組織の「声の大きい人」に動じないために
ここで、冒頭の問題に戻りましょう。「みんな」とは何を指すのか。そして、どうすれば極端な意見を持つ抵抗勢力を排除して、改革を進めることができるのか。
正規分布の考え方から「みんなとは誰のことか」について言えば、真ん中の68%の人が同じ意見を持っていれば、これは間違いなく「みんな」と言えるでしょう。
極端な2%の人の意見はもちろん「みんな」とは言えません。さらに、それに続く16%の人の意見も、「みんな」と言うには無理があるでしょう。
ちなみに、社内で何か新しいことを始める場合、最初は「中立が68%、支持が16%、反対が16%」くらいになることが多いのです。さらに、その中に極端な支持と不支持がそれぞれ2%ずつ。
どうでしょう。実際に、組織内での意見分布はこんな感じであることが多い印象を受けませんか。
「2%は必ず反対意見が出る」と考えておけば、心の準備ができる
本当にそうかどうかはともかく、そう仮定することで、いろいろなメリットがあります。
一部の声の大きな人の極端な意見に対し「2%は絶対にそういう人が現れる」と考えれば、うまくスルーすることもできるでしょう。
また、大部分の人、つまり68%がなかなか意見を表明しないと知っていれば、あいまいな立場の人に対してイライラすることなく、どうすればこの人たちを動かすことができるか、考えることもできるでしょう。
一部の意見にいちいち過剰に反応していたら、人を動かすことなんてできません。正規分布や偏差値から俯瞰の視点を持つことで、冷静な判断ができるのです。
もちろん、あらゆる数字がこの正規分布のカーブを描く、というわけではありません。ただ、正規分布の考え方が多くの場合、とても説得力を持つことは事実です。
重要なのは、「わかるわけがない」と思考を止めてしまうのではなく、なんらかのヒントを元に数値化すること。正規分布の考え方もまた、その一助となるのです。
(斎藤広達著『数字で話せ』より一部抜粋・修正)
著者紹介:斎藤広達(さいとう・こうたつ)
シカゴ大学経営大学院卒業。ボストンコンサルティンググループ、ローランドベルガー、シティバンク、メディア系ベンチャー企業経営者などを経て、経営コンサルタントとして独立。その後、上場企業の執行役員に就任し、EC促進やAI導入でデジタル化を推進した。現在は、AI開発、デジタルマーケティング、モバイル活用など、デジタルトランスフォーメーションに関わるコンサルティングに従事している。
数字で話せ
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