前日の東京時間に、ドル円のサポートとして考えられていた107.80円のラインを下抜けたことにより、ドル円は下値を拡大する動きを見せました。欧州時間には一旦買い戻しの動きが強まりましたが、NY時間に入ると、米・6月フィラデルフィア連銀景況指数が市場予想10.4が結果0.3、米・新規失業保険申請件数も若干市場予想より悪化したこともあり、再びドル売りの動きが活発化しました。また、地政学的リスクとして、米国とイランが軍事衝突することへの警戒感が強まっており、リスク回避の動きも加わったことで、ドル円は一時107.217円を示現しました。また、本日の東京時間には、昨日の安値を更新しています。
FOMCにて年内の利下げが示唆されましたが、この材料だけではドルの独歩安の様相を呈していましたが、ここにきて米国とイランの地政学的リスクが懸念されています。トランプ大統領は、イランによる米無人偵察機撃墜について「イランは非常に大きな間違いを犯した。米国がイランを攻撃するかどうかすぐに分かる」と警告しており、リスク回避の動きがでてきたことにより、ドル売りでなくリスクオフの動きになっています。本日は週末ということで本来であればポジション調整の動きが主導しがちですが、買い戻しの材料が出てこないと、ドル円を筆頭としたクロス円の上値は引き続き重そうです。
英保守党党首選の第5回投票では、ボリス・ジョンソン前外相が160票で1位となり、ジェレミー・ハント外相が2位となりました。EUからの「合意なき離脱」も辞さない強硬離脱派のジョンソン候補と、EUとの合意を重視するハント候補の対決になります。決選投票開始は22日で約16万人の党員による郵便投票となり、BBCやSKYテレビ、ITVなどで2候補による討論会も予定されています。7月22日の週に首相となる新党首が決まりますが、ジョンソン候補が優勢になっており、マーケットがジョンソン候補で確信を持つようであれば、急速なポンド売りが入りそうです。
今後の見通し
唯一の円売り材料としては、黒田日銀総裁が「適切に金融政策を行う方針で、物価安定のモメンタム損なえば躊躇無く追加緩和をする」と述べたことでしょうか。各国で緩和姿勢が強まるなか、日銀も同様のスタンスを示したことで、過度な円買いが抑制されているのかもしれません。ただ、米10年債利回りが2.00%付近まで低下していることで、クロス円の上値が重くなっていることもあり、2.00%を割り込んでくるようだと心理的にもテクニカル的にももう一段安の展開になりそうなため、この点には注意が必要でしょう。
BOE(英中銀)については、市場の予想通り政策金利を現行の0.75%に据え置くことを決定し、国債買い入れ規模もこれまでどおり4,350億ポンドとしました。ただ、合意なきEU離脱に懸念を示しているほか、米中貿易戦争の激化によるダウンサイド・リスクにも言及していることがマイナス材料でしょうか。世界的に貿易摩擦が激化し、英国内では合意なきEU離脱の可能性が高まったとも指摘されており、ジョンソン候補の優勢が今以上に明確となれば、7月22日の週を待たずに、ポンド売りが強まりそうです。
ドル円はレンジ下抜けにより、戻り売り戦略
ドル円に関しては、107.80円のサポートラインを下抜けてしまったことで損切りにて手仕舞です。ドル円に関しては、買い戻しの材料がないことと、107.80円を下抜けたことにより、このラインがレジスタンスラインになる可能性があるため、戻り売り戦略とします。107.85円上抜けを撤退目途に、107.50円付近まで引き付けての戻り売り戦略。利食いについては、長期的には105円付近まで見たいところですが、106.50円を利食いとして設定します。
海外時間からの流れ
エルドアン大統領が、「高金利政策に反対」「金利が高いとインフレ率は下がらない」と発言したこともあり、前日21時過ぎにトルコリラが急落する場面がありました。トルコリラ円が18円半ば付近から18円付近まで急落し、その後すぐに反発するなど、慌ただしい動きとなりました。ただ、ユンケル欧州委員長がキプロスの排他的水域での掘削作業を巡って、トルコに対して「制裁を準備している。制裁は甘くはないだろう」と述べたこともあり、トルコリラ円は再び軟調推移になっています。6/23にはイスタンブールの再選挙が行われるため、翌週のオープニングでは、窓開けなどには注意したいところです。
今日の予定
本日は、独・6月製造業PMI/サービス業PMI、ユーロ圏・6月製造業PMI/サービス業PMI、加・4月小売売上高、米・6月マークイット製造業PMI/サービス業PMI、米・5月中古住宅販売件数などの経済指標が予定されています。また、ノボトニー・オーストリア中銀総裁、ブレイナード・FRB理事、デーリー・サンフランシスコ連銀総裁の講演にも注目が集まります。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。