前日については、米・5月消費者物価指数(前月比/前年比)が市場予想+0.1%/+1.9%に対して、+0.1%/+1.8%となり、市場予想を下回ったことで、米長期金利の低下を招き、一時ドル売りが強まりました。ただ、2.1066%前後まで低下した米10年債利回りが2.1413%前後まで低下幅を縮めたこともあり、ドル円は108.20円を下抜けることなく、自律反発する動きになりました。

また、トランプ大統領が「ノルド・ストリーム2計画(ロシアからバルト海経由で天然ガスを直接ドイツに送るパイプライン)阻止のための制裁を検討している」と述べ、ドイツに対しエネルギーでロシアに依存しないよう警告すると、米独関係悪化への警戒感からユーロ売り・ドル買いが強まったことも、ドルの買い戻し要因として考えられます。

米国と中国の貿易戦争が、世界経済に及ぼすマイナス影響の懸念は依然として消えていません。また、ドイツ経済は輸出への依存が大きいことから、米中貿易戦争の長期化はドイツ経済へも波及する恐れがあり、世界的にリスク資産が売られる傾向が強まりそうです。また、トランプ大統領がドイツに対しての内政干渉とも捉えかねないことに突如言及したこともあり、トランプ大統領のツイートには引き続き注意が必要になりそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

ポンドについては、英与党・保守党の次期党首の有力候補と目されるボリス・ジョンソン前外相が「合意なきEU(欧州連合)離脱を目指していない」と述べたことを受けて買いが先行し、一時ポンドドルが1.27577ドルまで上値を拡大しました。ただ、英議会下院は、EUからの「合意なき離脱」の阻止に向けて議会で審議時間を確保するための動議を反対多数で否決したため、「合意なき離脱」阻止に向けた議会手続きの最初の段階でつまずいたことから、ポンドが軟調になりました。

直近では、米国、中国、欧州、英国がマーケット要因になることが多いですが、徐々にアジアの状況が意識されてくるかもしれません。香港で「逃亡犯条例」改正案の撤回を求めて大規模なデモが行われ、一部で警官隊と衝突したとのヘッドラインが流れており、香港株式市場への影響が懸念されています。また、米国の同盟国のひとつである韓国が、文在寅大統領の失政で経済が破綻に近い状況に向かいつつあることもリスク回避要因の一つです。最大の原因は、最低賃金を全国一律に30%も引き上げたことにより、企業経営が悪化、結果として失業率が悪化していることです。状況次第では、アジア時間を中心にリスク回避の動きが強まる可能性があるため、この点には注意が必要でしょうか。

G20サミットまでは、小動きが継続しそうだ

今週の動きをざっと見ても、上値は109円が意識され、かと言って、下値を攻める動きにも至っていません。108円台半ばが主戦場になりそうなため、引き続き利食い、損切りのラインは継続し、108.30円のドル円ロング、利食いは108.90円、損切りは107.90円に設定します。ただ、108.90円での利食いに達するようであれば、本来の戦略である途転売りを考えています。

海外時間からの流れ

豪・雇用統計が東京時間に発表され、新規雇用者数は1.6万人増予想から4.23万人増と、強い内容になったものの、失業率は5.1%予想から5.2%に悪化したことを受け、豪ドルが下落しました。引き続き、追加利下げ路線を払拭するような内容には程遠い状況であることが示されたため、引き続き、豪ドルについては上値の重い地合いになりそうです。

今日の予定

本日は、米・5月輸入物価指数、米・新規失業保険申請件数などの経済指標が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。