前日については、米・5月ISM製造業景況指数が52.1と前月の52.8から悪化し、2016年10月以来2年7カ月ぶりの低水準を付けたこともドル売り要因ですが、何よりもFOMCで投票権を有するブラード米セントルイス連銀総裁が「近く利下げが適切になる可能性がある」との見解を示すと、ドル売りが加速し、ドル円は一時ドル円は107.887円まで下値を拡大しました。注目すべきは、ウィリアムズ・NY連銀総裁とパウエル・FRB議長の講演が本日予定されており、前日のブラード米セントルイス連銀総裁のようにハト派寄りの発言をするのであれば、米金利低下が主導し、さらなるドル売りへと発展しそうです。
米中貿易戦争の激化が、現在のリスク回避、そしてドル売りマーケットの発端ですが、対メキシコについても制裁関税を課すとの表明にてドル円の上値が決定的に重くなっています。また、ドルのみならず制裁の対象となったメキシコペソについても、一時5.442円まで下値を拡大しており、この水準は2019年1月3日のフラッシュクラッシュ以来となります。今回のリスク回避の動きについては、世界的な景気不安が根底にあることもあり、根本的な解決がされないまでは、積極的なリスク回避の巻き戻しには至らない公算です。
ユーロについては、ドイツの連立与党の一角である社会民主党(SPD)のアンドレア・ナーレス党首が欧州議会選挙の敗北の責任をとる形で辞任を表明しており、メルケル政権の基盤が大きく揺らぎ始めています。また、英国の次期首相の最有力候補であるボリス・ジョンソン前外相は、合意があってもなくても10月31日にEUを離脱すると表明しており、各国に火種が点在しています。現状はリスクオフの動きからドルの独歩安に移行していますが、この状況が継続するようであれば、再度リスクオフの動きに回帰し、ドル円を筆頭としたクロス円などは総じて下落する可能性があります。
今後の見通し
本日は、豪中銀(RBA)政策金利が予定されています。市場コンセンサスとしては、現状の1.50%から1.25%に0.25%引き下げになっており、焦点としては、追加利下げが何回あるかという点に絞られそうです。一部では、0.75%まで利下げが続くとの見方もあるため、今回の利下げは想定内であり、今後の利下げ示唆がない場合は目先買い戻しの動きが強まりそうですが、利下げ示唆がある場合は、再びマーケットは急速に織り込む動きを見せ、豪ドルの上値を重くしそうです。また、豪ドル円の上値が重くなることにより、ドル円の上値も抑えられる形になりそうです。
トランプ大統領が制裁関税を乱発したことにより、結果として同大統領が望んでいたFRBの利下げという状況が現実味を帯びています。2020年11月の大統領選挙での武器と目論んでいるニューヨーク株式市場の支援のため、利下げ圧力を強めていましたが、今回の利下げは明らかに貿易摩擦による経済悪化が原因のためであり、FRBの利下げが積極的な株高を演出するかは疑問符が付きます。制裁関税、そしてFRBの利下げを経ても、株高にならない場合は、トランプ大統領も制裁関税の手を緩めそうですが、目先はドル売り材料が目白押しになっています。
本日のRBA政策金利発表が利食いのタイミングか
米中貿易戦争の激化に加え、トランプ政権が対メキシコでも厳しい関税方針を表明したため、リスク回避の動きが強まっています。本日は、このイベントのために豪ドル円をショートにした豪中銀(RBA)政策金利が予定されています。利食いのタイミングであると捉え、76.30円での豪ドル円ショート、利食いについては、75円割れを想定し、74.50円付近を利食い目途を継続、損切りについては75.80円に利食いの逆指値を設定します。
海外時間からの流れ
ブラード米セントルイス連銀総裁は、もともとハト派寄りのメンバーではありますが、利下げの可能性を示唆したことは、当然ながらドル売りへ直接結びつく結果となりました。米30年債利回りは、2.52%台とFF金利誘導目標を上回っていますが、短期の債券利回りなどは総じてFF金利誘導目標を下回り、超過準備預金金利(IOER)の2.35%をも下回っているため、年内1度でなく2度の利下げを示唆しています。今後、FRBメンバーから利下げについて言及がある度に、マーケットは急速にFRBの利下げを織り込む動きを見せそうです。
今日の予定
本日は、豪中銀(RBA)政策金利、英・5月建設業PMI、ユーロ圏・5月消費者物価指数(速報値)、ユーロ圏・4月失業率、米・4月耐久財受注(確報値)、米・4月製造業受注(前月比)などの経済指標が予定されています。要人発言としては、ロウ・豪準備銀行(RBA)総裁、ウィリアムズ・NY連銀総裁、パウエル・FRB議長、ブレイナード・FRB理事の講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。