみられたのか、同決算発表後は株価が調整しています。
株価は2018/10/2(火)高値水準以下まで下げ、調整が進捗していると考えられます。当社「テーマキラー!」ではキャッシュレス関連株のひとつでもあります。
図1:GMOペイメントゲートウェイ(3769)・日足
朝日インテック(7747)はカテーテル治療に用いられる医療機器を生産している会社です。カテーテル治療は心筋症や心筋梗塞等で心臓バイパス手術等に代わり普及しつつあり、その中で当社はガイドワイヤーと呼ばれる機器で高いシェアを有しています。当社製品のシェアは日本で約4分の3、米国で4分の1、アジアで半分強程度と推測されます。
文字通り世界経済変動や景気の影響を受けにくい分野といえそうです。5/15(水)に発表された第3四半期決算では営業利益が前年同期比5.0%増でした。今期も最高益を更新できる可能性が膨らんだといえ、発表後の株価はおおむね好調で、5/24(金)も年初来高値更新となっています。
図2:朝日インテック(7747)・日足
MonotaRO(3064)は「工具のアマゾン」という異名を有しています。工具を中心とする間接資材を取り扱うネット通販業者で、中小の製造業者を主要顧客としています。第1四半期末で約1,800万点にも及ぶ品揃えが強みになっています。
連結業績では2012年12月期以降、前期まで7期連続の営業増益を果たし、直近3年も33.9%増、24.7%増、16.5%増と高い伸びを実現しています。ただ、第1四半期の営業増益率は15%にとどまっており、これまでの成長率と比べると迫力不足に映るかもしれません。2019年の株価はやや長めの下落局面となっています。ただ、2,100円台は下値抵抗ラインになっているようです。
図3:MonotaRO(3064)・日足
リログループ(8876)は企業の福利厚生を代行するビジネスを展開しています。原点は1984年に「転勤者の留守宅管理システム」を日本で初めて開始したことです。現在の事業は、社宅管理・賃貸管理・福利厚生・海外赴任支援・海外現地支援です。
ストック型ビジネスで安定成長を達成。日本企業の海外進出増加による留守宅管理件数増加、労働力不足で企業の福利厚生ニーズ上昇などが追い風になっています。
中期計画を5/23(木)に発表。2023年3月期の定量目標を売上高3,700億円(2019年3月期実績は2,509億円)、税引前利益335億円(同191億円)と設定。23期連続増収、14期連続最高益更新、20期連続増配などの連続記録を目指します。
株価は4/2(火)3,240円に対し、1割程度下げた水準です。足元は2,800円近辺が下値支持ラインになっているようです。
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部
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