株式相場は一時に比べ落ち着きを取り戻しています。6月第1週(6/3~6/7)の日経平均株価は週足ベースで5週間ぶりの上昇になりました。FRB(米連邦準備制度理事会)の主要メンバーが政策金利引き下げの可能性を示唆する発言を行い、それを好感した米国株が急反発し、株価が下がっていた東京市場でも押し目買いが優勢となりました。
ただ、米国と中国の対立は単に「貿易摩擦」の域にとどまらず、企業を巻き込んだ覇権争いの様相を呈しています。株式市場では今後も波乱含みの展開が続く可能性がありそうです。
そうした中、東京株式市場では、予想配当利回りが高い銘柄が増えています。多くの企業が株主還元を重視すべく配当を増やす傾向にありますが、株価はそれ程上昇していないため、高い配当利回りを期待できる銘柄が増えることになります。「日本株投資戦略」では、これら予想配当利回りが高い銘柄でポートフォリオを作り、それを保有して株式相場の本格上昇を待つという投資戦略も有望ではないかと考えています。
「予想配当利回り5%超」の「有名企業ポートフォリオ」はコチラ!?
表1は以下の条件を満たす東証1部銘柄を、予想配当利回り(市場予想)の高い順に並べたものです。
(1)東証1部上場銘柄であること
(2)時価総額300億円以上の銘柄であること
(3)「証券・商品先物」および「その他」に属す銘柄以外であること
「スクリーニング」と呼べる程の細かい条件設定とはなっていないと思います。抽出された銘柄は我が国の株式市場に上場する主力銘柄を、予想配当利回りの高い順に並べたものと表現して、ほぼ差し支えないと思います。
配当や株主優待の側面から、株式投資の対象となる銘柄を選ぶ場合「何をやっている会社なのかよくわからないし、長期保有して大丈夫なのか想像がつきにくい」ということがよく問題になります。こうした不安を無視して投資してしまうと、結局は大きな材料がないにもかかわらず、株価が下げた時に売ってしまい、損をしてしまうというパターンにつながりやすくなります。
表1の銘柄は時価総額を一定基準以上の大きさに設定していますので、我が国の株式市場を代表する企業が多く含まれています。かつては、このような有名企業の多いポートフォリオは高い配当利回りを期待しにくいのが普通でしたが、今は、十分高い配当利回りを期待できることになります。
日本たばこ産業、出光興産、ソフトバンク、あおぞら銀行、SUBARU、長谷工コーポレーション、住友商事、日産自動車、キヤノン、オリックスなど株式市場に関心の薄い方でさえも、その名を聞いたことのある有名企業と言えるでしょう。これらの銘柄は、株式市場での経験が浅めの投資家の方でも、投資に当たっての精神的ハードルは低いかもしれません。
無論、多くの方が社名を知っている有名企業であっても、株価変動リスクはあり、株価の値下がりで損失計上につながるリスクから逃れることはできません。しかし、表1に掲載された銘柄は例外なく、最低投資は100株で、比較的限られた資金でも投資が可能です。表の上位10銘柄すべてを100株ずつ投資しても合計金額は200万円弱、20銘柄すべてでも、350万円弱(いずれも諸コストを除く単純計算ベース)で済む計算です。
資金を1銘柄に集中するのではなく、多くの銘柄に分散投資し、高い配当利回りに期待しながら、株式相場の本格上昇を待つという投資戦略も有望ではないかと「日本株投資戦略」では、考えています。
表1:東証1部で予想配当利回りの高い銘20銘柄はコチラ!?
コード / 銘柄 / 株価(6/6) / 年間1株配当金会社予想 / 年間1株配当金市場予想 / 今期予想配当利回り会社予想 / 今期予想配当利回り市場予想
<7224> / 新明和工業 / 1,315 / 87.00 / 87.50 / 6.62% / 6.65%
<2914> / 日本たばこ産業 / 2,481.0 / 154.00 / 154.47 / 6.21% / 6.23%
<8078> / 阪和興業 / 2,795 / 150.00 / 175.00 / 5.37% / 6.26%
<5019> / 出光興産 / 2,941 / 160.00 / 182.22 / 5.44% / 6.20%
<5857> / アサヒホールディングス / 2,108 / 120.00 / 125.00 / 5.69% / 5.93%
<9434> / ソフトバンク / 1,429.5 / 85.00 / 83.77 / 5.95% / 5.86%
<8304> / あおぞら銀行 / 2,616 / 156.00 / 152.73 / 5.96% / 5.84%
<7270> / SUBARU / 2,608.5 / 144.00 / 144.33 / 5.52% / 5.53%
<4188> / 三菱ケミカルホールディングス / 724.9 / 40.00 / 40.15 / 5.52% / 5.54%
<7245> / 大同メタル工業 / 627 / 35.00 / 34.00 / 5.58% / 5.42%
<3284> / フージャースホールディングス / 602 / 35.00 / 32.50 / 5.81% / 5.40%
<1808> / 長谷工コーポレーション / 1,113 / 60.00 / 60.00 / 5.39% / 5.39%
<8053> / 住友商事 / 1,603.5 / 90.00 / 85.86 / 5.61% / 5.35%
<7201> / 日産自動車 / 749.9 / 40.00 / 40.00 / 5.33% / 5.33%
<8002> / 丸紅 / 691.7 / 35.00 / 36.25 / 5.06% / 5.24%
<8591> / オリックス / 1,543.5 / 未公表 / 80.26 / 未公表 / 5.20%
<7751> / キヤノン / 3,098 / 未公表 / 160.00 / 未公表 / 5.16%
<5411> / ジェイ エフ イー ホールディングス / 1,503.0 / 未公表 / 77.31 / 未公表 / 5.14%
<4182> / 三菱瓦斯化学 / 1,387 / 70.00 / 70.50 / 5.05% / 5.08%>
<4544> / みらかホールディングス / 2,588 / 130.00 / 130.06 / 5.02% / 5.03%
※会社公表データ、およびBloombergデータを用いてSBI証券が作成。市場予想はBloombergが集計した市場コンセンサス
【ご参考】6月に「中間配当」の権利が確定する12月決算好配当期待銘柄
表1の銘柄は日本たばこ産業とキヤノンを除き、3月決算銘柄になっています。3月決算銘柄の予想配当利回りは、9月中間配当と翌年3月末の期末配当をすべて受け取ったと仮定した場合の予想利回りになっています。株価や配当政策によって、日々変動しますので、注意が必要です。
株式投資の総合的なリターンはこうした配当収益に加え、株価の変動を加味して決まることになります。高い配当利回りが期待される銘柄であっても、値下がりしてしまった場合は、総合的なリターンがマイナスになることもあります。
ご参考までに、表2は12月決算銘柄について、予想配当利回りが高い銘柄をご紹介するものです。以下の条件を満たす銘柄を予想配当利回りの高い順に並べたものが表2となります。
(1)東証1部上場銘柄であること
(2)時価総額300億円以上の銘柄であること
(3)「証券・商品先物」および「その他」に属す銘柄以外であること
(4)6月末(権利付最終日は6/25)に「中間配当」が予定されている銘柄であること
(5)市場予想の配当利回り(年間)が3%以上期待される銘柄であること
(6)第1四半期(2019年1~3月期)の営業増益率が通期の会社予想営業増益率を上回っていること
他の収益予想同様、上場企業の業績予想を行う主体は様々あります。ここでは会社予想数値と市場予想数値を参考にしています。12月決算の予想配当利回りは、6月末の「中間配当」と12月末の「期末配当」をすべて受け取ったと仮定した場合の利回りです。例えば、日本たばこ産業は、6月末77円、12月末77円の計154円を受け取ったとした場合に、6/6(木)の終値2,481円に対して何%になっているのかを示したものになります。
なお、上記の(6)については、この条件を満たすことによって、今後業績予想が下方修正される可能性の少ない銘柄を抽出することを狙っています。ただ、すでに業績予想を下方修正した東海カーボンが含まれているように、現在、企業業績全般が踊り場を迎えており、こうしたリスクを完全に回避することは難しいと思われます。
表2の銘柄は、他にも業績変動リスクが大きい銘柄が含まれている可能性がありますので、注意が必要かもしれません。むしろ、すべての決算期の銘柄(表1の銘柄)を対象に、予想配当利回りの高い銘柄の押し目を待つ投資戦略も有望ではないかと「日本株投資戦略」では、考えています。
表2:【ご参考】6月に「中間配当」の権利が確定する12月決算好配当期待銘柄
コード / 銘柄 / 株価(6/6) / 会社予想1株当配当金6月末 / 会社予想1株当配当金通期 / 市場予想1株当配当 / 予想配当利回り会社予想 / 予想配当利回り市場予想
<2914> / 日本たばこ産業 / 2,481.0 / 77.00 / 154.00 / 154.47 / 6.21% / 6.23%
<3436> / SUMCO / 1,199 / 25.00 / 未公表 / 55.02 / 未公表 / 4.59%
<5301> / 東海カーボン / 1,076 / 24.00 / 48.00 / 48.00 / 4.46% / 4.46%
<4004> / 昭和電工 / 3,060 / 50.00 / 130.00 / 130.00 / 4.25% / 4.25%
<6141> / DMG森精機 / 1,417 / 30.00 / 60.00 / 53.90 / 4.23% / 3.80%
<5105> / TOYO TIRE / 1,418 / 20.00 / 45.00 / 45.63 / 3.17% / 3.22%
※会社公表データ、およびBloombergデータを用いてSBI証券が作成。市場予想はBloombergが集計した市場コンセンサス。
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部
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