前日については、ドラギECB総裁がECB年次フォーラム冒頭演説で、「(経済・物価情勢が改善しないと仮定するのであれば)追加の刺激策が必要になる」との発言を行ったことで、独10年債利回りが-0.328%前後まで落ち込み、過去最低の数字を更新しました。また、経済指標でも独・6月ZEW景況感調査が市場予想-5.6が結果-21.1になったこともあり、ユーロ売りが加速し、一時ユーロドルでは1.11817ドルまで下値を拡大しました。
ドル円については、昨晩、新潟県村上市で震度6強を観測する地震が発生し、新潟・山形・石川各県の沿岸に津波注意報が出されるとリスク回避目的の円買いが強まり、ドル円は一時108.063円まで下落したものの、トランプ大統領がツイッターで「習近平・中国国家主席と良い電話会談を行った。来週日本で開催されるG20大阪サミットで協議を継続する」との見解を示すと、米中協議の進展期待からダウ平均が400ドル超上昇し、ドル円は一気に買い戻しの動きとなり、108.674円と安値から一気に高値まで上昇する慌ただしい値動きになりました。
本日の東京時間に、トランプ大統領が今年の早い時点で、パウエルFRB議長を解任する選択肢を模索するようにホワイトハウスの法律顧問に指示したとのヘッドラインが流れましたが、前日は、クドロー米国家経済会議(NEC)委員長が「トランプ大統領はパウエルFRB議長の地位変更を検討していない」と明らかにしたこともあり、情報が錯綜しています。ただ、どちらのヘッドラインにも影響は限定的だったことを考えると、大きく方向性が変わるような材料ではないのかもしれません。
今後の見通し
本日は、何と言ってもFOMCが注目されます。基本的には、直近の経済指標の悪化は認識するものの、明確な景気減速を確認するために時間を要するために「忍耐強い様子見スタンス」を示すものと思われます。年内の利下げを示唆するものと思われますが、示唆されなかった場合は、サプライズとして、さらなるドル買いが誘発されそうです。ただ、7月の利下げの可能性が高まっていますが、全てが織り込まれているわけではないので、7月利下げを示唆するようであれば、ドル円は急速に織り込むかたちで108円割れを窺う動きになりそうです。焦点としては、「忍耐強い様子見スタンス」のワードがあるかどうかでしょうか。あればドル買い、なければドル売りというシンプルな構図になりそうです。
前日のドラギECB総裁の発言を受け、マーケットでは7月にもECBがフォワードガイダンスを変更するのではないかとの思惑が強まっています。現在は、「少なくとも2020年前半」まで「政策金利を現行水準に留める」としていますが、方向性を徐々に「 現行水準またはそれより低い水準 」に維持するかたちに収束するのではないでしょうか。既にトランプ大統領から過度なユーロ売りを誘発させているECBに牽制が入っており、早急に利下げをするのはバランスが崩れる可能性がありますが、2020年前半より前倒しでのフォワードガイダンス変更は、ほぼコンセンサスになってきたのではないでしょうか。
FOMCまでは基本様子見姿勢継続か
本日のFOMCにて当方のロングポジションも手仕舞にはなるとは思いますが、逆にFOMCまでは何の手も打てない状況になっています。様々なシチュエーションが考えられますが、「忍耐強い様子見スタンス」が示されると考え、108.30円のドル円ロング、利食いは108.90円、損切りは107.90円に設定します。
海外時間からの流れ
久々のドラギマジックに翻弄されましたが、本日はFOMCが何と言っても主役の一日です。7月のFOMCの利下げはある程度織り込んでいることもあり、パウエルFRB議長がわざわざ次回の利下げを明言するとは考えづらく、一旦ドル売りに傾きも、最終的にはドル買いに転じる動きになるのではないでしょうか。その際は、滞空時間こそ短いものの、ドル円109円台回復の動きがあると考えられます。
今日の予定
本日は、独・5月生産者物価指数、英・5月消費者物価指数、加・5月消費者物価指数、米・FOMC政策金利発表などの経済指標が予定されています。また、パウエル・FRB議長の定例会見にも注目が集まります。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。