週末に行われたトルコ、イスタンブール市長選は、最大野党・共和人民党(CHP)イマモール候補が勝利を収めました。エルドアン大統領が率いるAKPの候補であるユルドゥルム前首相との差は、前回は1ポイント程度でしたが、今回は9ポイント程度に拡大しており、国民が、選挙のやり直しや、経済政策などについて、エルドアン大統領に厳しい意見を突き付けた格好になりました。イマモール候補が勝利を収めたことにより、トルコの民主主義が守られたこと、加えて、エルドアン大統領の介入がある程度抑制されるのではないかとの期待がリラ買いをサポートしているようです。
前週末の欧州時間では、欧州各国のPMIが一気に発表され、内容は総じて良好なものになりました。この動きを受けて、ユーロドルは一時1.13473ドルまで上値を拡大しました。ユンケル欧州委員長が「英国のEU離脱を巡る再交渉には応じない」との見解を示したことでユーロ買いポンド売りになったことも、ユーロの上値拡大に寄与したものと思われます。ECBの緩和方針が意識され、一部では9月にも金利の引き下げ、金利の階層方式を導入、さらに、社債購入の再開も決定するのではないかとの思惑もありますが、それ以上に、ドルやポンドは売られやすい状況にあるということを暗に示しているのだと思われます。
NY時間では、要人発言が相次ぎ、前回のFOMCで0.25%の利下げを提唱したブラードセントルイス連銀総裁は「インフレ低下と経済成長の減速見通しを考慮し利下げを主張した」と説明し、カシュカリミネアポリス連銀総裁は「政策金利を0.50%引き下げ、目標を達成するまで利上げは実施しないとのコミットメントを示すことが最善だ」との見解を示しました。また、クラリダFRB副議長も「持続的な景気拡大のために適切な行動をとる」と発言しており、7月の利下げが徐々に現実味を帯びてきたと考えられそうです。
今後の見通し
米国とイランの地政学的リスクは依然として払拭されておらず、先週末には、トランプ米大統領が無人偵察機の撃墜に対する報復攻撃命令を出したものの、イラン人150名の犠牲者予想を受けて10分前に撤回したと報じられています。本日24日にトランプ政権は、イランへの追加制裁を発表する予定となっており、軍事行動の選択肢は残っているとのことで、依然として地政学的リスクが意識される見通しです。
米中通商協議では、先週末に米商務省が中国企業に対する新たな禁輸措置を導入したことで、問題の長期化が懸念されています。トランプ大統領は、香港での人権問題も提起すると報じられており、米中首脳会談は難航することが警戒されています。また、新たな禁輸措置は米国株の売りを加速させた経緯があるため、ドル円の上値を抑える材料として意識されそうです。
英与党・保守党党首選では、ボリス・ジョンソン前外相とジェレミー・ハント外相が決選投票への進出を決めました。ほぼ事前予想通りの展開ではありますが、EUからの合意なき離脱も辞さない強硬離脱派のジョンソン候補が、大幅にリードしていることから、『合意なき離脱』がどうしても意識されており、ポンドの買い戻しに歯止めがかかっています。状況によっては、7/22週より前にポンドが売られる可能性もあるため、この点には注意が必要でしょう。
ドル円はレンジ下抜けにより、戻り売り戦略
ドル円に関しては、107.80円を下抜けたことにより、このラインがレジスタンスラインになる可能性があります。前週末の動きを見ても、107.70円台で上値が抑えられていることもあり、107.80円が目先の上値目途になるのではないでしょうか。当方の107.50円ショート、107.85円上抜けを撤退目途に、利食いについては、長期的には105円付近まで見たいところですが、106.50円を利食いとして設定します。
海外時間からの流れ
英与党・保守党党首選は、ジョンソン候補の大きなリードが伝えられていますが、ハント候補はアイルランドとの国境問題に関するバックストップに焦点を当てて、メイ首相の離脱案を再交渉したいと考えていると一部では報じられています。同時に、バックストップを必要としないような技術的な解決策を探っている模様であり、そうした変更を10月31日までに達成することは極めて困難であるものの、EU離脱期限の延長にもオープンという姿勢を示しました。『合意なき離脱』以外の方法が示せるのであれば、票はハント氏に傾くかと思われますが、どの程度詰められるのかというところが今後の焦点になりそうです。
今日の予定
本日は、独・6月IFO景況指数などの経済指標が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。