金正恩委員長の口角が右だけ上がった意味は?
微表情から読み取れるのは、相手の感情の動きです。
例えば、昨年、シンガポールで行なわれた米朝首脳会談で、合意文書に両首脳が署名をする際の映像を観ると、金正恩委員長の右側の口角が上がる瞬間があります。片側の口角が上がるのは「軽蔑」、言い換えれば「優越性の主張」です。つまり、金委員長は、この会談で自分が優位に立ったと感じたのです。
今年、ベトナムで行なわれた米朝首脳会談の1日目の映像でも、金委員長の右側の口角が一瞬上がったあと、両方の口角が上がった場面があります。一瞬、「軽蔑」の微表情が出てから、「幸福」の表情になったのです。
ところが、同日のトランプ大統領にも「軽蔑」の微表情が表れる映像がありました。双方が「自分のほうが相手よりも優位だ」と感じるのはおかしいので、それを見たとき私は、「会談はうまくいかないのではないか」と思いました。
結果は周知の通りです。報道によると、米国が寧辺以外の核施設の停止も求め、それを北朝鮮は予想していなかったということです。
感情を読み取ることと「心を読む」ことは違う
2014年のAKB総選挙で、松井珠理奈さんが4位で名前を呼ばれたときのテレビ映像を観ると、一瞬、鼻に皺が寄り、ホウレイ線の皺が釣鐘型になっています。これは「嫌悪」、つまり、拒否を示す微表情です。速報では3位だったそうですから、4位という順位を受け入れたくないという感情が出たのでしょう。
ローラさんが『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系)の人気コーナー「食わず嫌い王決定戦」に出たとき、嫌いな食べ物を好きであるかのように振る舞うのですが、やはり「嫌悪」の微表情が出ていました。
このような話をすると、微表情から相手の心が読めるのだと勘違いする人がいるのですが、そういうわけではありません。読めるのは、あくまで感情だけです。
例えば、ドーピング疑惑のあるスポーツ選手がテレビ番組でインタビュー取材を受けている中で、「軽蔑」の微表情を見せたことがあります。
しかし、「ドーピングをしていない人間を疑うなんて」という意味での「軽蔑」を示したのか、「この人に本当のことがわかるわけがない」という意味での「軽蔑」なのか、これだけでは判断することができません。つまり、その選手がシロなのかクロなのかは、微表情からだけではわからないのです。