前日については、対イランとの地政学的リスク、週末のG20サミットにて予定されている米中通商協議の行方、トランプ大統領からFRBへの利下げ要求など、トピックス自体は豊富であったものの、やはりG20サミットが控えていることもあり、様子見ムードの地合いが強まりました。また、主要な経済指標発表も予定されていないことから、ドル円は107.25-107.55円付近の狭いレンジにに終始しました。大きな方向感を示せない以上、マーケットが活気づくには想定外のサプライズ報道かこれまでのドル売りの巻き戻しの動きになりそうです。
様子見ムードが広がる中で、ネガティブな要素としては、やはり、対イランとの地政学的リスクになりそうです。トランプ大統領は、イランへの追加制裁を科す大統領令に署名しました。これは、イランが米国の無人偵察機を撃墜したことに対応した措置になりますが、追加制裁の対象にはイランの最高指導者であるハメネイ師も含まれており、イランが猛反発する可能性が大きいため、G20サミット前でも、状況によってはリスク回避の動きが強まるかもしれません。その時は、ドル円は107円のラインを下抜けてくるものと思われます。
英与党・保守党党首選では、メイ氏の後継として本命視されているボリス・ジョンソン氏のスキャンダルが注目されています。詳細は割愛するものの、警察が出動する事態になっており、ハント氏や保守党議員らはこれについて説明すべきと主張していますが、ジョンソン氏はメディアの取材に答えていません。ポンドについては、この一連の流れのなかで、ジョンソン氏圧勝ムードからハント氏との接戦期待が強まり、ポンドの買い戻しが強まっています。
今後の見通し
本日の東京時間に、中国商務省から「米中の通商交渉チームは対話を続けることで合意」「劉鶴中国副首相とライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が電話で意見交換」との声明が出ており、米中通商協議の進展期待から円安の動きが出ています。国際通貨基金(IMF)の米国経済に関する年次審査においても、中国などとの貿易摩擦に改めて懸念を示し、問題解消に向け相手国・地域との「建設的で協力的な取り組み」を促していることも、進展期待を増幅させているものと思われます。
本日は、パウエルFRB議長の講演が予定されています。日米首脳会談前にFRBの政策金利見通しを大きく変えるような情報が出てくる可能性は低いですが、年内の利下げが現実味を帯び、トランプ大統領からも執拗に利下げに関する発言が出てきていることから、パウエルFRB議長がどのような矜持をもって金利動向に対処するのか注目が集まります。また、トランプ大統領が繰り返し議長解任の権限があることを示唆しているなかで、4年任期を全うする意思を示した同議長が、今回の講演でどのようなスタンスをとるのかにも注目されそうです。前回同様、任期を全うする内容の発言がでれば、ドルの買い戻し材料になりそうです。
107.80円のレジスタンスラインがより鮮明に
ドル円に関しては、107.80円を下抜けたことにより、このラインがレジスタンスラインになる可能性があります。前週末の動きを見ても、107.70円台で上値が抑えられていることもあり、107.80円が目先の上値目途になるのではないでしょうか。当方の107.50円ショート、107.85円上抜けを撤退目途に、利食いについては、長期的には105円付近まで見たいところですが、106.50円を利食いとして設定します。
海外時間からの流れ
イランのザリフ外相が「中露などと通貨協定」などの見解を示しており、米国政権に対抗する意思を見せています。米国側も、トランプ大統領が攻撃承認を撤回したものの、「取り消したわけではない」と述べていること、強硬派のボルトン大統領補佐官、ポンペオ米国務長官、ハスペル中央情報局長官も攻撃に賛成していたこともあり、米国とイランの問題は長期化する可能性がありそうです。
今日の予定
本日は、米・6月CB消費者信頼感指数、米・5月新築住宅販売件数などの経済指標が予定されています。要人発言としては、ウィリアムズ・NY連銀総裁、ボスティック・アトランタ連銀総裁、パウエル・FRB議長、バーキン・リッチモンド連銀総裁などの講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。