昨日の欧州市場では、逃亡犯条例改正案を巡る香港でのデモが、株式市場にさほど影響しなかったこともあり、クロス円が堅調に推移し、つれ高となったドル円は一時108.72円まで上昇しました。その後、米10年債利回りが低下を始めたのにつれて値を戻すなか発表となった米6月NY連銀製造業景気指数は-8.6と、予想11.0、前回17.8を大きく下回り、2016年10月以来の水準に悪化しました。しかし、週央のFOMCを控え様子見ムードが広がる中、マーケットの反応は鈍く、既に2.11%台から低下していた米10年債利回りも2.08%台で下げ止まり、ドル売りの動きも限定的なものとなりました。
英国では本日2回目の投票を迎える保守党党首選において、党首選を撤退した残留派のハンコック氏と、第一回投票で敗退が決まってマクベイ氏がともにジョンソン氏支持を表明しました。これにより離脱強硬派であるジョンソン氏優勢の流れがさらに強まると見られ、合意なき離脱への懸念からポンド売りが強まりました。ポンドドルは欧州時間には先週安値を下回ると、NY午後には1月3日以来の水準となる1.2535ドル付近まで下げ幅を広げました。
また追加利下げの思惑から豪ドルも終日弱含みで推移し、NY時間には0.6850ドル付近まで下落しました。本日午前に発表されたRBA議事要旨で追加緩和の可能性が高いことが示されたことから豪ドルは急落、0.6850ドルを割り込み0.6830ドル台まで下値を広げています。
一方ユーロドルはユーロクロスの買いに支えられ、比較的底堅く推移しましたが、1.12ドル台半ばは重く、先ほど17時過ぎ、ECB年次フォーラムでドラギECB総裁が追加利下げと量的緩和策に言及したことから1.12ドルちょうど付近まで急落しています。
今後の見通し
今回のFOMCでの利下げ予想は低い確率に止まっており、マーケットは声明文やパウエル議長の記者会見で、次回7月利下げに向けての地ならしとなる材料が出てくるかどうかに注目しています。ソフトデータが落ち込み始めている一方で、ハードデータは比較的堅調な結果となっている中、FRBがどのような判断をするのか予断を許しません。利下げに慎重な姿勢が示された場合には、米金利の上昇に伴いドル買いが強まることが予想され、各国要因で売られている欧州通貨、オセアニア通貨のダウンサイドへの動きが加速するかもしれません。
ドル円は108円台で膠着も、リスクはダウンサイド
ユーロドル、ポンドドル、豪ドル、NZドルと軒並み対ドルで値を崩す中、ドル円の上値は非常に重く感じます。欧州通貨、オセアニア通貨の更なる下落が続くようであれば、クロス円の売りを通じてドル円の売りへと波及する可能性も否めません。現在の動きが必ずしもドル買いの動きではないことから、108.30円でのドル円ロングは、損切りを107.90円のままとしながらも、利食いは当初の108.90円に拘らずフレキシブルに対応したいと考えます。
今日の予定
本日は17時からECB年次フォーラムでドラギECB総裁のスピーチが予定されているほか、欧州時間にはユーロ圏及び独の6月ZEW景況感指数、NY時間には米5月住宅着工件数/建設許可件数の発表が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。