前週末については、注目されていた米・小売売上高の内容が、前月比で+0.5%と、市場コンセンサスの+0.6%を下回ったものの、3月と4月の小売売上が大幅に上方修正されたことで、ドルの買い戻しが強まりました。特に、4月は当初発表の-0.2%から+0.3%に修正されており、米国の個人消費支出は第1四半期に鈍い動きとなっていましたが、今回の小売売上は、個人消費が第2四半期に一定のモメンタムを取り戻したことを示唆していると考えられます。

ただ、18-19日にFOMCが控え、月末にはG20サミットが控えていることもあり、ドル買いに大きく振れるような動きにはなりませんでした。G20サミットでは、トランプ大統領と中国の習近平国家主席が会談するのかどうか、そして、首脳会談でどのような話し合いになるのかなどが注目されていますが、ロス米商務長官が「G20サミットで米中首脳会談が行われても、重要な通商合意がまとまる可能性は低い」と発言していることもあり、過度な期待はできないかもしれません。

また、週末に行われた英与党・保守党党首選の第1回の投票では、強硬離脱派のボリス・ジョンソン前外相が2位に2倍を超える大差をつけてトップに立ちました。ジョンソン氏は、インタビューで「10月31日までにEUを離脱する」と宣言しており、18日の第2回投票に臨みます。18日でも大差が着くようであれば、決選投票においてもジョンソン氏が勝利するだろうとの思惑から、ポンド売りが強まりそうです。どちらにしても、英国のEU離脱問題の先行き見通しが明るくなるということはなさそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

全体的にリスク回避の動きが広がるなか、特に目立つのがオセアニア通貨の軟調さです。特に、豪ドルについては、豪州の大手銀行のレポートにて「RBAは11月に政策金利を0.75%まで引き下げると予想」との見解が示されたことから、急速に利下げを織り込む動きを見せています。国内経済も、労働市場の悪化が代表されるように苦戦を強いられ、米中貿易戦争が落ち着きを見せないことから、内部的に外部的にも厳しい環境にあります。余程のポジティブサプライズが出てこない限りは、戻りがあっても、シンプルに戻り売り戦略が機能し、上値の重さが継続しそうです。

米・小売売上高の過去分が修正されたこともあり、一旦ドルの買い戻しが強まっていますが、FRBの利下げを回避するほどの内容には至っていないと考えられます。米・小売売上高の結果を受けて、今月内での利下げの可能性は大きく後退したと捉えることもできますが、コンセンサス通りに考えると、6/18-19にてFOMCで利下げが協議され、7月のFOMCで利下げとなる可能性が高そうです。8月にはジャクソンホール会議が控えていることもあり、早々に利下げを行うのであれば、7月の可能性が高いと考えられます。

今週のFOMC、月末のG20サミットに既に目が移ってしまっていることもあり、ドル円に関しては、引き続き108円台、それも108円台半ばでの動きが中心のマーケットになりそうです。今週のFOMCにて利下げ協議なら108円下抜け、協議をしないなら109円台回復という動きも期待できますが、大きな方向性を決める一手にはならず、その後は次第に108円台に収斂する展開になるのではないでしょうか。

FOMCまでは基本様子見姿勢継続か

前週は、米国の経済指標だけでも強弱様々な内容が公表されましたが、それでも108円台での動きが続いていることを鑑みると、それなりに大きなイベントを消化しない限りは、このレベルでの動きが中心になりそうです。代わり映えしませんが、108.30円のドル円ロング、利食いは108.90円、損切りは107.90円に設定します。ただ、108.90円での利食いに達するようであれば、本来の戦略である途転売りを考えています。

海外時間からの流れ

豪ドル売りが顕著になっていますが、今週は18日にRBA議事要旨が予定されています。ただ、この議事要旨は雇用統計発表前だったこともあり、市場への影響は限定的でしょうか。前回と同様に、注目は20日のロウ・RBA総裁の講演になりそうです。月末のG20サミットにて米中通商協議が行われる予定であるため、それまでは豪ドルの一方方向への動きは抑制されそうですが、G20サミットでも豪ドル売りに歯止めがかからないのであれば、本格的に豪ドル急落のシナリオになるかもしれません。

今日の予定

本日は、トルコ・3月失業率、米・6月NY連銀製造業景気指数などの経済指標が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。