預貯金よりも多くのリターンが期待できる資産運用。近年は売買手数料の安いネット証券会社が多く登場するなど、資産運用は以前よりも身近になったといえるかもしれない。「そろそろ投資をやってみたい」と考えている方も、たくさんいるのではないだろうか。今回はそんな資産運用のビギナーが押さえておきたいリスクとの付き合い方について解説する。
リスクとリターンは表裏一体
資産運用で用いる株式・債券・投資信託などの金融商品は、預貯金などとは異なり、元本が変動するリスクがある。もちろん、プラスにもマイナスにも変動するため、元本変動のリスクは、リターンと表裏一体の関係だといえる。大きなリスクを取るほど、より大きなリターンを望めるわけだ。
しかし、ひと口にリスクを取るといっても、資産運用ビギナーにとっては、自分自身がどの程度のリスクを取ればいいのか見極めるのは難しいのではないだろうか。元本が保証されない資産運用において、最も大切なのはこの「リスクとの付き合い方」なのだ。
あなたはなぜ資産運用が必要なのか?
資産運用のリスクとうまく付き合うために大事なのは、自分自身に「どの程度のリターンが必要なのか」を明確にすることだ。具体的には「何のための資金が、いつまでに、いくら必要で、どれくらいの金額が不足するのか」をしっかりと把握する必要がある。
一般的に人生の三大支出といわれているのは、マイホームの取得費、子供の養育費、老後資金の3つだ。このうち、マイホームの取得や子供の養育費は、金融機関などからのローンを利用することで、当面の資金をまかなえるが、最後に必要となる老後資金に関しては、なかなかローンが利用できない場合が多い。年を重ねれば、定年退職などにより収入は減少し、身体面から新たな職に就くこともなかなか難しいだろう。老後が訪れたときに、生活資金が不足していると、いわゆる「老後貧困」と呼ばれる状態になりかねない。
今後の人生におけるキャッシュフローを把握しておけば、その準備のために、「節約して支出を減らして貯金を殖やす」「より収入の多い仕事を選ぶ」「資産運用により不労所得を得る」といった方法が取れるようになる。ライフプランシート(生涯の具体的な資金計画)を作成して、形成したい資産規模や不足する金額を補うために必要な金融商品のリターンを把握し、必要最小限のリスクを取るようにすることができれば理想的だ。
資産運用には欠かせない金融商品のリスクと付き合い方
将来的に予想される資金不足分をまかなうためのリターンを投資で得るには、リスクを取ることも必要となるだろう。実際の金融商品は、リスク・リターンについて、どのような傾向を持っているのだろうか。
債券は、利息という安定的な収入を得やすく、元本の変動幅も比較的小さいため、ローリスク・ローリターンの金融商品といわれている。一方、株式は企業の一部を所有し、得られた事業収入の一部を受け取る権利だ。その企業の将来性や収益力などによって、元本の価格が変わりやすく、比較的ハイリスク・ハイリターンとなっている。
外貨建て債券や外国企業の株式の場合は、為替による影響が加わるため、国内の商品よりもリスク・リターンが大きくなる傾向がある。
こうした金融商品のどれか一つだけに集中投資してしまうと、その投資対象に倒産などが生じた場合、甚大な損害を被ってしまう恐れがある。そこで国内外の複数の金融資産に幅広く投資する「分散投資」を行うことで、より効果的にリスクを抑えられる可能性が高くなるのだ。
金融商品のリスクについての知識は、投資経験者ほど広くなっていく。一方、資産運用の初心者は、自分自身の取れるリスクに関して、ハッキリとしたガイドラインを持っていないことも多く、時に過大なリスクを背負った資産運用を行ってしまうこともあるので注意しよう。
資産運用は人生において必要な資金を得るための手段であり、生涯を通じたライフプランに基づいて投資方針を決定することが大切だ。リスクを踏まえて投資商品を選び、国内外の幅広い金融商品を資産に組み込む「分散投資」を行うことが、着実な資産運用への近道かもしれない。