バブル期の1990年、郵便局の定期貯金の金利は6.33%に達した。しかし、現在の定期預金などの無リスク性資産では、資産を大幅に増やすことは難しい。定年退職後に老後の蓄えが不足する「老後貧困」も懸念されている中、注目されているのが資産運用だ。資産運用にリスクはつきものだが、実際どのようなリスクがあるのだろうか。

資産運用の8つのリスク

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(写真=GaudiLab/Shutterstock.com)

資産運用には、大きく8つのリスクがある。資産運用を始める前に知っておけば、慌てることなく、賢い投資ができるだろう。

1. 価格変動リスク――景気に大幅に左右される

投資のリスクと聞いて、最もイメージしやすいのが価格変動リスクだろう。債券、株式、不動産といった金融商品の価値は、金利動向や今後の景気予想などによって変動する。価格変動リスクとは、これらの商品を購入価格よりも安く売却することで損失を抱えてしまうリスクだ。

2. 金利リスク――金利が上がると損をすることも

たとえば、固定金利型債券は発行当時の金利で利息の支払いが固定されており、その後の金利が下落しても変わらないのが利点だ。しかし、逆に金利が上昇している場合は、より有利な条件で資産運用を行うチャンスを逃すことになる。

3. 信用リスク――国や企業が財政難になると元本を失う

金融商品の仕組みを担保しているもの(債券の発行体など)の信用の度合いにより生じるリスク。金利の支払いや元金の償還をしっかり受けられるかといった点が重要となる。なお、債務を履行してくれる信用度を客観的に示した「信用格付け」が、このリスクの評価基準となる。

4. 為替リスク――円高ドル安などで起こる

外貨建ての金融商品や保険において、為替変動によって損失を抱えてしまうリスクである。一般に金利と外国為替は密接な関係にあり、高金利通貨ほどインフレ圧力が強く、為替リスクが大きい。

5. 流動性リスク――売買したいときにできない

売却のチャンスが比較的乏しい商品(不動産や出来高の少ない株式など)で、売却や現金化に時間がかかったり、買い手に有利な条件での売却を余儀なくされたりするリスクのことだ。

6. インフレリスク――貨幣が紙切れになってしまう可能性

貨幣の価値が下がり、同様の商品やサービスを購入するのに、より多くの資金が必要となることで生じるリスク。国内では、旧新潟貯蓄銀行が1915年に募集した「100年定期預金」の例がある。この定期預金は、利率6%で複利運用され、100年経過時点で339倍になる。しかし、当時、小学校教員の初任給が10~20円程度という時代で、2015年に満期を迎えても、わずかの金額しか受け取れなかったというものだ。

7. カントリーリスク――国の信用性や安全が問題に

紛争などの政情不安や政治的混乱などの要因により、証券市場や為替市場にも混乱が生じた場合、そこに投資した資産の価値が減じる可能性があるというリスクである。その国の外貨が信用力を損なったり、国家が債務不履行になったりする恐れもあるので気をつけよう。

8. システマチックリスク――分散投資では防ぎきれない

金融市場そのものに存在するリスクで、投資家の感情、自然災害、政情不安、各国の経済政策や海外の株式市場の動向、経済成長率といった、あらゆる資産に影響を与えるさまざまな要因によってもたらされるリスクである。分散投資でこれを解消することは難しいとされ、資産運用には不可避のリスクといえる。ただ、異なる資産の分散投資によって軽減が可能といわれている。

リスクとリターンは表裏一体

資産運用には「リターン」と「リスク」があり、リスクが高いものほど、リターンが大きいというのが原則である。いわば表裏一体の関係だ。そこで資産運用におけるリターンについても説明しておこう。

・キャピタルゲイン 商品価格が上昇して得られるリターン

金融商品そのものの価値が上昇することで得られるリターンを指す。例えば、株式はさまざまな思惑によって日々、価格が変動する。市場予想を上回る良好な決算や斬新なサービスの発表などで、今後の成長期待が生じると、株式の価値が上昇することがある。この取得時よりも上昇した価値を持つタイミングで売却することで得られるリターンがキャピタルゲインだ。

・インカムゲイン 商品を保有することで得られるリターン

金融商品を保有することによって得られる利益を指す。債券による金利収入、株式の配当収入、不動産の家賃収入がこれにあたる。キャピタルゲインよりも比較的安定して収入を得やすくなっており、資金計画にも組み込みやすい特徴がある。

元本保証のない金融商品で資産運用を行うには、多くのリスクと付き合っていく必要がある。しかし、資産運用や金融商品の仕組みやリスクを、学校などで体系的に学ぶ機会は少ない。自分自身で資産運用のリスクを正しく理解し、収入を増加させる意識を持つことが、老後生活のクオリティーを高めるためにも必要といえよう。