前日については、NYダウが堅調だったこともあり、ドル円はNY時間に一時108.532円まで上値を拡大したものの、東京時間に付けた108.534円を上抜けることが出来ず、その後はじりじりと下落する動きになりました。下落した最大の要因は、ペルシャ湾における海上輸送の要衝、ホルムズ海峡で石油タンカー2隻が攻撃されたことについて、米国政府はイランに責任があると断定したことにあります。また、同様に5月のタンカー攻撃時も米政府はイランの関与を指摘しており、イラン側が反発するなど、米国とイランのさらなる関係悪化が懸念材料になっています。また、NYダウの上昇も、中東の地政学的リスクが高まったことから、シェブロンやエクソンモービルなどエネルギー株が買われ指数を押し上げたことが指摘されており、決してポジティブな株価上昇というわけではなかったようです。

上記問題については、トランプ大統領がイランを訪問している安倍首相に「感謝」しているとツイートしているものの、「米国がイランと取引をするかどうかを検討することさえも時期尚早」との考えを示しており、問題の長期化を暗に示していることも、ドルの上値を抑えている要因だと考えられます。

地政学的リスクという観点から見ると、米国とトルコの関係も注意する必要がありそうです。主な要因であるロシア製の地対空ミサイル『S400』の導入について、チャブシオール・トルコ外相は、「導入を撤回するつもりはない」と発言し、米国の導入撤回要求を受け入れない考えを示しました。エルドアン大統領も「すでに『S400』を購入しており、7月に納入される見込み」と発言しており、米国のトルコへの経済制裁が現実味を帯びてきており、トルコリラの下落を促しそうです。トルコリラ円で一時18.368円まで下値を拡大しており、制裁関連のヘッドラインが流れてくるようであれば、さらにリラ売りが加速しそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

英国の保守党は、党首選の第1回投票を実施しました。候補者は10名であり、結果として3名が脱落しました。7名が18日の第2回投票に進むことになりましたが、世論調査通りトップ通過したのは強硬離脱派のボリス・ジョンソン前外相で、次点が候補者の中では唯一の穏健派であるハント外相になっています。18日の投票で得票が32票以下の候補者は脱落し、18日に2名に絞りきれなかった場合には、19-20日に次のステップとなる投票が実施される予定です。2名を対象とした最終投票は7月22日の週になる予定ですが、第1回投票通り、強硬派のジョンソン氏と穏健派のハント氏との決戦であれば、市場は様子見姿勢を強めそうですが、ジョンソン氏同様に強硬派との一騎打ちになるのであれば、マーケットは早々にポンド売りに傾斜する可能性がありそうです。

マーケットは、来週のFOMC、そして月末のG20サミットに目が移っていることもあり、本日も引き続き様子見地合いが継続する見通しです。ただ、米雇用統計の悪化が示すように、米国の労働市場が不安視されており、その中で、本日は、米・5月小売売上高が発表されます。前月は-0.2%、今回の市場予想は+0.6%です。少々の経済指標の悪化では、ドル円は108円を下抜けないことは今週の動きで実証済みですが、本日の小売売上高が市場予想よりも悪化するようであれば、FRBの早期利下げ観測が強まり、ドル円は108円のラインを下抜けてくるものと思われます。

来週FOMC、月末のG20サミットまでは、小動きが継続しそうだ

今週の動きをざっと見ても、上値は109円が意識され、かと言って、下値を攻める動きにも至っていません。108円台前半では一定の底堅さも確認できるため、引き続き利食い、損切りのラインは継続し、108.30円のドル円ロング、利食いは108.90円、損切りは107.90円に設定します。ただ、108.90円での利食いに達するようであれば、本来の戦略である途転売りを考えています。

海外時間からの流れ

豪州の労働市場の悪化、そして米中貿易戦争の激化、この2点に加えて、米国とイランの関係悪化が懸念されており、リスク資産通貨である豪ドルの売りが加速しています。国内経済状況に加え、外部要因でも豪ドルが売られやすくなっており、RBA(豪準備銀)の利下げスピードが速まるとの考えが強まれば、豪ドルはさらに下値を模索する展開になりそうです。

今日の予定

本日は、中国・5月鉱工業生産/小売売上高、トルコ・4月経常収支、米・5月小売売上高、米・5月鉱工業生産、米・5月設備稼働率、米・6月ミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)などの経済指標が予定されています。また、要人発言として、カーニー・英中銀総裁の講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。