2019年4月から順次施行されている「働き方改革関連法」。詳細がよく分からない、社内の環境整備がなかなか進まないなど、不安材料も多いのではないでしょうか。施行にあたって、経営者が知っておくべきことを整理し、働き方改革を推進することで得られるメリットを紹介します。

働き方改革関連法の目的と要点

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(写真=PIXTA)

働き方改革の目的は、働き過ぎを防ぎ、働く人のワーク・ライフ・バランスと多様で柔軟な働き方を実現することです。この改革が実現すれば、社員定着率やモチベーション向上を期待できるため、企業オーナーも内容を知っておきたいところです。

働き方改革推進の要は「労働時間法制の見直し」と「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」です。大企業に限らず、国内雇用の7割を担う中小企業・小規模事業者もまた、法改正の指針に沿って、働き方改革を着実に実施することが求められます。

中小企業経営者が知っておきたい具体的内容

「働き方改革関連法」のポイントは下記の5つです。

1.時間外労働の罰則付き上限規制

時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間です。特別な事情がある場合でも、単月100時間・年720時間が限度となり、これに違反すると、罰則(6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科されるおそれがあります。

中小企業は2020年4月1日から施行対象となります。現在、時間外労働が多くなってしまっている場合は、施行年月までに、どんな業務に時間がかかっているかを洗い出し、対策を打つ必要があります。

2.年5日間の有給休暇取得義務化

法定年次有給休暇が10日以上の全ての労働者に、「使用者による時季指定」「労働者自らの請求・取得」「計画年休」のいずれかの方法で、毎年5日は有給休暇を取得させる必要があります。これに違反すると、罰則(6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科されるおそれがあります。

年次有給休暇は使用者の承認は不要とされています。ただし「事業の正常な運営を妨げる場合」は、他の時期に年次有給休暇を変更してもらう時期変更権が雇用側にも認められています。繁忙期などを想定して、従業員との摩擦を起こさないためにも、申請手続きを就業規則に定めておくとよいでしょう。

3.割増賃金率の中小企業猶予措置の廃止

特に長い時間外労働を抑制する目的で、月60時間を超える時間外労働に対して、割増賃金率を引き上げなければなりません(50%以上)。

経営体力的に厳しい中小企業では、今すぐ施行されると会社が成り立たなくなるということもあるでしょう。そういった原因から現在、中小企業はこの割増賃金率の猶予措置期間ですが、2023年4月1日には猶予措置が廃止されます。それまでに月60時間超の時間外労働状況を精査して、業務処理体制の見直しや新規雇用などの対策を講じる必要があります。長時間労働環境を是正しないと経営に直接的な大影響がでることが想像されるので、戦略的・段階的に働き方を考えていくようにしましょう。

4.勤務間インターバル制度の努力義務

企業には、労働者の生活時間や睡眠時間を確保する目的で、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息を確保する努力義務が課せられます。

本制度の導入にあわせて、翌日の始業時刻の繰り下げや始業時刻以前の勤務禁止など、しかるべき措置をとるよう努めなければなりません。

5.同一労働、同一賃金の原則の適用

同一企業内の正規・非正規雇用労働者の間で、賃金・福利厚生・キャリア形成・能力開発などの面で不合理な待遇差がある場合は、労使合意の上、全ての雇用管理区分において不合理な待遇差を解消する、あるいは職務内容や配置転換などの実態に照らして不合理でないよう配慮する必要があります。

「働き方改革関連法」には、他にも「高度プロフェッショナル制度の創設」「フレックス制度の見直し」「産業医の機能強化」といった改正内容が含まれています。

働き方改革推進で得られるメリット

上記のポイントに則り働き方改革を実践することは、企業と従業員双方にメリットがあります。

社内ルールの見直しやITツールの導入などによって生産性が向上すれば、所定時間内での業務完了が可能になり、全体の業績向上にも貢献するはずです。

また従業員にとっても、長時間労働から解放されて柔軟な働き方を選べるようになれば、ワーク・ライフ・バランスが向上し、育児や出産・介護などに直面しても継続的な就労が可能になります。さらに生活やキャリアに不安を持っていた従業員の待遇が改善されれば定着率も向上します。

「働き方改革関連法」施行は経営力向上の好機である

「働き方改革関連法」には罰則規定がある項目もあるため、特に経営者や管理職、人事担当者は詳細まで理解しておく必要があるでしょう。より良い職場環境をつくるためには、時間外労働の削減や有給休暇の取得など、管理職などが率先垂範を心掛けることが大切です。業務効率の良い社員のノウハウを共有化するという手もあります。

人手不足の環境下においては、人材の確保と定着および生産性の向上が肝要です。会社と従業員の働き方を変革させることは、企業の持続的な成長を達成するために必要なことといえるでしょう。(提供:企業オーナーonline

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