前日については、ムニューシン米財務長官がCNBCテレビのインタビューで米中貿易交渉について質問された際に、「交渉が頓挫する前は妥結まで約90%のところまで来ていた。合意達成への道筋はある」と発言したこともあり、ドル円はこれまでのリスク回避の巻き戻しの動きが強まり、一時107.846円まで上昇しました。本日の東京時間に、トランプ大統領と習国家主席との会談が29日午前11時30分に大阪で行われる旨のヘッドラインが流れたため、市場は、対話を再開すれば最終的に妥協点を見いだせるのではないかとの期待感を寄せており、G20サミットへの期待感から下値は底堅くなりそうです。

米中閣僚級協議は5月10日を最後に途絶えており、両政府が貿易交渉を再開することは大きな意味を持つと思われます。ただ、トランプ大統領は「米中会談で貿易協議が不調に終われば、制裁関税第4弾を発動する」と改めて警告していることもあり、決して楽観的なイベントではないですが、これまでの神経質なムードは大幅に後退したものと思われます。

米中貿易交渉については、24日にもライトハイザー米通商代表部(USTR)代表と劉鶴中国副首相が建設的な電話会談を行い、状況が好転してるとの報道があるなかで、昨日のムニューシン米財務長官の見解は、ドル円の下落サイクルを抜け出す材料としては十分なものだったと考えられます。兎にも角にも週末のG20サミット次第になってきたことから、週末イベントが意識され、本日、明日は動きづらい状況になっています。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

良くも悪くも、週末に開催されるG20サミット次第のマーケットになってきました。この点については、時間の経過を待つしかないでしょう。他にFRBの利下げについてですが、トランプ大統領は昨日もFRBに対して利下げを要求する場面もありましたが、FOMCの投票権が有り、FRBで最もハト派であるブラード・セントルイス連銀総裁の見解でも、米国経済にとって、50bp規模の利下げは不要との見解を示しており、先物市場も50bpの利下げを織り込む動きは大幅に低下しています。7月の25bpの利下げについては、ほぼ織り込み済みであることもあり、FRBの政策金利関連でドルが売られる地合いは一旦落ち着いたと考えてよさそうです。

英国ポンドについては、カーニーBOE総裁が、議会財政委員会にて「英国政府の政策が変更になった場合には、それに応じて我々の予想が変わる」と発言し、「次期首相候補のジョンソン前外相とハント現外相の2人は可能であればEUとの合意を結びたいと発言している」と指摘しました。合意なき離脱となった場合には、金融を引き締めるよりも、緩和する可能性のほうが大きくなるとの認識を示したものの、BOEの見解としては合意なき離脱観測は高まっていないとの見解もあり、今後のポンドの動きに注目が集まりそうです。

107.80円を上抜けたことで、次はドル円ロング戦略

ドル円に関しては、107.80円を上抜けたことにより、目先のレジスタンスラインが崩れました。107.50円でのドル円ショートについては、107.80円上抜けにて損切りです。週末のG20サミットへのポジティブな期待が強まっていること、更にはポイントである107.80円を再び上抜けたこともあり、107.80円での損切り後に途転買い戦略です。利食いについては、108.50円付近を想定し、107.40円下抜けで損切りとします。

海外時間からの流れ

次期首相候補のジョンソン前外相は、これまで合意なき離脱を辞さない構えを貫いていましたが、「合意なき離脱」への準備は必要なものの、それが起こる可能性は「100万分の1」と発言していることもあり、ポンドが買われやすい地合いになっています。同氏はスキャンダルの影響で支持率が低下していることもあり、支持率回復のために、自身の方針を緩和させた可能性があります。

今日の予定

本日は、独・6月消費者物価指数(速報値)、米・第1四半期GDP(確報値)、米・新規失業保険申請件数、米・5月中古住宅販売保留指数、メキシコ中銀政策金利発表などの経済指標が予定されています。要人発言としては、ノボトニー・オーストリア中銀総裁などの講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。