前日については、欧州委員会がイタリアに対してEUの財政規則違反による是正手続き開始を勧告したことを受け、ユーロドルが1.13ドル付近から1.1220ドル付近まで急落する動きとなりました。報告書には、イタリアが債務削減について、EU財政ルールに基づいた十分な進展が見られないことから、制裁措置が正当化される旨が記されており、イタリアの来年度の債務はGDP比で135.2%に拡大することが予想されています。サルビーニ副首相とディマイオ副首相は、EUの財政ルールを破るのかどうかを決める必要がありますが、状況によっては問題の長期化が懸念されます。

米国の経済指標では、米・5月ADP民間雇用者数が市場予想18.5万人増が2.7万人増になっており、およそ9年ぶりの低水準を記録しており、今週末に予定されている米雇用統計の数字においても、ある程度悪化したものがでてくるのではないかとの思惑が強まっています。逆に、米・5月ISM非製造業景況指数が市場予想55.4が56.9になったことで、ドルに関しては安値圏から反発する形になりましたが、FRBの方針として利下げ方向に傾きつつあるのは、既にパウエル・FRB議長などの発言からも読み取れますが、労働市場の悪化となれば、利下げタイミングが一層早まる可能性があるため、明日の米雇用統計への注目は非常に高いものになりそうです。

また、地区連銀経済報告(ベージュブック)では、米国の経済活動は回復しているものの、米企業は貿易摩擦が事業活動の重荷になることを懸念しているとの認識を示しました。この報告書は、5月24日までの情報をもとに作成されており、トランプ大統領がメキシコへの関税導入を表明した後の市場混乱を映していないため、今回はあまり材料視されませんでしたが、米国・メキシコの協議が合意に至らない場合は、次回のベージュブックの報告により、ドル売りが加速するかもしれません。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

本日は、ECB理事会が予定されています。米中貿易戦争の影響により、ECBメンバーによる経済予測は下方修正されそうですが、こちらについては既に織り込まれているため、それほど影響はないものと思われます。ポイントとしては、優遇金利が適用されるTLTRO3になりそうです。ECBは、必要であれば一段の緩和に向けた現実味のある政策オプションがあることを市場に納得させ、伝達メカニズムが損なわれないよう保護することで、緩和政策スタンスの維持に努める方針だとは思いますが、足元のフォワードガイダンスはこれ以上の利下げを排除しています。意思決定に時間を要する可能性が高いため、TLTRO2と同等の内容になりそうです。その場合は、大きな動きには発展しない見通しですが、利下げ余地を残すようなことになれば、ユーロは下値を拡大する動きを見せそうです。

米国とメキシコの協議については、本日も引き続き行われますが、エブラルド・メキシコ外相は「明日の継続協議について楽観視している」「今日の会談で全ての問題が解決との期待はなかった」などの発言をしていることから、本日のアジア時間早朝の合意得られずの報道への影響は限定的になりそうです。米国側としても、ナバロ米大統領補佐官(通商製造政策局長)が「対メキシコ関税発動は必要ない可能性」と述べ、グラスリー米上院財政委員会委員長が「米国はメキシコに関税を課さない見通し」との見解を示していることから、10日目前ではありますが、比較的市場は落ち着いて事の成り行きを見ているようです。

次の戦略はEURショート

76.30円での豪ドル円ショートについては、75.80円の利食いの逆指値にて利食い、手仕舞です。RBAから今後の利下げが示唆されるかと思われましたが、一旦様子見姿勢を示唆したことから、買い戻しが強まりました。今後の注目通貨としてはユーロになりそうです。既に下落基調を強めていますが、EUの財政規則違反による是正手続き開始報道による急落ポイントがユーロドルで1.13ドル付近であることからも、この水準は上値目途として意識されそうです。1.1320ドル付近上抜けを撤退目途に、1.1260ドル付近まで引き付けの戻り売り戦略。利食いについては、1.12ドル下抜けは通過点であると考え、1.1160ドル付近を利食いと考えます。

海外時間からの流れ

本日のアジア時間早朝に、CNBCが昨日行われた米国とメキシコとの会談で、関税・移民問題で合意できなかったと報じたことにより、メキシコペソが急落しました。事前に合意できる可能性が示唆されていただけに、マーケットはネガティブサプライズと捉えました。また、格付け会社フィッチ・レーティングスはメキシコをBBBに格下げし、見通しを安定的に変更し、同じく格付け会社ムーディーズは同国の見通しを安定的からネガティブに変更したことなどもメキシコペソ売りを強めた原因だと考えられます。本日も、引き続き米国、メキシコとの協議が継続される見通しです。ただ、事前の楽観論通り、合意に達することができれば、メキシコペソのみならず、一気にリスク回避の巻き戻しが強まりそうです。

今日の予定

本日は、独・4月製造業受注、ユーロ圏・第1四半期GDP(確報値)、欧州中銀(ECB)政策金利、米・新規失業保険申請件数、米・4月貿易収支などの経済指標が予定されています。要人発言としては、黒田・日銀総裁、カーニー・英中銀総裁、ドラギ・ECB総裁、カプラン・ダラス連銀総裁、ウィリアムズ・NY連銀総裁の講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。