前日については、週末に予定されているG20サミットへの期待感もあり、東京時間からドル円が買われ、一時108.160円まで上値を拡大しました。背景としては、香港のサウスチャイナ・モーニング・ポスト紙と米国政治ニュースベンダー「ポリティコ」が、「米国と中国が貿易戦争の一時的な休戦に合意していた」と報道したことにより、米国の第4弾の制裁関税の発動を留保させるのではないかとの思惑が強まったと考えられます。ただ、これは最終的に合意されたものではないとすぐさま中国外務省に否定され、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、習近平国家主席は米国が華為技術(ファーウェイ)製品の取引停止措置を撤回することが条件だとしていると指摘しており、楽観的ムードが一変し、再び107円台での推移になっています。
楽観的ムードを作り出した26日のムニューシン米財務長官の「交渉が頓挫する前は妥結まで約90%のところまで来ていた。合意達成への道筋はある」との発言は依然として意識されているものの、昨日のヘッドラインにより、24日のライトハイザー米通商代表部(USTR)代表と劉鶴中国副首相の電話会談は順調であったものの、依然として米中両国が譲歩できないレッドラインの存在が確認されているとの報道が意識されてきたのかもしれません。
ただ、トランプ大統領と習国家主席との会談が29日午前11時30分に大阪で行われることは事実であり、明確な合意はなくとも、最終的に妥協点を見いだせるのではないかとの期待感は依然として根強く残っています。市場の大方の予想である前向きに協議継続という流れであっても、目先の問題が一旦小休止することになれば、マーケットはリスクオンの動きを選択すると考えています。
今後の見通し
英保守党首選の支持率で優位に立っているジョンソン前外相は、英国はEUを10月31日までに離脱するものの、合意なき離脱の可能性は百万分の一しかないと述べたことがポンドの買い戻しに繋がっています。英サン紙によると、法務省の元長官であるグリーブ保守党議員と、元外相のベケット労働党議員は、7月2日までに成立が見込まれる予算関連法案の修正を提案しました。グリーブ氏はサン紙に対し、英国が議会の同意なしにEUを離脱するといった見解は誤りであり、これは『憲法違反』という見解を示しました。グリーブ氏らの修正案が可決されれば、合意なき離脱は議会の承認が必要となるため、再度ポンド買いが強まる可能性があります。
G20サミットの、最大の注目点は29日の正午に予定されている米中首脳会談になりそうです。トランプ大統領は「中国は合意を欲しており、もし合意に達しなければ、まだ制裁関税の対象となっていないおよそ3,000億ドルの中国製品に対して25%の関税を科す」と述べており、再度米中貿易摩擦が小康状態となり、追加関税賦課を回避できるかどうかが注目されます。どちらにせよ、月曜シドニー時間に為替市場が大きく動く可能性が高く、週明けのマーケットは十分に気を付ける必要がありそうです。
次の108円台乗せが重要なポイントになりそうだ
ドル円に関しては、一時107.50円台まで下押ししたものの、すぐさま反発していることもあり、下値は限定的だと考えられます。週末のG20サミットへのポジティブな期待が強まっていること、更にはポイントである108.00円を一時上抜けたこともあり、107.80円でのロングは継続です。利食いについては、108.50円付近を想定し、107.40円下抜けで損切りとします。
海外時間からの流れ
トルコリラについては、トルコリラ円で18.60円付近での小動きに終始しています。明日29日に米・トルコ首脳会談を控えており、ミサイル関連の報道に注目が集まります。また、同会談前に、トランプ大統領はムハンマド・サウジ皇太子と会談予定と報じられています。昨年10月のイスタンブールのサウジ領事館で起こった反体制派記者殺害事件に関して、調査を行った国連担当者は、ムハンマド皇太子の関与を捜査すべきという結果を公表しました。事件の皇太子に対する疑惑についてサウジ政府は当然ながら否定し、トランプ大統領は擁護姿勢をとっており、同問題についても注目が集まりそうです。
今日の予定
本日は、英・第1四半期GDP(確報値)、ユーロ圏・6月消費者物価指数(速報値)、 米・5月個人所得/個人支出、米・5月PCEコア・デフレータ、米・6月シカゴ購買部協会景気指数、米・6月ミシガン大学消費者信頼感指数(確報値)などの経済指標が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。