前日については、東京時間にてドル円は一時107.849円を示現するなど、約5か月ぶりの安値を付けましたが、海外市場では、中国商務省が「貿易摩擦は対話によって解決するべき」との声明を出したほか、メキシコのロペスオブラドール大統領が米国との移民問題について「トランプ米大統領が設定した期限の10日より前に米国と合意が得られる」「協議は上手くいっている」との見通しを示したとの報道もあり、NYダウが大幅反発し、その流れは本日の日経平均株価にも反映されており、貿易摩擦を巡る過度な警戒感が後退しています。

米国内でも、米上院共和党の有力議員らは、トランプ大統領が提案した対メキシコ制裁関税について、同党は支持しない可能性があると警告しています。共和党のマコネル上院院内総務は、対メキシコ関税を無効化するための採決を行うかという質問には直接答えてはいませんが、「実施されないことを望んでいる」と述べており、民主党上院のシューマー院内総務も、トランプ大統領が発動の手続きを進めれば、議会では関税を無効化する決議の採択に向けた動きがあるとの見解を示しています。ここにきて、対メキシコへの制裁関税が覆る可能性があり、直近のリスク回避の巻き戻しが強まるかもしれません。

ブラード米セントルイス連銀総裁が利下げを示唆したことにより、俄然パウエル・FRB議長の発言に注目が集まっていましたが、「FRBは貿易動向の影響を注視する」「FRBは景気拡大の維持のため適切に行動する」「経済は成長し失業率は低い。インフレは安定している」などの見解を示すにとどまり、ドルの重しにはなるも、市場の利下げ期待を満足させるような内容にはならなかったため、下値も限定的になりました。ここで、対メキシコへの制裁関税が覆されれば、週末の雇用統計の結果も気になるところではありますが、一旦ドルは買い戻されそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

RBAに先立って利下げを行ったRBNZから、マクダーモット総裁補佐の発言として「近い将来まで金利は現在の水準が維持されるだろう」との見解が示され、追加利下げについては近い将来は予定していないとの思惑により、NZドルが買われやすい状況になっています。既に市場は追加利下げを織り込む動きを見せていたため、今後もNZドルの買い戻しが強まる可能性があります。また、RBNZが一度の利下げで金利を当面据え置くことを示唆していることが、RBAにおいても一度の利下げで一旦金利を据え置くのではないかとの期待感もあり、NZドルに連れ高となるかたちで豪ドルも買われやすい状況になる可能性が大いにあります。

パウエルFRB議長の発言内容が、市場が期待したほど利下げに言及するものでなかったことで、ドル売りに歯止めがかかっていますが、従来の金融政策に対する「忍耐強い様子見」スタンスに言及しなかったことは確かであり、急速な織り込みにはならないと考えられるものの、利下げ観測が高まっていることは気にする必要がありそうです。

トランプ大統領が、「国際経済緊急権限法(IEEPA)」に基づく大統領令により、6月10日にメキシコに対して5%の制裁関税を発動すると宣言し、本日5日が交渉期限となっています。5日には、ポンペオ米国務長官とエブラルド・メキシコ外相が会談する予定となっているため、10日より前に米国との合意となれば、メキシコペソのみならず、ドルについても大きく買い戻されそうです。

RBAからの次の利下げタイミング待ち

豪中銀(RBA)政策金利では、事前の予想通り0.25%の利下げを行いましたが、更なる利下げに関して詳細が説明されなかったことで、一旦買い戻しの動きが出ています。逆指値設定までの上昇ではありませんでしたが、総合的に考えると、下落バイアスが出ていると考えられるため、一旦この水準までは様子見とします。76.30円での豪ドル円ショート、利食いについては、75円割れを想定し、74.50円付近を利食い目途を継続、損切りについては75.80円に利食いの逆指値を設定します。

海外時間からの流れ

0.25%利下げを行ったRBA(豪準備銀行)ではあるものの、ロウRBA総裁が追加利下げの可能性を示唆しているものの、明確に次の利下げ、そして利下げの回数を示さなかったことで、一旦豪ドルは買い戻しの動きになっています。6月28-29日の大阪サミットでの米中首脳会談に向けたカウントダウンが始まっていますが、多少時間的猶予があるため、まずは対メキシコへの制裁関税の行方が、目先の重要事項になりそうです。

今日の予定

本日は、英・5月サービス業PMI、ユーロ圏・4月小売売上高、米・5月ADP民間雇用者数、米・5月ISM非製造業景況指数、ベージュブック(地区連銀経済報告)などの経済指標が予定されています。要人発言としては、ラムスデン・英中銀副総裁、クラリダ・FRB副議長、ボウマン・FRB理事、ボスティック・アトランタ連銀総裁の講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。